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契約を重んじない日本人と舛添都知事辞任騒動

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舛添東京都知事の会見が終わった。一言で言えば「不適切な支出はあったが、違法性はないので留任する」というものだった。これに対するマスコミの対応は面白かった。マスコミは明らかに知事を辞めさせたがっていて、納得していないようだった。そこでいろいろな質問をして、弁護士を呆れさせていた。
残念ながら知事は分かって「公私混同支出」を行っている。つまり、ルール上は私的に税金を使い込んでも違法にはならない。したがってルール上は辞める必要はないのである。
選挙は重要だ。有権者が人物を判断できる機会は都知事選挙しかない。だから、政党はいろいろなチェックを行って候補者を選び、有権者は何重にもチェックを重ねる必要がある。つまり、これは契約なのだ。ところが日本人は契約を重視しない。代わりに日本人が重要視するのは「その場の空気」である。何か問題が起ればみんなで押し掛けて社会的なプレッシャーをかけて潰そうとする。そして、多くの場合それで問題を解決してしまうのである。
よく契約書の最後に「トラブルがあったときには両者が話し合って解決するものとする」という何の役にも立たない文章が入っていることがある。日本人は契約書で全てが網羅されるとは考えておらず、このような曖昧な紛争解決方法を留保することを好む。
マスコミの人たちは自分たちは有権者を代表していて、都知事を吊るし上げる正当な権利を持っていると信じているようた。何らかの罰を与えることを期待している。これは人民裁判権のようなものだが、残念ながらマスコミにはそうした権力は付与されていない。
同じような姿勢は国政にも見られる。安倍首相が消費税の増税延期を決めたことにはおおむね支持が集まっている。だが、その理由は納得できないという。しかし、多くの有権者は自民党を支持するだろう。それは「何かあったらプレッシャーをかけて退陣に追い込める」と信じているからだろう。その代わりに細かなロジックにはあまり注意を向けない。明らかに憲法改正を狙っているにも関わらず争点化しない。すると「まあ、安倍さんもそういっているし考えるのはやめておこう」ということになるのだ。後になって人民裁判権を行使しようとする所も出てくるだろうが、全く無意味である。
次の争点は「都民の代表である都議会の審議」があるそうだ。都議会議員の関心は「自分たちの利権を確保すること」であり、一般都民の鬱憤を晴らすことではない。舛添都知事には弱みがあり、そうした人たちを牽制することはできなくなった。故に、退任までの間、都議会が都政を私物化するということが横行することが予想される。百条委員会を設置して、都議会に厳しい都知事が出てくるよりも、舛添さんのままで行く方が都合がよいわけだ。
当たり前のことだが、選挙は重要だ。後で大騒ぎしても遅いのである。マスコミは都知事選挙のときに舛添候補の人物チェックを怠った上に、自分たちの人民裁判権が侵されたと言って騒いでいるのだ。


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