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チョコレートが食べられなくなる! 西アフリカ産のカカオ豆価格が異常な高騰

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アフリカの気候不順は多くの気象難民を生み出しているが「所詮はアフリカの出来事」と考えられることが多い。そんなの自分達には関係ないやと思う人が多いかもしれない。

だが、今後チョコレートが食べられなくなると言われたらどうだろうか。

実はカカオ豆の価格が高騰していてついに銅の価格を超えた。原因は天候不順と病気だそうだ。事実上の国家デフォルトからの回復途上にあるガーナがまた国家財政の危機に陥る可能性もある。

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西アフリカでは天候不順が続いている。2023年7月13日のJETROの記事では天候不順による供給懸念が出ており先物の取引が停止されていた。気候不順と言ってもさまざまなものがあるが今回問題になったのは5月から7月にかけての大雨だった。

カカオ豆の4割はコートジボワールが担っており隣国のガーナと合わせると7割程度がこの地域で栽培されている。収穫期はメインクロップ(10月1日~3月31日)とミッドクロップ(4月1日~9月30日)に分けられるそうだ。

2023年11月29日のロイターの記事でもカカオの価格が高騰している報道されていた。つまり去年の春先の大雨による被害から回復できていないことがわかる。

さらに最近のニュースでは先物価格が最高値段に達したと書かれている。一旦中止されていた先物取引は再開されたようだが価格は上がり続けている。

史上最高というが一体どれくらいの価格になるのか。どうやら1トンあたり9000ドルとなり銅の価格よりも高くなっているという。その値上がりは驚くべきもので年初と比べ2倍になっており今月だけで50%も上昇したそうだ。時事通信の最新の記事は一時10,000ドルを超えたとしている。

とはいえ、価格の異常の高騰は投機筋のせいではないかと思った。ところが先物市場が中止されたりもしておりそもそも投機筋は撤退しているそうだ。つまりこれは本物の供給量低下による危機なのである。

小麦やトウモロコシなどの穀物は世界各地に産地がある。他の地域で小麦やトウモロコシが足りなくなると他の地域の農家が穀物価格の上昇を予想して土地を当該作物に振り分ける。それによって供給量が調整される仕組みになっている。しかしながらカカオはそうはゆかない。西アフリカ(ガーナとコートジボワール)に産地が集中している。カカオはもともと中南米の作物だそうだが、今では西アフリカが世界の70%のカカオを供給している。

加えて病気も蔓延しているそうだ。

2019年にBusiness Insiderが「チョコレートは2050年までになくなる? カカオの安定供給のため、遺伝子工学を利用し始める企業も」という記事を出している。Business Insiderは「カカオ豆が絶滅する危険性がある」とする。フロスティー・ポッド病、カカオウイルス病、ブラックポッドなどの複数の病気が存在するという。これを救うためには遺伝子組み換えしたカカオを使うしかないが「遺伝子組み換え」は何かと評判が悪い。

カカオの病気で検索すると興味深い記事を見つけた。

カカオは平均気温27℃以上、湿度が70%~100%で降雨量が年間2000mm以上でしか育たないそうだ。だがガーナとコートジボワールでは地球温暖化による乾燥と多雨が同時に進行している。このせいで生育が難しい状況が整いつつある。地球温暖化は一方的な多雨をもたらすわけではなく気候を極端化させることがわかる。

さらに、アジアが豊かになりかつては贅沢品だったチョコレートを食べることができる人たちが爆発的に増えた。つまりカカオの供給が先細る中でカカオを欲しがる人は増えている。つまりカカオの供給が元に戻っても日本人が買い負けてしまう可能性もある。

こうしたさまざまな状況が積み重ねられ、カカオの価格が銅よりも高い価格になっている。食べられて当たり前だっただったチョコレートがある日突然もう食べられなくなる未来がやってくるかもしれない。

ガーナの経済規模は長崎県と同程度だそうだが、経済はカカオや金などの一時産品に大きく依存している。2022年12月に対外債務が払えなくなり事実上のデフォルトに陥っている。

2023年には石油製品の代金を現物で返すと表明した。この時の現物は金だった。

ガーナは資金繰りに非常に苦労しており政府が借金をしないと農家からカカオ豆が買えない。担保として使われるのもカカオ豆なのだそうだ。カカオ豆が取れなくなるとカカオ豆融資が受けられず従ってカカオ豆農家が収入を得られなくなる。

当然次の年のカカオが作れないためますますカカオ豆の供給が先細る。Bloombergこの記事で使われているトランシュは「輪切り」の意味だそうである。

日本後では自転車操業などというが、将来のカカオ豆で今のカカオ豆を買うというような自転車操業が気候変動によって破壊されようとしている。

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