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介入規模は5兆円 ただし効果は限定的になる模様

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財務省と日本銀行が29日に介入を行った。規模は5兆円程度だったとみられる。ただし当局は介入について明言していないためメディアの表現は「介入か?」にとどまる。FOMCを翌日に控えているため為替に大きな変動はなく一定の落ち着きを取り戻している。

介入の実態がわかってきた。短期投機家が群がったところを狙い鉄砲を撃ちダメ押しでももう一度撃ったような状況だったそうである。ただ投機スズメたちはすでに鉄砲の効果が限定的だったことを学習してしまっている。

次の危険要素は大統領選である。利下げにプレッシャーがかかっているが、これがアメリカ経済にとってのハードランディングリスクになるのではないかと思う。

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日銀の植田総裁が円安に伴う物価高の影響を重要視しない発言をしたことがきっかけになり円相場は一時160円まで下落した。このままでは投機的な円安を誘発する危険性がある。行き過ぎた動きを牽制するために当局は介入に踏み切ったものとみられる。

日銀は当座預金残高の予想を出している。これが大きく変動していた。ここから類推して過去最大クラスの5兆円程度の介入が行われたものと見られている。

テレビカメラは介入(があったと見られる)時の神田財務官の高揚ぶりを捉えている。確かに神田さんの血は沸きたっただろうが介入効果は限定的なものとみられている。あくまでも行きすぎた円安が制御不能になることを抑える効果しかなく円安傾向はこの先も続くものと見られているようだ。

ロイターの記述は生々しい。まず介入がないとみた投資家たちが円を売る。このためポジションを維持できなくなった短期的な利益を狙う「短期筋」が動いたことでさらに2円の円安となった。海外投資家が中心だったことから円を使った短期的な投資がかなりの規模で行われていることがわかる。

日本勢不在の中、ドル/円の上昇ピッチは急速で、上昇を開始してわずか5分で2円弱急伸し、160.24円と1990年4月以来34年ぶり高値を更新した。「薄商い下で大きな値動きが狙えるとみた短期筋が買いに動いたようだ」(FX会社)といい、上値に控える損失確定の買い戻しを相次ぎ巻き込んで、上昇が加速したという。

この短期筋が入ったところでいよいよ当局の介入が行われた。巻き込まれた短期筋は大いに慌てたことだろう。一度大きなオペレーションがありそれに追い打ちをかける形で「追い介入」があったものとみられるそうだ。

午後1時過ぎ、仕掛け的な買いが一巡して159円前半へ反落したドル/円に衝撃が走る。市場筋によると、159円半ばへ小幅に上昇した直後、買いを迎え撃つような形で突然大きな売り注文が出て、1分間で158円前半まで急落。その後もまとまった売りが断続的に入り、1時間後には155円前半まで4.6円下落した。

まず鉄砲をドンと撃ってスズメを追い払いダメ押しでももう一度鉄砲を撃った。ところが介入効果は限定的なものと見られている。投機スズメもそれなりに学習しているのだ。

5月1日(日本では5月2日未明)にFOMCが発表になる。アメリカでは物価が高止まりしており「とてもではないが金利引き下げに踏み切れない」という状況になっている。

アメリカの利下げ観測は9月以降と既に後退しており、これ自体がリスク要因となることは考えにくい。しかしながら大統領選挙が暗い影を落としておりFRBは政治的な嵐に巻き込まれる可能性がある。ロイターの記述は次の通りだ。

ところが、結局物価情勢が急速に改善せず、9月に利下げを迫られる事態は、FRBにとって鬼門になりかねない。特に大統領選で共和党候補指名が確実なトランプ前大統領が、自分の政権下で利上げを続けたパウエル氏を敵視しているだけに、FRBが望まない政治論争に巻き込まれる可能性があるからだ。

トランプ氏の圧力で利下げが行われれば理論的にはアメリカと日本の金利差は縮小するのだから円高に向けて修正が進むことになる。ところがアメリカの利下げが過度なインフレを刺激すると今度はソフトランディングではなくハードランディングを選択しなければならなくなるだろう。そして現在の状況から見るとその公算は高い。アメリカの経済はこの高金利のもとでも過熱気味だ。

この政治プレッシャーによって現在のアメリカの株高が解消される可能性は高い。トランプ氏は関税強化やドル安誘導なども提唱している。どちらもアメリカにとってはコストプッシュ型のインフレ要因だ。

アメリカの経済が急減速すれば米株に連動している日本の株価は二つの株高要因(円安とアメリカの株高)を失うことになりかねない。現在新NISA参入組が「今は外貨預金だ」として円安・ドル高に注目している。これは大いに結構なことなのだが、この状況が永遠に続く保証はない。誰でも投資家になれる時代というのは誰もがアメリカなど海外の政治状況を注意深く見なければならない時代ということになる。

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