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国内外で破綻しつつあるバイデン大統領の対イスラエル支援政策

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日本のイスラエル・ガザ問題に対する報道を見ていると扱いに戸惑いがあると感じる。抑圧者イスラエルとそれを抑止できないアメリカ構図が飲み込めないのだろう。特にお茶の間の常識がトーンを支配するテレビでは扱いにくい話題である。

さらに「アメリカに疑問を持つ人は反体制なのではないか」と警戒する人もいるのだろうと思う。そう考えると、このブログを読んでいる人はある意味では特殊な選ばれた人たちなのかもしれない。

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バイデン大統領がCNNの独占インタビューに答えた。背景には大学を中心に広がる紛争があるものと見られる。かつてあった黒人抗議運動と結びつきつつあり危険な状況だ。

大統領はイスラエルの攻撃が市民に向いていることを初めて認めラファ攻撃が行われれば支援は継続できないとした。だがこの説明は既に破綻している。実際には既にラファへの地上侵攻は始まっているからである。大統領はこれを限定的な攻撃であり全面的な攻撃ではないからレッドラインを超えていないと言っている。

コンテクストを共有しないBBCは無情にもこの2つの事象を並べた記事を書いている。ジャーナリズムの中立性を重んじるBBCは政権批判はしていないが「二つ並べましたからどうぞ読者で判断してください」と言っている。つまり伝えることと批判することは区別されている。

もちろんバイデン大統領にも言い分はある。ここでイスラエル支援をやめてしまうとトランプ氏から「民主党は左翼に乗っ取られてパレスチナを支持している」攻撃されかねない。

トランプ氏はバイデン政権を批判するために外交と国境政策を「束」にした。バイデン大統領はウクライナと癒着していると根拠なく主張し「だから国境政策のようなアメリカ人にとって重要な問題が蔑ろにされている」のだとの主張を組み立てた。さらにバイデン氏がイスラエルを批判するのはパレスチナに過度に肩入れする左派に民主党を支配されているからだとも主張している。

一方の共和党・トランプ陣営も破綻しかけている。グリーン下院議員がジョンソン下院議長の解任動議を提出した。事前に何の調整も行われておらずブーイングが飛び交った。すぐさま解任阻止の動議が行われ動議はブロックされた。ジョンソン氏は民主党に助けてもらった共和党議長という居心地の悪い状態だが、グリーン氏と会談したとも伝えられており今度は民主党から批判されている。

グリーン氏のような熱狂的なトランプ支持者が国境政策に固執するようになると問題を扱いかねたトランプ氏はそこから逃亡しようとした。選挙が盗まれたという主張が内乱に発展しかけた時と似ている。BBCに次のようなトランプ氏のコメントが載っている。

トランプ氏は投稿の冒頭、「マージョリー・テイラー・グリーンのことは絶対的に愛している」と表明。だが、今はジョンソン氏を解任する時ではないと主張した。
そして、「不和を示せば混乱だと言われる。すべてに悪影響が及ぶ!」とし、ジョンソン氏は「懸命に努力している良い人」だと付け加えた。

だが下院共和党の暴走は収まりそうにない。

さらに下院外交委員会ではICCに対する経済制裁が準備されている。ネタニヤフ首相に逮捕状を出すのを阻止するためにICCを恫喝しようとしている。プーチン大統領に逮捕状が出た時にはおおむね歓迎ムードだったことを考えると全く真逆の一貫しない対応だ。

ではイスラエルはこのアメリカの態度をどう思っているのか。

イスラエルはアメリカの曖昧な態度に不安を感じるようになった。国民からの支持は既に失われている状態で国民からも孤立し同じメンバーが何度も打開策を話し合ううちに集団思考状態からくる視野狭窄を起こしているようだ。追い詰められた様子がよくわかるコメントがロイターに出ている。

イスラエルのネタニヤフ首相はXで「どんなに強い圧力をかけられても、いかなる国際フォーラムの決定でも、イスラエルの自衛を阻止することはできない。イスラエルが孤立を余儀なくされるのなら孤立する」とした。

アメリカの国内政治はかなり分断が進んでおり混乱状態が続いている。このためにバイデン大統領はネタニヤフ首相らに毅然とした対応ができない。イスラエルも全面的な支援が得られないことに苛立ちを募らせており「そっちがその気なら臨むところだ」と先鋭化している。

しかし、こうした話が日本のメディアで扱われることはない。第一にアメリカは正義の側で専制主義からいつでも世界秩序を間もてくれるはずだという物語が常識化しておりこれを覆すのが難しい。第二に日本の安全保障は揺るぎないアメリカのバックアップを基礎にしている。つまり、アメリカが混乱しているという不安を直視したがらない。

自分で情報を集めるという習慣を持たない人は「メジャーなニュースでやらないものは正解ではないのだろう」と感じている人も多いだろう。そんな中でスラスラと最後までこの記事が読めた人はかなりメンタルがタフなある意味選ばれた人なのではないかと思う。

今回はあえてアルジャジーラを除いてCNN、BBC、Reuterで記事を構成した。アルジャジーラでさえイスラム側に偏向していると感じる人はいるだろう。だが、それでもどうしても日本人が求める「毅然として正義の側に立つアメリカ」という図式に沿った物語は提供できない。単純にそれは事実ではないからだ。

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