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現在の政治状況は実に簡単

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公示日前ということで、各種の党首討論が一斉に行われた。政治は難しくてよく分からないという人も多いと思うのでポイントだけ申し述べておきたい。
与党側は「自分たちの政策は成果が出ている」と主張しているが、実際のメッセージは「民主党政権時代に戻っては困るでしょう」というものだ。ついでに「共産党なんかもっと危ないですよ」と言っている。実際には政策の成果が出ていないので、何も訴求できないのだ。一方、野党側が言っているのは「自民党・公明党政権が続くと憲法がぼろぼろになる」というものだが、自分たちが政権を取ったら国が良くなるとは言っていない。
この結論は簡単だ。どちらにも画期的なアイディアはないため、お互いを罵り合って危機感を煽ろうとしている。これだけ理解できれば後のことは全てマスコミの退屈しのぎの質問だと考えてよい。
この背景にあるのは財政状況だ。日本政府は借金を抱えているがこれは持続可能ではない。政府の借金は将来の徴税権を担保にしているのだが、納税者が減っている。高齢者は社会保障費用を使う側なので、社会保障費は膨らむ一方だ。つまり本質的な問題は「どう崩れるか」という点に移っている。
とはいえ、崩れたら国が滅びるということはない。第二次世界大戦の後の日本、第二次世界大戦前のドイツ、アルゼンチンなどいろいろな事例があるので調べてみるとよいと思う。国民は塗炭の苦しみを味わうことは確かだ。一方で崩れないままでだらだらと続くこともありそうだ。
選択肢は3つあるように思える。
第一の選択肢は面倒なので関わらないというものだ。実務型の参議院議員が選挙から撤退するという動きも出ている。議論があまりにも不毛で疲れたのだろう。「倒産しそうな企業の社員とは思えない」という感想らしいのだが、まあ倒産寸前の大企業というのはそんなものかもしれない。崩れるときは崩れるのだと考えるのもよいし、資産を海外逃避させられるように備えておくのもよいかもしれない。
与党に投票するという選択肢もある。与党はあきらかに崩壊のスピードを速める方向に進んでいる。日銀に国債を引き受けさせ、公共投資を拡大しようとしているからだ。「緊縮」と「成長」という対立があったのだが、結局「緊縮は嫌だけど、成長もできない」という点に落ち着いたようだ。経緯は調べてみると面白いと思う。夏休みの宿題としては面白いかもしれない。財政再建派、上げ潮派などのキーワードで歴史が調べられるだろう。いずれにせよ、一世代分くらいの期間は経済は大混乱するだろう。与党に投票するに当たって考慮すべきはTPPに代表される海外との交渉だ。基本的に富を国民から多国籍企業に転移させる試みなのでこれも財政の崩壊を進める一因になるだろう。
最後の選択肢は野党に投票するという物だ。議論を後戻りさせるほどの勢力は得られそうにないのだが、議論は膠着させられるかもしれない。これは結果的に崩壊のスピードを遅くすることになるので、だらだらと現在の衰退が続くことになる。代わりに何が起るか分からない混沌は避けられる。
現在の政治状況が分かりにくく見えるのは、語り手の大人たちがうすうす「解決策がない」ことに気がついているからだ。このため皆が話を反らすのである。決して受け手の頭が悪いからではない。