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岸田内閣支持率の上昇にざわつく人々

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JNNの世論調査の結果岸田総理の支持率が上昇している。上昇自体は負の単純接触効果だろう。つまりゴールデンウィークでネガティブな報道がなくなったためだ。この支持率上昇には特に意外性はないのだが、その反応は興味深かった。戸惑う声や憤る声が多くJNNはこれをニュースとして扱っている。

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日本の有権者たちは孤立している。さらに「自分以外は馬鹿で流されやすい」と考える人たちも少なくない。このため、支持率が上昇を始めると「馬鹿な(自分以外の)大衆はもうこれまでのことを忘れてしまったのか」と嘆く人がいるのかもしれない。その場の雰囲気にきわめて敏感な上に最終的にはこの空気に従わなければならないという妙な遵法意識がある。日本人は法律や人権はさほど気にしないが空気には服従しなければならないと考えている。

一方で自民党の中の改革の機運が薄れることに警戒感を示す人もいる。長島昭久衆議院議員はXで「肌感覚と異なる」と情報発信していた。禊は済んだとばかりに自民党が元の状態に戻ることを警戒しているのかもしれない。

この戸惑いを記事にしたのがTBSなどのJNN系列だ。何もやっていないのに支持率が上昇するなんておかしいと戸惑う人たちもいたようだが「総理大臣にその気になってもらっても困る」と「実利的に」戸惑う議員もいるそうだ。つまり自民党の議員たちは早期解散を恐れている。

外遊から帰ってきた岸田総理は政策活動費の使途公開に踏み込んで検討するように指示している。ネガティブな報道が減ったことによる負の単純接触効果による支持率上昇が起きるならば野党が攻め手を失う「争点潰し」には一定の効果がありそうだ。仮に自民党の中で抵抗されても「自分は政治資金の透明化に熱心だった」と主張できる。一方抵抗した側は「抵抗勢力(つまり賊軍)」として扱うこともできるだろう。さらに突発決断症候群という持病もあり深く一人で考えた後で何を仕出かすかわからない。

支持率が上がったのであれば当然「岸田総理にはもう少し頑張ってほしい」という声が増えても不思議ではない。また日本の有権者は面倒な状況に関わりたくないのだから当然「自民党が分裂することなく穏健に党内政権交代が起きてほしい」と望んでも不思議ではないだろう。

JNN系列の調査によると9月の総裁選で岸田さんに退任してほしいとする人が多いそうだ。岸田さんにはうんざりという人が多いものの、騒ぎになることは望んでおらず穏健な疑似政権交代が起きるのが良いとする人が多い印象はある。政権交代要求やデモが多発する民主主義国としてはきわめて異例な状況になっており国民にあまり統治に対する当事者意識と期待がないことがわかる。

政権交代も「穏健」とは言い切れないのだから現状維持を望む人が多いのではないかと思いたくなるのだが、不思議なことに自民党・公明党政権の継続を望んでいる人よりも政権交代を望む人が増えているそうだ。この結果を受けて支持政党なしが減りその分だけ(ほんの僅かではあるが)野党系の支持率が上がっている。この結果がJNNだけのバイアスなのかも気になるが、もううんざりだという人も多いのかもしれない。政権はデフレ脱却宣言などを出して気分を変えたいところだが、国民から見れば政権が代わってもらったほうが手っ取り早い。どちらもあまり中身には興味がなく手っ取り早く空気を変えるには何かがガラッと変わる必要があると考えている。

だが、仮に「ガラッと変わる」ことだけが目的なのであれば党内疑似政権交代でも構わないはずだ。おそらく立憲民主党に期待が高まるのは「ポスト岸田」の選択肢が見えていないためだろう。岸田さんが総裁選に出るといっている以上、他の人たちが政権構想を語るわけにもいかない。総裁選で支持率と期待感を上げるのが自民党のいつものやり方だ。自民党はこの選択肢を封じられている。一方野党としては岸田総理にそのまま総裁の椅子にしがみついてもらった状態で選挙をやってもらうのがもっとも「美味しい」選択肢になるだろう。

円安とインフレにより国民生活が苦しくなることが想定される。例えば同じような状況にあるイギリスではこれが政権交代のドライバーの一つになっているが日本では生活苦から政権交代を望むという人はあまり見かけない。生活にあまり困っていないということなのかもしれないし、長引く「デフレ状態(現役世代はそもそも成長そのものを知らない)」に慣れてしまい、お金がなくてもそれなりに生活ができると考える人が多いのかもしれない。

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