イスラエルがイランなどを攻撃した。すわ第三次世界大戦かという情報も飛び交ったのだが、結果的にはイランが「警報装置が作動しただけでダメージはなかった」と宣言したことで沈静化に向かっている。エントリーをいくつかに分けてそれぞれの国の立場から報道を整理する。まずはイスラエルだ。イスラエルは欲しいものを手にすることができなかった。
イスラエルは事前にヨーロッパから攻撃を制止されていた。だが、ネタニヤフ首相は「決めるのは自分である」と宣言していた。つまり王様はイスラエルだというのである。その宣言通り、アメリカに事前通告を行い(核開発施設は攻撃しないが報復は実行すると語ったなどとされる)アメリカの答えを聞く前に報復作戦を実行し、実行したと公に宣言した。今回は核施設を攻撃しなかったが「いつでも核施設を狙える」と示したとの報道もある。また、イランの中核的な施設は破壊しなかったのだから「これで打ち止めである」と暗に示したのだとも分析されている。
しかしながら、事前報道ではイスラエルの極右はイランがパニックを起こすことを期待していたと見られている。BBCは次のように伝える。
ネタニヤフ首相を支える連立勢力に参加する過激なナショナリストたちも、イスラエルは激烈に反撃すべきだと力説していた。イスラエルは「狂乱」状態になって反撃する必要があるとまで主張する極右関係者もいた。
しかし、イランはイスラエルが期待していたようなパニックは起こさなかった。ガザ地区での非人道的な行為から目を逸らし、アメリカをもっと大規模な混乱(中東戦争と呼ぶか第三次世界大戦と呼ぶかは規模次第だっただろうが)に引き摺り込むことはできなかったことになる。
自分達は王様であると証明できたものの欲しいものは手に入らなかったイスラエルは今回かなり危険なものを燃やしている。
西側はイランが一方的にイスラエルを侵略してくるかもしれないという前提でイランへの制裁策を組み立てている。だが実際に事態をエスカレートさせようとしているのはイスラエルだ。G7や大統領選挙を控えるアメリカ合衆国がこの前提を変えることはないだろうが、破綻していることは誰の目にも明らかだ。
アメリカでは今回イスラエルの行動が事前通告であったことは広く知られており、イスラエルの暴走は明らかになっている。これはアメリカのイスラエル支援がさらに危険なエスカレーションにつながるかは全てイスラエル次第であるということを意味する。
イランとの国交がありガザ和平交渉に重要な役割を果たしてきたカタールが仲介から降りようとしていた。今後のカタールの動向に注目が集まる。
イスラエルは「自分達が王様であり欧米はそれを支援していればいいのだ」という姿勢を明確にした。つまりいっけん欲しいものを手にれたことになる。だが、目的にしていた大規模な混乱は達成できず、支援の前提となっていた「イスラエルは一方的な被害者である」という図式も崩壊した。
視野狭窄に陥った集団思考の恐ろしさがある。彼らは連日戦時内閣の閣議室に集まり欲しくない情報を全て棄却したうえで自分達の欲求を満たそうとした。