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タブレットの使用は本会議では認めない 国会に蔓延る意味不明の前例主義

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国民民主党の玉木雄一郎代表が「議会でタブレットの利用が認められない」と呟いていた。かなり反響があったようで「思いのほかバズった」などとご満悦だ。これがバズったのはおそらく、新規事業から職場のちょっとした改善まで同じような前例主義に苦しんでいる人が多いからだろう。国民民主党の支持拡大のためには意外な「鉱脈」になるのではないか。自民党の「品がないから」という発言は衆議院の議員規則に基づくものだが校則並みのこまかさである。ここまで規定しないと議会の品格が保てないのかと少し呆れてしまった。

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自民党側は「品がないから使わせない」と言っているようだが、彼らの態度を変えさせるのは簡単だろう。票になるならばろくに読まないままでも政策協定書にサインしてしまうような人が大臣になっている。つまりタブレット使用をしたい議員たちのツイートなどに「支援します」と呟けばいい。「票になる」「他党に票を盗られる」と考えれば議員たちは裸踊りでもなんでもやるだろう。そもそも「品格」とは縁遠い人々だ。

根拠になっているのは議員規則のようだ。このうちの「第二百十五条」に抵触するという。ネット接続ができる物を使うと暇潰しのために利用されかねないという懸念があるのかもしれないが、おそらくかつて暇な議場で新聞を広げる議員がいたのではないか。学級会並みに細かい規則が作られているのだなあと感じる。ここまで細かく決めなければ「品位が保てない」人たちなのだろう。

  • 第二百十一条 議員は、議院の品位を重んじなければならない。
  • 第二百十二条 議員は、互いに敬称を用いなければならない。
  • 第二百十三条 議場に入る者は、帽子、外とう、えり巻、かさ、つえの類を着用又は携帯してはならない。但し、病気その他の理由によつて議長の許可を得たときは、この限りでない。
  • 第二百十四条 議場において喫煙してはならない。
  • 第二百十五条 議事中は参考のためにするものを除いては新聞紙及び書籍等を閲読してはならない。
  • 第二百十六条 議事中は濫りに発言し又は騒いで他人の演説を妨げてはならない。
  • 第二百十七条 何人も、議長の許可がなければ演壇に登つてはならない。
  • 第二百十八条 議長が号鈴を鳴らしたときは、何人も、沈黙しなければならない。
  • 第二百十九条 散会に際しては、議員は、議長が退席した後でなければ退席してはならない。
  • 第二百二十条 すべて秩序に関する問題は、議長がこれを決する。但し、議長は、討論を用いないで議院に諮りこれを決することができる。

そもそもなぜこの程度のことが議論になっているのか。産経新聞によるときっかけになったのは河野太郎大臣が答弁でスマホを使おうとしたことだったそうだ。末松予算委員長(当時)に叱られたことで「なぜスマホはだめなのだ?」という議論になったそうである。

タブレットやスマホの使用に限らずペーパーレスを進めると年間1200万円の印刷費削減ができるとされている。決して大きな額ではないが「国民負担の議論と経費削減の議論を同時にやってゆきます」と宣言している政府はまずこの程度のことは率先して対応してもらわなければ困る。

この政策を推進しているのが維新であるという点も問題になっているのかもしれない。「維新が率先して年間1200万円の経費削減に成功した」と宣伝材料になるのを嫌がっているのかもしれない。SNSの使用に関しては一部の野党議員と自民党の高齢議員の間に絶望的なリテラシーの差がある。IT化が進むと選挙に不利である。全ての物事を「勝った負けた」で評価したがる自民党の方が「品がない」という気もする。

国民民主党の提案はかなり慎ましい控えめなものである。ここから踏み込んで全員にタブレットを配り「これからは連絡は全部これでやりますよ」でもいいと思うくらいベーシックなことしか言っていない。審問のオンライン化には共産党も反対しているそうだがペーパーレスに関しては議論が進みそうだ。

  • オンライン審議の推進
  • 本会議でのタブレット使用
  • 配布資料ペーパーレス化
  • 院内全室へのWi-Fi完備
  • 本会議採決の押ボタン化

国会の前例主義はかなり病的なものになっている。2019年には先進国(OECD加盟国)の実態を調べましょうという機運もあったという。朝日新聞は「導入に向けて検討が進みそうだ」としていたが、本会議に関してはいまだにこの壁が破られていない。元々日本の民主主義は西洋のモノマネだが今でも「欧米などがやっているからやる」とか「いやそれでもやらない」というような生産性が低い議論が延々と続けられている。この時は53議会を調査したそうだがこれにどれくらいの経費をかけたにも興味が湧く。

実際の国会議論にはかなり深刻な認識の食い違いも多い。同じ日本語を話しているようでいて外国人同士が話しているというくらい意思疎通ができていない。維新の議員が予算の締めくくり質疑で「今の政府のDX化は業務改善を含んでいないので単なるデジタル化なのでは?」というような質問をしていた。だが答弁を受ける側の閣僚たちはおそらくその意味を全く理解できていなかったのではないかと思う。

ただ今回の件はそれ以前の問題といった感じのレベルの話でしかない。こうした不毛な議論はSNSのバズくらいで覆すことができるだろう。「時代遅れの人たちを支持することはできない」と呟けばいいだけである。早くこの程度の問題に蹴りをつけて生産性向上の話に移行してほしい。

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