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選挙より儲かる日本式「火付盗賊戦略」が開発されてしまう 日本の政治も早急な対処を

維新の音喜多駿氏が興味深い投稿をSNSのXに流していた。音喜多氏の投稿はいつながらにわかりにくいが要約すると「選挙妨害が横行しているが候補者にやられると政治運動と区別がつかなくなり警察が介入しにくい」ということになる。

音喜多氏はこれがビジネスになる可能性を示唆しており非常に興味深い。結論だけを書くと日本の民主主義を守るために早く対策を講じるべきだろう。

だが、音喜多氏は同時にひっそりと開発された手法の「マニュアル」も配ってしまっている。おそらく本人は気がついていないのではないか。

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音喜多駿氏は次のように指摘する。つまりこれがビジネスになると言っている。

これまでは無視することが最善手だった迷惑行為についても、チャンネル登録者や動画収益を目当てに放っておいても獲る(撮る)ものを獲っていく相手がいることを考えれば、対処方法をアップデートする必要があります。

日本では政治家は庶民より偉い人でありなおかつ政治家は大変儲かる商売だった。税を徴収しそれを分配する権限を持っているからである。

だが自民党は安倍政権下でこれを破壊してしまった。アベノミクスで改革を先送りし続けたために政治家が「分配」できなくなった。分配には予算の分配という直接分配と成長構造を作り国民に富を分配する間接分配がある。政治家をGHQに例えるとチョコレートがない状態である。誰も政治には関心を持たなくなるだろう。

政治の魅力が薄れると相対的に愉快犯的に選挙に参加する人が増えてくる。つまり政治がビジネスになってしまうのだ。

これを最初に発明したのが「NHK党」である。経理に詳しかった創始者が政党助成金を原資にした「スキーム」を発明した。このやり方で「投資」を集めたが、持続可能性にはやや問題があった。そこで彼が思いついたのが代表権を移動し負債を全て他人に押し付けるというやり方だ。一旦押し付けておいて「取り返そうとする」というやり方は天才的だ。押し付けられた方は何が押し付けられているかには全く気が付かず今も代表権に固執し続けている。

道徳的にみるとNHK党の状況は問題が多いのだが冷静に考えると制度を合法的に利用したものになっており排除が難しい。

今回の動きも同じことが言える。このブログでも「誰が何をやったか」は(だいたい報道もされているが)触れていない。特定候補を名指しした瞬間に選挙妨害になる可能性がある。警察が踏み込めないのも同じ理由によるのだろう。

自民党は政治と金の問題をうまく処理したつもりなのだろうが形式的に法律に合致すれば「なんでもあり」という状況を作り出してしまった。だからこそ政治を中から破壊しようとする運動も形式的に合法であれば「表現の自由=政治活動の一環」ということになる。

アメリカ政治を知っている人ならばこうした政治状況は既にアメリカで一般的になっていると気がつくだろう。

ただし、アメリカと日本では若干の違いがある。民主主義の国アメリカでは多くのアメリカ国民が政治に潜在的な願望と明確な意見を持っている。政治に興味のないトランプ氏は有権者の隠れた願望を外から見つけるのがうまい。有権者たちは実際には自分達の願望を語っているだけなのだがトランプ氏を支持していると思い込んでいる。それだけ人間は自分のことが大好きだ。

ところが日本は厳密には国民主権の民主主義国ではない。政治は限られた人たちのものであり庶民はいつも蚊帳の外に置かれている。だからこそ「外からそれが破壊されるのを眺めている」人が多い。日本にとって政治は他人事である。別に壊れても構わない程度のものなのである。つまり形式的には民主主義国だが感覚的にはそうではないという状態だ。

おそらく音喜多氏が本来考えるべきなのは「なぜこうした動画に『需要』があるか」だろう。

ただ、音喜多氏は札幌の問題を挙げている。これは安倍総理大臣への政権批判やじが訴えられたという事件だった。札幌について挙げたことで党派性が刺激され「公共の福祉」のコンセンサスが取りにくくなるものと考えられる。日本ではアメリカの政治状況があまり伝わっておらず政治家自身もこの問題を危険性をまだ十分に認識していないのかもしれない。札幌を挙げたのは浅知恵だった。

さらに今回の投稿で音喜多氏は東京15区の手法を定式化してしまったと言える。つまり誰かが発明したビジネスモデルをマニュアルにしてSNSのXにばらまいてしまったのだ。

「なるほど、当事者になればいいのか」ということだ。

音喜多氏が既に指摘しているようにこれは「表現の自由」が絡んでいる。アメリカでトランプ運動を規制できないのと同じように本質的で核心的な要素であり国家権力によっては規制できないが、実際にこの手の「選挙ビジネス」が横行すれば、我が国の民主主義は根本的に破壊されることになるだろう。

いくつかのアプローチが考えられるが早急に対応すべきだろう。その意味で構造を明確にしマニュアル化した点といたずらに党派性を煽り特定の支持者を振り向かせようとしたのは悪手だったといえるのかもしれない。

公共の福祉の観点からこれを規制するにせよ政治の本来の魅力を高めるにせよ、まずは幅広いコンセンサスを得る努力をしなければならないのである。ここは政治家の度量と道徳心が試されている。

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