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ウクライナ軍がアウディーイウカから撤退 13,000人の兵士を使い捨てにして戦果を買ったプーチン大統領

ウクライナ軍が東部のアウディーイウカという要衝から撤退したそうだ。周りをロシア軍に取り囲まれそうになり「このままでは大勢の兵士が犠牲になる」として現地司令官の決断で撤退を決めた。西側の弾薬支援が滞る中、ウクライナ軍は極めて厳しい戦いを強いられている。

大統領選挙を控えたプーチン大統領にとってはキャンペーンで誇れる成果となった。時事通信によると13,000人程度の兵士が亡くなっており「兵士の命と引き換えに戦果を買った」ことになる。NHKも犠牲を厭わない戦い方でアウディーイウカを占拠したとしている。恐怖と血の犠牲によって支えられる民主主義がロシアに根付いているが、西側はこれに十分対抗できていない。

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ウクライナ軍が東部のアウディーイウカから撤退した。時事通信によると周りを取り囲まれそうになったことで徹底抗戦を諦めて現地司令官の決断で撤退したそうだ。

アメリカ政府はこの戦闘でロシアの犠牲は13,000人程度だったとみている。バフムトが陥落したときにはワグネルだけで20,000人以上が亡くなっているということなのでそれよりも犠牲が少ない。「ウクライナ側がかなり疲弊していることの表れだろう」と言うのが時事通信の見立てだ。だがそれでも13,000人という数は少ないものではない。

共同通信は「米国防総省高官は16日、ウクライナを侵攻するロシア軍の死傷者が少なくとも31万5千人に上るとの分析を明らかにした。」と伝える。これは「西側の支援によってプーチン大統領は31万人以上の損害を受けた」と言う意味なのだろう。だがプーチン大統領が3月の大統領選挙で勝つことは確実視されておりロシアの内部から市民放棄が起きてプーチン体制が打倒されると言うような話も聞かない。つまり逆に「ロシア国民を31万人以上犠牲にしても構わないほどプーチン氏の支配は揺るぎないものになった」という宣伝になってしまっている。

プーチン大統領は「ロシア民族存続には2人以上の子ども必要、プーチン氏が人口増訴え」としてロシア人の女性にもっと子供を産めと奨励している。自分の体制を支えるためにはもっともっと兵士が必要だということだ。つまり、経済を豊かにするための子供ではなく前線に送り込んで自分の犠牲にするための「子供」が必要なのである。

そんなロシアではいま密告が増えているそうだ。BBCがある密告者に取材をしている。この密告者によれば密告の動機は次の通りである。第二の理由は少し複雑だ。ロシアが多額の賠償金を支払うと経済的に困窮するだろうからそれは避けたいという気持ちがあるのだという。つまりロシア人の間にも自己保身の気持ちがありそれが歪んだ道徳心によって正当化されているということになる。情報が限られる中で「自発的に行動」した結果が密告ということになる。

第一に、ロシアがウクライナに打ち勝つための手助けを、自分はしているのだと。そして第二に、自分の経済的安定の助けにもなるからだと。

「埋めよ増やせよ」も密告型社会も日本人にはお馴染みのものだ。情報は豊富にあるはずだが、ラジオや新聞による「大本営発表」しかなかった第二次世界大戦中の状況にそっくりなのである。情報が多ければ市民が正しい判断を下せるということにはならないようだ。

ウクライナはロシアに十分に対抗できていない。アメリカでは現在大統領選挙が進行中なのだが、トランプ氏は「ウクライナの支援を止めればアメリカは面倒ごとから解放される」と主張している。ウクライナさえ諦めればロシアも交渉のテーブルにつくかもしれず「外交的天才」である自分ならプーチン大統領と互角にやりあえると感じているようだ。

トランプ氏が次の大統領になれるかはよくわからない。だが、共和党の一部がこの主張に賛同している。上院ではバイデン大統領と超党派による合意が結ばれ支援予算が通った。だがこれが下院を通過するかはよくわからない状況である。ジョンソン下院議長は穏健派からも強硬派からも突き上げを受ける立場にあるため「審議は急がない」としている。

危機感を募らせるゼレンスキー大統領ははドイツやフランスとの間に二国間の安全保障協定を結んだ。だが、首の皮一枚でつながったという危うい状況だ。ドイツもフランスも国内に「外国への支援を優先するべきではない」という人たちが増えておりEUの議会選挙では極右の台頭が懸念されている。

ウクライナは今非常に厳しい状況にあると言って良いだろうが、同時にそれは欧米の民主主義の揺らぎをも映し出している。

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