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なぜ岸田派の盛山文部科学大臣は旧統一教会の支援を断れなかったのか?

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朝日新聞の報道をきっかけに盛山文部科学大臣が旧統一教会から支援を受けていたことが分かった。盛山氏は「そのような認識はしていない」と嫌疑を否定している。盛山文部科学大臣は宗教法人も管轄しており当事者であるといえる。本来ならばすぐさま交代させるべきなのだろうが予算編成スケジュールは極めてタイトであり岸田総理には更迭の余裕はないかもしれない。

そもそもこの人はどんな人なのだろうかと思った。直近の選挙では兵庫一区で比例復活している。立憲民主党の井坂氏が躍進しており選挙で苦戦していたのだろう。灘高・東大法学部・運輸省というエリートコースを歩んだが世襲政治家ではない。奥さんと田村憲久元厚生労働大臣はいとこだそうだ。義父の田村元氏は元衆議院議長である。つまり「有力政治家の婿」なのである。選挙にあまり強くない点を、旧統一教会に付け込まれた。

どんな支援者であっても断りきれなかったのかもしれない。

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きっかけは朝日新聞の記事だった。推薦状まで出して選挙も支援してやったのにという旧統一教会信者の憤りが感じられる。朝日新聞によると推薦状の写真も抑えられているようだ。

岸田総理は旧統一教会も問題が公になった時点以降に新しく出た問題でなければ更迭の理由にはならないと指摘しているがこれは苦しい言い訳である。朝日新聞はアンケートに「関わりがない」と回答しているとして虚偽申告を問題視している。正直に申告すると大臣にはなれないが嘘をついたら大臣になれることになる。子供に「嘘をついてはいけない」と教える文部科学省の偉い人がそんなことでいいのだろうか?という道徳的な批判は避けられそうにない。

ではなぜこんなことになったのか。問題点はいくつかある。

第一は「大臣になれるかどうか」が全て自己申告に基づいているという現在の自民党の組織統治の問題だ。これは政治とカネの問題にも共通する。さまざまな状況を組織で全て管理することなどできるはずもないのだからある程度議員一人ひとりが気を引き締める必要があるのだがこれが徹底されていない。何らかのスキャンダルが掘り返されるたびにいちいち大問題になる。

次に「そもそも統一教会の何が悪いのか」がよくわからないという総括の甘さだ。統一教会が政治に近づく目的は二つある。一つは搾取的ともいわれた教団の活動の安定だ。もう一つは「極めて前近代的な家族感」の押し付けである。政治家の中には進んで統一教会の押し進める政策を実現しようとしていた人たちがいた。女性を家に閉じ込めて過度に「家族」を強調する内容だった。ところが、どの程度統一教会の考えが自民党の政策に反映しているのかをきちんと総括していないために「統一教会と関わることは全て悪なのだ」という漠然とした印象がついた。

最後の問題は盛山氏の選挙の弱さである。兵庫1区の選挙結果を見てみた。立憲民主党の井坂信彦氏が一位当選しており盛山氏は比例復活している。エリート出身で妻は政治的名家の出身ではあるが、あるいは都市部である神戸市の有権者の気持ちを掴みかねているという選挙の弱さがあったのかもしれない。こんな時に「推薦します」と言われて断れる政治家はそれほど多くないだろう。さらに有権者の電話にも積極的に参加してくれている。統一教会はこうして「恩」を売っておいて後からそれを回収しにくる。弱さに付け込まれてしまうのである。

このようないくつもの事情が重なり「裁判を抱える所管官庁のトップが過去に係争相手から支援を受けていた」という最悪の状況が生まれた。おそらく辞任は不可避だと思うのだが、すでに多くの難題を抱える岸田政権がこの問題を冷静に対応できるとも思えない。岸田政権そのものは予算編成を乗り切ることはできるのだろうが、盛山氏の処遇という新しい難題をまた一つ抱えることとなった。

せめて予算編成は乗り切ってほしいと思うのだが本当に大丈夫なのだろうかという一抹の不安も覚える。

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