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消費税の歴史 – なんで社会保障だけ財源がないのか

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Twitter上でなんで社会保障だけ財源がないというの?というハッシュタグを見つけた。これを知るためには消費税の歴史を見るとよい。簡単にいうとみんな騙されているのだが、それを認めると「バカがばれる」ために、放置しているのだ。大人は政治のことが分かっているなどと思っている人もいるのだが、大人の認識ってこの程度なのだ。
日本で最初に一般消費税が検討されたのは、1979年の大平内閣の時だった。大平首相は最初の赤字国債(これは例外とされた)を発行した大蔵大臣であり、直接税だけでは日本の財政は立ち行かなくなるだろうと考えたわけだ。だが、この考えは猛反発を食らった。後継の中曽根内閣も消費税を導入するのではないかと疑われたが、結局国民を説得するのに失敗する。このころからなんとなく「消費税=負担増=悪」というイメージが付いた。
竹下内閣で3%の消費税の導入が成功するが「金権政治」が国民に嫌われていたこともあり、自民党内閣は国民の信任を失っていった。この結果、細川首相を首班とした非自民政権が誕生した。つまり自民党は消費税で政権を失ったのだ。ところが、細川首相は突然「一般消費税を廃止して、7%の国民福祉税を導入する」と言い出した。すぐに撤回したものの、細川内閣は急速に支持を失い、政権は自民党に戻った。
もともとは財政健全化のための財源だったのだが、国民を説得するためには「これはあなたたちの老後の面倒をみるためのものですよ」という物語が徐々に作られた。大蔵省(財務省)が主導したのか、政治家が考えたのかは分からない。そしてそれを「福祉・社会保障は消費税の枠で」と言い出す人が出てきた訳だ。いつのまにか論が逆転していったことになる。これを消費税の社会保障財源化という。
こうして、消費税は、消費税増税をしなければ、社会保障の財源を確保しないぞという脅しの材料として使われるようになった。と、同時に安倍首相のように「消費税を増税しない」という言葉をあたかも「減税してやっている」という印象で使う政治家も表れた。新聞社やテレビ局もなぜかそれを既定路線として伝える。
もう一つ「社会福祉」は「施し」の同義語のように使われているという問題もある。余裕がある時にやるものであって、余裕がないのになぜ社会福祉に金を出すのかという議論である。日本で実際に福祉を担っていたのは家族と企業なのだが、この中には次世代を育成するための投資が含まれる。いわゆる「市場の再生産機能」である。民主党の言った「コンクリートから人へ」というスローガンは社会保障を投資としてリポジショニングしたという意味では正しいものだった。しかし、民主党の運営はきわめてまずかった。「埋蔵金がある」と言っていたのだが、結局、財務官僚に取り込まれ「消費税を増税するしかない」という論調に戻ってしまった。
経緯を整理すると、もともと財政健全化の為に導入され、正当化のために「あなたたちのための税ですよ」といわれ、それが変化して「この枠内でしか、あなたたちのために使いませんから」となったことになる。国民の多くはこれを素直に信じている訳で、非常に騙しやすい人たちだということが言える。