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オリンピック招致の疑惑について日本のマスコミがあえて伝えないこと

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今朝になって東京オリンピック招致について不正があったのではないかというニュースが出回っている。民放の報道はガーディアンの記事をもとにしており、ガーディアン紙上にあった図表が用いられている。注目すべきなのは伝えられていなことの方だ。ガーディアンの記事にある電通の名前が完全に省かれている。コメンテータは記事を読んでいるはずだから、知っていて「言わない」のである。
このニュースが伝えられた1日は大騒ぎになったが、Twitterでもトレンドワードにオリンピックや電通という名前はでなかった。Twitterは日本での運営でデジタルガレージと組んでいるのだが、デジタルガレージと電通の間には資本関係がある。
その後、JOC側は「支払い」の事実を認めた上で、2億円以上の金をコンサルフィーだったと釈明した。マスコミやネット世論を操作することで日本での炎上は抑えられたが、問題そのものが解決したかどうかは分からない。ガーディアンの続報では「ロビーイング」フィーがコンサル料に含まれると書いてある。日本語に訳すると「口利き」である。口利きは個人的な利益供与を含んでいた。この理屈を許してしまうとIOCが目標にしている「オリンピック選考過程をクリーンなものにする」という理念が失われることになる。
日本側からの口利きが判明するきっかけは、ディアク氏の息子、パパ・マサタ(パパ・マサッタ、パパ・マッサタなど表記が混乱している)がパリで高級時計などを爆買したことらしい。どうやら、選考委員たちにその時計を配ったようだ。招致委員会が「コンサルタント料」を払い、それを電通経由でパパ・マサタ・ディアク氏の友達の会社ブラックタイディングス社(今はない)に渡し、パパ・マサタ・ディアク氏がその一部で時計を買って選考委員に「お願い」したという容疑になっている。
また、今回の事案ではブラック・タイディングス社の口座が使われているのだが、これは資金洗浄にも使われていたようで今はなくなっている。BBCはイスタンブール側はディアク氏に協賛金の支払いを依頼されたが断ったので支持を失ったと伝えている。これが「公平な選定だったのか」は疑問が残るところだ。
日本側は「正当な金だった」と言っているのだが、招致委員会の金が買収に使われたのは確かなようだ。ここに税金が使われていなかったのかが今後の焦点になるのではないだろうか。また、IOCが2020年の選考を正当なものと見なすかどうかにも注目が集まりそうだ。

きっかけになったガーディアンの記事

ガーディアンの最初の記事は、オリンピック招致活動の疑惑だけではなく、背後にある電通と国際陸上競技連盟の関係が指摘されていた。この翻訳はかなり略してあるし文章の構成も入れ替えてあるので、詳細は原文に当たっていただきたい。原文はこちらから読める。支払いの主体とされるのはTokyo Olympic bid Teamだとされる。
また、GIGAZINが短い訳を出した。

東京オリンピック招致に絡んでラミーヌ・ディアク氏の息子の口座に多額の支払いがあった疑惑が持たれている。疑わしい支払いは130万ユーロ。東京のオリンピック招致が適切なものだったか疑問視されている。

スポーツ界には腐敗が蔓延している。FIFAや国際陸上競技連盟では不正が慢性化しており、IOCもソルトレーク大会の賄賂スキャンダルの後改革を行っているはずだった。

ラミーヌ・ディアク氏は1999年から2013年までIOCのメンバー。2013年の東京招致の段階では影響力を持っていた。また、2015年まで国際陸上競技連盟の会長をつとめていた。ロシアのドーピング疑惑を隠蔽するために100万ユーロを受け取ったとして捜査されており、現在はフランスから出国できない状態だ。

130万ユーロは東京側からシンガポールのブラック・タイディングズの口座に直接支払われている。口座はディアクの息子で国際陸上競技連盟にマーケティングコンサルタントとして雇われているパパ・マサタ・ディアクの関連口座だ。

ラミーヌ・ディアク氏は息子らと組んで国際陸上競技連盟の不正なガバナンスに関与している。電通は息子パパ・マサタ・ディアク氏と組んでおり、不正に関わったのではないかという疑惑の目が向けられている。WADAのレポートには電通のスポーツ系の子会社(本社はスイスのローザンヌ)アスリート・マネジメント・アンド・サービスとブラック・タイディングズの口座の関係が記載されている。電通との国際陸上競技連盟包括スポンサー契約は、ディアク氏が在任中最後の月に、2029年まで延長されていた、

電通はガーディアンの調査に対してブラック・タイディングズの支払いについては承知していないし、一連のマーケティングコンサルタントとの直接契約を否定している。JOCは広報の不在を理由に取材に答えなかった。東京招致委員会は「疑惑について知り得る立場ではなく、提案内容の良さから選ばれたのだと確信している」と回答している。パパ・マサタ・ディアク氏はフランス当局が調査中でありコメントできないとしている。IOCは次の大会を控えており、フランス司法当局やWADAと協力する姿勢を見せている。IOCはこの件を適切に調査するが、調査中であり、現段階ではこれ以上のコメントは差し控えるとしている。

後の記事でガーディアンは日本側が支出を認めたが、適正なコンサルタントフィーだったと釈明したと伝えた。パパ・マサダ・ディアク氏には複数の容疑(ただし本人は否定している)がかけられているのだとも伝えた。

朝日新聞の記事

朝日新聞の記事はこちら。フランス当局が、日本の銀行から(主語不明)約2億2300万円がラミン・ディアク氏に支払われたことを伝えている。ガーディアンの報道から金額がアップしている。今朝の報道の金額は2億2000万円なので、金額が変わったものと思われる。朝日新聞は「東京オリンピックの選定活動に不正があったという疑惑が持たれている」ことと「疑惑が表沙汰になったのは1月のWADAの報告書である」ことが伝えている。しかし、スポーツ業界全体の汚職体質については触れられておらず、従って電通についての言及もない。
後に日本側が支出は正当なコンサルタント料だったという日本側の言い分を伝え、シンガポール当局とフランス側が捜査協力をしているとも伝えている。

AFPの記事

AFPの記事では日本側の対応が書かれている。菅官房長官は「調査の予定はない」としており、日本側の組織委員会の広報の名前(小野日子氏)が記載されている。ガーディアンの記事にも短く書かれているのだが、スポーツイベントの汚職だけではなく「国際的な資金洗浄」に言及が及んでいる。現在問題になっている「パナマ文書」と同じような側面があることになる。

NHKの報道

NHKの報道はこちら。日本の招致委員会(bit teamのことと思われる)と組織委員会は別だとする組織委員会側のコメントを伝えている。振込総額は朝日新聞と同程度の2億2000万円だ。

テレビ朝日の報道

テレビ朝日は後日、パパ・マサタ・ディアク氏へ金が渡ったことが発覚したきっかけは、パリで高級時計を買ったことだったと伝えた。同じ時計は東京招致に賛成したIOCメンバーに渡ったということだ。さすがに金の流れを書かざるを得なかったようで「代理店など」と書いてあるが、これは電通のことだろう。

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