FOMCは政策据え置きとなった。インフレは高止まりしているがこれはすでに織り込まれている。これを受けて158円台にまで下落していた円相場は落ち着きを取り戻ししばらく157円台で推移していたもの大きな動きが断続的に起きており156円台を経ていったん154円台まで円が高騰した。
誰かがポジションを崩したのか政府日銀が介入したのかはわからない。円高に誘導したい財務省・日銀がFOMCを援護射撃として利用したのかもしれないし、機関投資家などがポジションを変更した可能性もある。仮に介入だったとすれば財務省・日銀の作戦勝ちと言えるかもしれない。
日本政府・自民党には全く打ち手がないようでかろうじて「減税で海外に移転している企業資産を国内に回せないか」と言う議論が始まっているそうだ。打ち手を欠く状況で行われたFRBの発表は思わぬ天の恵みのように作用した。
FOMCのロイターの会見要旨は次のとおり。目標である2%のインフレが達成できる見込みは立っておらず政策に行き詰まりがみられるとしている。
声明で、過去1年間で「インフレ率はこの1年で緩和したが、依然高止まりしている」とし、経済評価と政策指針の主要な点を維持。「インフレ率が持続的に2%に向かっているとの確信がさらに強まるまで、目標誘導レンジの引き下げが適切になるとは予想していない」とした。
しかしこれは想定通りだった。このためドル円相場は158円から157円台に移動しやや円高進行となった。
日本政府は完全に行き先を失っている。一部債務超過になるため利上げができないのだと言う意見があるのだが、それよりも実体経済への影響を政治が懸念しているという政治的要因の方が大きそうだ。つまり選挙での悪影響を恐れている。
自民党は「企業が海外に持っている資産を国内に移転してくれればいいのでは」と考えたようで「減税措置などの優遇」を検討していると言う。ロイターは既に非課税になっていない枠は5%しかないと指摘している。さらに、この5%を優遇したとしても金利が低い日本円で資産運用するメリットはない。そもそも投資に回さず資産化されている資金(いわゆる内部留保)が積み上がっていることや国内に主要な産業がなく成長率が低いのも問題なのだが自民党・公明党政権にはもはや包括的に問題を解決する意志も能力もないようだ。
国内のマスコミとSNSの論調を見ていたがこちらもかなりひどい内容だった。まずSNSではこのまま円がジンバブエドルのように暴落を続けるのではないかと言う過度な悲観論が飛び交っていた。またテレビでは円安が続くと食料品が値上がりすると言う声や海外旅行に行きにくくなると言う話ばかりがでてくるが、アベノミクスで先送りしていた問題をいよいよ摘み取る時期が来たというような解説はない。むしろそれを見ないように目を背けていると言う印象もある。
このような状況から判断するととても政府や世論の後押しは期待できない。ここはアメリカの大きな流れを利用して反転構成を仕掛けるしかないということになる。結果的にドル円は154円から155円というレンジで推移している。仮にこれがオペレーションだったと仮定すると今回のオペレーションでいくら使ったのかは後になって数字が出てくるだろう。
実際に年末・年初の企業予測を見るとドル円は135円から140円台が為替の中央値だったと記憶している。160円線を超えるなどと考える人はいなかったのだから現在の157〜154円台というのも十分に異常な水準だ。だが、FRBの発表によって懸念がやや解消されたことで、当座は「ああよかった」「嵐は過ぎた」として慣れてゆくのかもしれない。日本がジタバタしても仕方ない。全てはアメリカ頼みなのだという安易な方に状況が流れてゆく。