ICIJがパナマ文書を公開した。データは自由にダウンロードすることができる他、名前を検索することもできる。それではどのようなデータが公開されたのだろうか。
大きく分けて、点と線の2つのデータがある。線データは[A関係性B]というように記述されている。このAとBが何を意味しているのかを見るために点のデータに当たるのだ。
この線のデータをグラフと呼び、点のデータをアトリビュートと呼んでいる。データ量が膨大なので(とはいえ200MBちょっとなのだが……)Excelでは扱えない。試しにパソコンのMySQLに読み込んでみたのだが「データが大きすぎる」ということで読み込めなかった。ただし、データはCSVなので特に難しい技術的な知識は必要ないはずだ。
ICIJのデータにはトランザクションデータは含まれないので、誰がどの程度節税(または租税回避)していたのかは分からない。ただし、手口は分かる。多分グラフデータには「典型的な手口」のパターンがあるはずだ。
ICIJは個人名での検索も準備している。試しに三木谷浩氏の名前を検索してみたところヒットした。巷で言われているように伊藤忠やソフトバンクもヒットする。丸紅も日商岩井もあった。商社はたいていやってるんだろうなあという印象だ。通信系でみるとNTT DoCoMoもある。
これをソーシャルメディアで拡散することができる。もちろんパナマ文書に掲載されていることが犯罪を意味するわけではないだろうが、簡単に拡散できるので、広がるのも早い。ということで、データを晒して「こいつが悪人だ」という言説が飛び交うことになるだろう。
中には積極的に節税していた人たちもいるだろうし、中国の巻き添えを食った会社も多そうだ。経済が共産党のさじ加減でどうにでもなる国家なので、こうした「節税」が横行しているのではないかと思われる。特に商社は中国との関係を保つ必要があるので「巻き込まれた」会社もあるだろうし、やり方を学習した可能性もある。
そのうち週刊誌が騒ぎだすだろうが、海外に取材力があるわけではないので、情緒的な報道に転じるのではないかと思われる。NHKは「中には知らずに巻き込まれた人もいるようだ」と報道しているのだが、NHKにこういわれると却って「大本営なのでは」などと思ってしまう。民放はパナマ文書については積極報道しないのではないだろうか。商社系と通信系といえば大口のお得意先だ。試しに三井や住友で検索してみたら複数社が出てきた。財閥系にはメーカーから金融機関まで幅広く含まれるわけで、スポンサーがいなくなってしまう可能性が高い。
すると情報の空白が生まれるわけで、これを憶測が埋めるだろう。安倍政権はパナマ文書を調査しないと言っている。触らなければそのうち沈静化するという見込みがあるのだろうと思われる。だが、情報は一人歩きする。影響を少なくするためには、事前に調査して政府なりの解釈を作っておく必要があるのではないかと思う。危機管理対策としては「触らない」というのは最悪の対応策だ。その間に憶測も含めた風評が飛び交うからである。
ICIJの最大の功績はテラバイトクラスの情報を精査して誰もで使うことができるデータに整形したことだろう。かなり大変な作業だったようだ。あとは各地の(フリーランスを含む)ジャーナリストに委託すればよいわけだ。今までになかった全く新しいジャーナリズムの形と言えるのではないだろうか。