ロイターがアベノミクス特集というのをやっている。URLから判断するとすぐに消えてしまうのではないかと思う。この図表を見ると、実消費は今年に入って上向いているようだ。いよいよトリクルダウンの効果が出て国民の生活が上向いてきたかと思えなくもない数字である。賃金は下がっているということでもなさそうだ。だいたい誤差の範囲で張り付いている。ただしグラフは名目である。
実消費が上向いてきたのは、人々がアベノミクスを信頼しているからということではなさそうだ。2014年には物価は上昇していた。ところが2015年には物価が再び下落した。これはエネルギー価格が低下したからだろう。そこで、消費者マインドが少し回復したと考えるのが妥当だろう。
人々は「アベノミクスは利いている」と感じたのは就任以来株価が上がり円の価格が下がったからだ。これがアベノミクスの成果だと考えている訳だ。第一印象は大切である。しかし、2015年には株価は低下傾向にある。円の価格と連動しているらしい。多分、ドルベースではあまり変化がなかったのではないだろうか。株価が下がっているからといって、実消費が冷え込むということもない。つまり、経済が好転するということと、株価とは別の問題なのだ。
これらを総合すると、日本の景気は外国の金融政策、消費の動向、エネルギーの生産と供給量に左右されている。日本の政策の貢献度はそれほど多くなさそうだ。
消費税延期についてのアンケートが付いている。消費税の延期に賛成する人が過半数だが、安倍首相の説明には納得していない。アベノミクスについては30点しか与えられないという人が40%近くいる。つまり、結論には賛成だが安倍首相の政策には同意できないということになる。しかし、これが投票行動に結びつくかどうかは分からない。
これらを総合すると、アベノミクスはそもそも経済状態を変えるのに何も役に立っていない(悪影響を与えているわけでもない)ので、正否を問題にするのは無意味と言えそうだ。そして、国民はそもそもそこにどういう理由があるかを特に気にしているわけでもなさそうである。
消費税を8%から10%に上げるか上げないかで大騒ぎしているのだが、福祉負担は増加の傾向にある。すると企業は負担を嫌がって正社員雇用を控えるという循環になっている。