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彼の記憶力は著しく限られている バイデン大統領が高齢による記憶力の低下を理由に訴追を免れる

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「記憶にございません」は日本の政治家が嘘をつくときによく用いられるフレーズだ。だがアメリカのバイデン大統領にも記憶力の低下問題が浮上した。大統領の場合は嘘をついているわけではなく老化現象と見られている。

バイデン大統領が公文書を自宅に持ち込んだ問題で訴追されないことになった。ゴーストライターに自伝を書かせるために書類を持ち出したものと見られておりゴーストライターに「機密書類である」と語っている。しかし、法廷に出ても「法廷が維持できないだろう」と指摘された。高齢で記憶が曖昧だとみなされたのだ。

トランプ前大統領は公文書を隠蔽しようとしたがバイデン大統領は捜査に協力している。その意味ではバイデン大統領の悪質性は劣ると言って良い。しかし、今回の問題の一番のインパクトはバイデン氏の高齢化に懸念を抱いている人は案外多かったということが世間に広く共有されてしまった点にあると言える。

バイデン氏は記者会見の中で「あなたの高齢を心配している人はたくさんいる」と指摘され「それはあなたの決めつけだろう!」と反論した。だが、その会見の中でエジプトの大統領を「メキシコの」と言い間違えてしまった。 多くの外交的雑事を抱えており一つひとつを区別できなくなっている可能性も高い。

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バイデン大統領が公文書問題で訴追を免れたようだというニュースはあっという間に広がった。しかし、主なメディアは「記憶力」に焦点を当てている。訴追を免れたことよりもバイデン大統領の記憶力や判断力に問題があ流のではないかと疑念を抱いている人が多いことがわかる。

ロバート・ハー(Robert Hur)特別検察官はバイデン氏が副大統領を退任した後に機密文書を持ち帰った件について調べていた。ハー特別検察官がバイデン氏を聴取したところ文書を持ち出しがあったことは確かだったようだ。さらにゴーストライターに「これは機密文書である」可能性があるとも指示しており文書の持ち出しが必ずしも「良いことではない」ことも認識していたものとみられる。

トランプ前大統領も文書の持ち出しが問題視されている。国家機密が含まれているところから民主党政権下では攻撃の対象になっていた。だが実際にはこの程度の文書の持ち出しは珍しくなかった可能性があるということが言えるだろう。

ハー特別検察官はバイデン氏の記憶がかなり曖昧になっていると感じた。これは高齢者にはよくあることであり特に驚くべき問題はないとしている。一方バイデン政権側は大統領は忙しかったと言っている。インタビューが行われたのはイスラエルがハマスに攻撃された10月7日の翌日と翌々日である。確かに忙しかっただろうなとは感じる。大統領がハー特別検察官のインタビューをぞんざいに扱ってしまった可能性もあるだろう。

キーになる用語はWillfulだ。「意図的に」「わかっていて」という意味がある。ハー氏の説明は「バイデン氏はわかっていてに文書を持ち出した」とした上で「悪意はなかった」というものだ。だが高齢による曖昧な記憶のためここから悪意を証明して公判を維持するのは不可能なのだろうと結論づけられている。

NBCによる原文は次のとおり。

“Our investigation uncovered evidence that President Biden willfully retained and disclosed classified materials after his vice presidency when he was a private citizen,” the report said, but added that the evidence “does not establish Mr. Biden’s guilt beyond a reasonable doubt.”

トランプ氏も同じ機密文書の問題を抱えている。バイデン氏が高齢を理由にして訴追されないにもかかわらずトランプ氏が訴追されるとしたらそれは「なんらかの陰謀だ」という理屈を正当化することになるだろう。ABCはバイデン氏が過失を認めて国立公文書館と協力したのに比べ、トランプ氏は意図的に隠蔽したことから悪質性が違うのではないかと指摘するが、トランプ・ワールドの中に住んでいる人たちにとってはそれは些細な問題に過ぎない。さらに付け加えるならばトランプ氏の勢いを削ごうとして下院民主党が訴追を武器化していたのも確かなことだ。

問題はバイデン氏が単なる高齢者ではないという点にある。彼は現職大統領であって二期目を目指している。AP通信の世論調査によるとアメリカ成人の77%はバイデン氏の年齢を不安視している。共和党の支持者たちだけでなく民主党の支持者たちもこれに同意しており「超党派で意見が合致する稀有な事例」であるとAP通信は皮肉混じりに書いている。

バイデン大統領の言い間違いはかなり有名だ。ドイツやフランスの首脳の名前を立て続けに言い間違えたことがニュースになっている。メルケル首相をコール首相と言い間違えたりマクロン大統領とミッテラン大統領を言い間違えている。ヘルムート・コール氏は1982年から1998年にわたって首相を務めており、フランソワ・ミッテラン大統領は1981年から1995年までの大統領だった。彼はまだ20世紀を生きている可能性もあるということになる。

この時代は昭和末期から平成初期にあたる。東西冷戦構造が崩れかけていて西側の勝利が確実になった時代だった。トランプ氏の経済認識も「1980年代の貿易摩擦時代の認識だ」と言われることがある。アメリカ合衆国の大統領選挙が高齢化している理由にはさまざまな説明がなされるが日本で言うところの昭和ノスタルジーなのかもしれない。政治経済認識にしても経済認識にしても極めて単純で誰もが「アメリカらしさとはなにか」が簡単に説明できた時代だ。

おそらくバイデン氏の世界情勢に対する認識は現代の状況と合致していない。4月に岸田総理が国賓待遇で渡米する。おそらく何らかの「お土産」を携えて渡米し何らかの約束をして帰ってくることになるだろうがこれはバイデン大統領の時代認識に合致したものとなるだろう。つまり。現在の国際情勢とはそぐわない可能性がある。お金の扱いが極めて杜撰なこともあり、岸田総理の約束には警戒が必要だ。

バイデン大統領は自身に降りかかる高齢不安を払拭しようと記者会見を開いた。そこである記者が「高齢を不安視している人が多い」と指摘すると、いろをなして「それはあなたの決めつけだ!」と反論した。だが記者会見の席で「メキシコのシシ大統領が」とうっかり発言してしまう。シシ大統領はエジプトの大統領である。アメリカは「ガザ・エジプト国境問題」と「アメリカ・メキシコ国境問題」という2つの国境問題を抱えている。これらは議会では一体のものとして取り扱われているため区別がつかなくなってしまったのかもしれない。アメリカ合衆国は世界各地に多くのトラブルを抱えている。バイデン大統領自身が電話で対応しなければならないケースもあり「誰に何を話しているのか」がわからなくなってもそれほど不思議ではないのだが、大統領のちょっとした判断ミスが世界大戦に繋がりかねない問題を引き起こすのもまた事実ではある。

「ご存知のように、メキシコのシシ大統領は当初、人道物資を(ガザ地区に)搬入するためのゲートを開けたがらなかった。私は彼と話をした。私が彼を説得した」

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