投資にとってリスク情報の精査は極めて重要だ。だが、ランキングサイトでふらふらと情報をとっているような人はかなり騙されたのではないか。イスラエルがイランからの攻撃を受けて以降、SNSのXでは「24時間から48時間以内にイスラエルが報復するのではないか」という投稿が流れた。
信じた人と信じなかった人には決定的な違いがあった。特に投資をやっている人たちにとっては「今後騙されないようにする」ことが重要だと感じた。今後このようなボラティリティの高い不確かな局面が増えてゆくだろう。新NISAの導入やオンライン証券会社の一般化などもありこうした情報を自分なりに整理してゆく必要が生じている。
イランがイスラエルに空爆を行ってすぐ、SNSのXでは24-48時間以内にイスラエルが反撃するという情報が流れた。後になって冷静に見返せば「これはちょっと怪しいな」とわかる。出元はAI画像を使ったミームであった。ネタニヤフを逮捕しろというハッシュタグが添えられているものが多いことから特定の効果を期待して流されているのだろう。ところが、これが日本語に翻訳されるとそれを信じる人が出てきた。
特に投資を行なっている人にとってリスク情報は極めて重要だ。騙された人も大勢いたのではないかと思う。騙された人も騙されなかった人も「何が違いを作ったのか」を整理しておくとよさそうだ。
この話には少し複雑な点がある。実はリスク回避ムード自体はまだ続いている。つまり「情報自体は嘘」だったが結論は一部正しかったことになる。
攻撃直後にアメリカの専門家から「実はこの戦争は管理された戦争である」という説が出てきた。バイデン政権はイスラエルが自分達を危険な状況に引っ張り込もうとしていると知っておりこの流れに巻き込まれまいと必死だったようだ。
ところがロイターが戦時内閣は報復で一致したという報道を流したことで事態が一変する。この状況は今でも続いており市場はリスク回避ムードが続いている。具体的にはアメリカの株価下落・日本株価下落・原油価格の高止まり予想・金の価格高騰・円の下落になる。
アメリカの専門家は合衆国のイスラエルに対する影響力を過大評価していたことになる。
では騙された人にはどんな人がいるのかを見てゆきたい。今回「特に騙されなかった」という人はおそらく何か思い当たる点があるはずである。
出典を気にしない人
出典の入っていない情報をそのまま信じてしまう人が多いと感じた。ページビューを稼ぐためにセンセーショナルな見出しで言い切っている人もおりこれが情報の拡散に一役買った。必ず誰が何を言っているのかを確認するように心がけたい。複数の情報ソースが引用されていることも重要だ。
と同時に局面が変わっていることからも「絶対的な真実などない」という理解も必要だろう。逆に騙されなかった・なんとも思わな買ったという人は無意識に出典を見て「他の人はどう言っているのか」を気にしている人ではないだろうか。
タイムスタンプを気にしない人
今回は途中で情報が大きく変わっている。ところがXのアルゴリズムはタイムライン通りに並んでいないため、新旧の情報が混在する。これが混乱の一つの原因になっているようだ。タイムスタンプは気にしたほうがいいということもわかる。これも「できている人」にとってはなんでもないちょっとした習慣の一つにすぎないだろう。
戦争が何なのかよくわかっていない人・考えようとしない人
実は今回の問題でもっとも大きな違いは誰をフォローしているかだろう。中にはフェイクの存在にすら気が付かなかったという人もいるはずだ。タイムラインがきちんと整備できているのである。
「明日学校が燃えたら休みになるのになあ」程度の認識で第三次世界大戦だと書いている投稿も多かった。多くの日本人にとっては通常の感覚かもしれない。だがこの手の人たちに囲まれていると、こうした情報を信じやすくなる。
おそらくリアルで「この手の人たち」との関係を断つのは難しいだろうが、SNSにこうしたつながりを持ち込んでしまうといざという時に「ガーベッジ(ゴミクズ)」に汚染される可能性がある。今回引用なき情報に多く接した人は情報収集用のアカウントを使い分けるなどして対処したほうがいいのかもしれない。
日本の常識が問題の理解を難しくする
最後の類型は少し難しい。日本の常識が問題理解を難しくしている。投資や政治言論に一般の人が触れる機会が増えているが「何が理解できていないのか」を勇気を持って告白できない人や「政治経済のような特殊な問題には口を挟んではいけないのではないか」という人たちがいる。これが状況理解を難しくしているようである。
日米同盟を前提に同盟を考える人
日米同盟は対等な同盟ということになっている。だが実際にはアメリカが守っているのは米軍の利権であり日本はその「ついで」にアメリカに保護されているという状態だ。日本人はアメリカに心理的に依存しているがアメリカはそう考えていない。
だが、アメリカとイスラエルの関係はこれとは違っている。アメリカ国内にユダヤ人が多く暮らしているため感情的にイスラエルを見捨てることができない。つまりアメリカにとってイスラエルは感情的な問題である。これが理解できない人が意外と多いようだった。
特に日米同盟は古くからあるもつれた政治課題なので「アメリカは単に日本を利用しているだけ」という理解自体が嫌われる傾向にある。
イランの場合も「中東にある小さな国」と思い込んでいる人がいた。つまり誰もイランを保護してくれないのではないか?という見方をしている。イランがイスラム・シーア派の地域大国だという理解がない。アメリカを牽制するために地域大国を利用したいという国や政治勢力も多いのだが、大国というのはG7のような先進国を指すのであって、イランなどはきっと小さな国だろうと考える人にとって、イラン、サウジアラビア、ロシアなどの関係を把握するのは難しいだろうと感じた。
今回は道徳的にこの問題にアプローチをしている人たちが多くいる。そして「それは違う」と説明されると「とにかく何かが違っているらしい、恥をかいた、もうこの問題について言及するのはやめておこう」として議論から撤退してしまう人が多いようだ。
これまで投資をしたり経営企画室で経営計画を立てるような人たちは「道徳を超えてゆく」訓練ができているのだが、投資が一般化し政治問題について語る敷居が低くなることで、道徳を超えてゆけない人たちが多く議論に参加するようになっている。
中東流交渉術が理解できない人
イスラエルにせよイランにせよ今回「大袈裟な言動」や「踏み越えた行動」を積み重ねることで自分達を保護しようとしている。ところが日本人にはそのような感覚はない。どちらかと言えば周りを怒らせないような気遣いが重要と考える人が多い。これも問題理解を難しくしているようだ。
我々を取り巻く環境は大きく様変わりしている。真偽不明な情報が流れており何を信じていいかわからない。ところが、自己責任による資産保全が求められるようになってきており、これらの豊富な情報を取捨選択しながらやってゆくしかない。完全に信頼できる情報などないがこの不確かな状況の中でどうにかやってゆくしかないという状況だ。
また世界には日本の常識が通用しない地域が多くある。暮らしに直結する石油を中東に依存する日本人にも「常識の通用しない人たち」を理解することが求められている。