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自民党の女性蔑視的な「選挙に行こう」マンガについて考える

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自民党が18歳選挙権解禁に向けて「選挙に行こう」というマンガ冊子を作った。これが女性蔑視的だとして一部で盛り上がっている。内容はあまり頭がよくなさそうで自分にも自信がなさげな女性がイケメンで頭の良い男子学生に導いてもらうというものだ。自民党の人たちが持っている「女は馬鹿」という思い込みが反映されていて面白い。
しかし、これが有害だとは思えなかった。そもそも学生がこれを読むとはなさそうだ。女性に限らず読み手は「万能感」を持ちたがる。供給者よりも消費者の方が偉いわけである。万能であるはずの自分たちにとって「ピンと来ない」のは供給者の商品開発力が足りないからで決して自分たちの理解力が足りないからではない。ぱっと見でよく分からないものは「スルー」すればよいのである。
NHKが選挙に行こうキャンペーンをやっていたが、そこに出てくる若い女性マーケティングコンサルタントが「政治は女性に近づくべきだ」と言っていた。これは政治的に女性や若者に優しい政策を立案せよということでは決してない。お洋服や小物を売るような感覚で商品開発に力を入れろと言っている。あぜんとさせられる要求(正直なところ、女ってパカだなと思った)だが、当然である。そもそも「オンナコドモ」には自分たちのコミュニティの自治を任せてこなかったから「自分たちの意思決定が他者に影響を及ぼす」などという頭はない。代わりに刷り込んできたのは「消費者としての私」である。
これは女性蔑視ではない。男子学生にも「自分の意思決定が他者に影響を及ぼす」という意識はないだろうからだ。
もし本気でアピールしたいならば「顕示欲求」を満たすべきだろう。一言でいえば「投票に行く絵」をインスタグラムにのせて自慢できるかということである。この「インスタで私らしさアピール」という図式は高齢者には理解しがたいようだ。比較的新しい消費スタイルだろう。
消費者の行動は二分化されている。生活必需品には最低限の関心しか向けないが「インスタで絵を作る」ようなものにはおおいなる関心が向く。ただし、自己認識に関わるので「私用に完璧にカスタマイズ」されていなければならないだろう。彼ら彼女らが考える「私らしさ」は自然らしく作られたイングリッシュガーデンのようなもので、決して自然ではない。雑草など生えていてはいけないのである。
そこまでして若い有権者にすり寄るのはいかがなものかという声もあるだろう。で、あれば学生時代から政治課題について討論させて、主権者意識をしみ込ませる必要がある。ところが、自民党は学生が政治意識を持つのは嫌っているようだ。先生が政治運動をするのも禁止されているようだし、デモにも届け出などの制限がかかりそうだ。ただ黙って何も考えずに自分たちに投票してほしいのだろう。よく考えればそんなことはあり得ないことが分かる。だが、それが自民党の望みなのだ。
民主主義の根付いた国では議員がでかけていって、学生の課題を聞いたりしているそうだ。ところが日本人は(政治家に限らず)ただひたすらに自分の歌だけを聞かせたがる。これは民主主義と言えないばかりか、コミュニケーションとしても成立していない。
こうした「有権者に考えさせない教育」はいっけん権力者によって都合が良さそうだが、大きな欠点がある。一部の人は過激な思想に触れて熱心な政治的意見を持つようになるのだ。「安倍首相は戦争ができる国を目指しているが、話合いによって戦争はなくせるはずだ。だから自衛隊を災害救助専門部隊にしろ」という発言が出てくるのは、学生時代に政治や歴史に触れさせなかったからだ。それに対峙する人たちも「アメリカとの同盟関係さえ維持できれば、国防予算を支出しなくても守ってもらえる」などと言い出す。どちらも現実的ではないが、始めて政治的意見形成したわけだから、仕方がないことなのだ。
禁止するから過激な意見を持つ人と全く関心がない人という二極化が起る訳である。


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