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どさくさに紛れて4660万円をゲット 松野博一前官房長官を「守る」政治とカネのルール

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しんぶん赤旗の調査報道で松野官房長官が官房機密費を4460万円得ていたことがわかった。これ自体に違法性はない。また幹事長に支払われる政策活動人同様に官房機密費も慣例として用途は説明しなくていいことになっている。

この時期、松野官房長官は地元の千葉3区で「どこにいるかわからない」と言われており政治活動を行った形跡はない。不信任決議が否決された時に不敵な笑みを浮かべていて心理的にも一種異様な状態にあった。当時は訴追される可能性があり「裁判や当座の生活資金」について心配していた可能性もある。

林官房長官は松野氏には当時官房機密費を扱う権限がありまた適切に使用できる状態にあったと「認識している」と説明したが、その合理的根拠は示さなかった。

松野前官房長官は政治のルールには守られた。だが実際には孤立無縁であり最後に頼れるものはお金しかないと考えたのかもしれない。つまりお金と権力以外に武装手段がなかったということだ。

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茂木幹事長に領収書の使い回し疑惑が出た。これについて記事をまとめていたところ、松野前官房長官が辞任直前に4660万円を得ていたというニュースが出てきた。次から次へと疑惑が出てくるためもう追いつかないというのが正直なところである。ただこれをどう考えていいのかがわからない。おそらくこの問題に食いついているのは50代以降の男性だけなのではないかと思う。政治は清潔であるべきだという倫理的な了解がなくなりつつあり現役世代はさほど違和感を感じないかもしれない。

今回問題になっているのは政府の官房機密費だ。「用途は公開しなくてもいい」という慣例のため官房長官が好きに使うことができるということになっている。つまりルール上は「シロ」である。

マスコミの仕事ぶりも不誠実なものだった。実は官房機密費は情報公開請求をしなければ支出がわからない仕組みになっている。今回この情報公開請求をやったのは赤旗だけだった。他のメディアは記者クラブから情報を取ることができるために情報公開請求をやらない。そのためある程度は政府の広報的役割を果たすことが増えている。時々「あなたの社にだけ情報を教えますよ」と言われることがありそれがとくダネ扱いになる。とくダネを掴んだ記者の評価は上がる。

赤旗これを松野氏がどさくさに紛れて集めた闇金(やみがね)であると指摘している。不法所得あたり脱税の疑いがあると言いたいのだろう。確かにこの時期の松野氏は地元から姿をくらませていた。とってもまともな「政治活動」などできる心理状態ではなかっただろう。

松野氏の立場に立ってみよう。

松野氏は刑事訴追される可能性があった。キックバックの金額は1051万円だったそうだが、当時は訴追される基準がよくわかっていなかったためだ。全ては検察の胸先三寸であり起訴されれば自民党を離党しなければならない。

罪を認めれば「牢屋入り」は免れるが3年間は選挙にも出られなくなる。逆に裁判闘争となれば自分で生活を維持しなおかつ裁判費用も確保しなければならない。議員の中には企業の経営に携わっている人もいるが、松野氏にはそのような後ろ盾はない。自身のウェブサイトにも後ろ盾のない陣笠議員であるという自己認識が語られており「地雷を踏んだらサヨナラ」という記述もあるという。

おそらく松野氏の心理状態は正常なものではなかっただろう。

あくまでも表向きは笑顔を絶やさなかったが手が震えていたという証言がある。不信任決議が否決された時には不敵な笑みを浮かべていたともされている。不適切な感情表現だが当時の松野さんに適切な表情コントロールができたかは極めて怪しい。合理的判断能力に欠ける状況で「身を守るためにはなにをすればいいのか」と考えた時にやはり自分を守る何かを持っていなければと考えるのが普通だと思うのだ。

し当時の岸田総理の心理状態もおそらくは正常なものではなかったはずだ。確かに自民党の危機ではあったが同時に安倍派を潰す絶好の機会だった。こうした「どさくさ」の状態で適切なお金や組織の管理がきちんとできていたかは極めて怪しい。

林官房長官によると、政府の公式の説明は次のようになっている。

  • 林官房長官に引き継がれるまでの間に4660万円が使用されたのは事実。
  • 内閣官房報償費は使途を明らかにすることができない。これは国の機密保持のためである。
  • 官房長官は報償費の責任者なので適切に執行されたものと認識している。
  • 支出規模はいつも通りであり特に怪しい点はない。

刑事訴追の可能性があり一切の説明も露出も避けていた松野官房長官だが、政府の公式見解は「いつも通りで正常な判断ができたと認識している」ということになる。ただし根拠は林官房長官の認識だけだ。

しんぶん赤旗は「個人のやみがね」であるとしている。つまり収入ということになり脱税につながる重大問題だ。だがこれを認めてしまうと「官房機密費で以前も収入になっていたものがあったのではないか」という話になりかねない。このため、林官房長官は一貫して「個人への支出はない」と言い続けている。

疑惑は疑惑のままに残り、自民党が内部で大きな表紙の刷新を行うか政権交代を行うまで「お金にだらしない内閣」という評判が払拭されることはないだろう。さらに1年先のことを考えることができなくなった「崖っぷち内閣」が国民に説明責任を果たさないままに誰にどんな約束をするのか分かったものではないという恐怖心もある。特に外国に対して何か安易な約束をしてしまうと「国際公約」ということになり撤回するのが難しくなるだろう。

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