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「アートだから2億円トイレは当たり前」 自見万博担当大臣の新しい名言

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自見英子大臣から新しい名言が飛び出した。マリー・アントワネットの「パンがないならお菓子を食べればいいじゃない」を思い出す。

大阪・関西万博に新しい問題が浮上した。会場のトイレが2億円もかかるという。ネットでは批判が集まっているが政府は全く気にしていないようである。このまま計画の変更はないそうだ。個人的に注目したのは自見万博担当大臣の発言だった。高くない理由として「アートだから」をあげている。吉村大阪府知事も同じ理由を挙げているため、おそらく開催側の言い分をそのまま発言したのだろうが自見さんが発言するとまた別の趣(おもむき)がある。

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大阪・関西万博は新しい計画が出てくるたびに世間をざわつかせる。今回の新しい案件は「2億円トイレ問題」である。トイレは40あるがそのうちの8つを40代以下の若手建築家に依頼する。その1つが2億円なのだそうだ。

このため自見担当大臣は「アートという側面があり、美しさなども考慮している」と説明した。

説明自体は間違っていない。吉村大阪府知事も同じことを言っている。しかし、結果的にこの発言はマリー・アントワネットのような響きを持ってしまう。

マリー・アントワネットは重税にあえぐ国民の困窮を理解しようとせず「パンがないならお菓子を食べればいいじゃない」と言い放ったと伝えられる。実際にマリー・アントワネットはそんなことは言っていないというのが定説だが、フランス革命当時の王室が庶民の生活実態といかにかけ離れていたかを示すために好んで使われる逸話である。贅沢な暮らしをしているマリー・アントワネットならそんなことも言いそうだなあということなのだろう。

自見英子氏は自見庄三郎氏の娘として福岡県に生まれた。自見庄三郎氏は医師免許を取得し医学博士としてハーバード大学に勤めた経験もある。後に衆議院議員として活躍し山崎派の旗揚げに参加したという地域の実力者だ。自見英子氏はその娘として地域の裕福な子女が集まる学校に通ったのちアメリカの高校に進学する。その後で日本の医師免許を取得しているそうだ。こうした経緯から自見さんが「下々の感覚」を持っていないのは当たり前と言えるだろう。

日本経済が順風満帆であればこうした発言が反感を持たれることはなかったのかもしれない。だが現在の日本はそうではない。企業経済は順調だが国民経済はそれとは切り離されている。日本には多額の資金が流れ込んでいるが(年間20兆円の国家黒字である)資産を持っている人たちは海外に資産を逃しておりこれが円安の一因になっているとも言われる。原因は内需の落ち込みだ。多くの国民は将来に期待が持てないため消費を抑制する傾向にありこれがGDP2四半期連続のマイナスという「テクニカルリセッション」の状態を作り出した。

内需が滞っているため経済界はあの手この手で内需の掘り起こしを政治に働きかけている。

現在経済界が期待しているセクターが2つある。1つがこのイベントだ。イベントをきっかけにして税負担によるインフラ整備を行い結果としてできた土地の付加価値を上げようとしている。当然その儲けは企業だけが頂く。大阪・関西万博の目的はおそらくイベントそのものではなく夢洲の開発だろう。

もう一つが防衛費だ。岸田総理がバイデン大統領の前で唐突に防衛費を2倍にすると約束した。だがその後円の価値が下がり始めている。このままでは儲けが得られないと考えた経団連が「43兆円は円高の時の設定なのでもっと増やすべきだ」と主張している。FNNに記事がある。利益代表を有識者として招き入れておおっぴらに利権誘導をさせるという点に「工夫」がある。

「有識者会議」座長・榊原経団連名誉会長:
昨今の物価や人件費の想定を超えた高騰、為替変動を考えると、43兆円の枠の中で、求められる防衛力、装備の強化を本当にできるのかどうか。

この時に「企業も応分の負担をする」とは絶対に言わない。少子化問題などでは「企業が負担をするのはおかしい」と盛んに牽制していた。日経新聞がたびたび十倉会長にインタビューをしている。消費税議論から逃げることは卑怯だとの主張なのだが法人税も上げてくださいなどとは言わない。

負担は「日本」にかかるはずなのだが自分たちは決して負担の対象にならないという自信があるのだろう。献金や選挙支援を通じて政治に関与し続けている経団連の強い自信と特権意識を感じさせる。

現代の我々から革命当時のフランスを見ると「革命が起きるまで王権側が何もしなかったのはどうしてなのだろう」と思える。だが、支配階級というのはそもそもそういうものなのかもしれない。自分たちは受け取るのが当然で国民は差し出すのが当然だと思ってしまうのだ。

日本は形式的には国民主権国家なのだが第三者的に見るとどうもそうはなっていないという点に独特の不思議さがある。どちらかと言えば「搾り取る人たち」と「搾り取られる人たち」に分かれてしまっているようにしか見えないが国民は大した抵抗はしない。

自見大臣にとってみれば2億円のトイレごときで「ガタガタうるさい」国民は潤いがたりないわけで、自宅にアートを飾ったり音楽鑑賞に出かければいいのだということになるのではないかと思う。一度、誰かじっくりとお話を聞いてあげてほしい。

今後とも自見大臣の「名言」に期待したい。

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Comments

“「アートだから2億円トイレは当たり前」 自見万博担当大臣の新しい名言” への1件のコメント

  1. 「不倫は文化」に匹敵

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