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「外務省公電が中国に盗まれている」とアメリカに指摘されるが岸田政権は国民に説明する気なし

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読売新聞が「外務省の公電が中国に盗まれたかもしれない」と指摘している。サイバー対策強化のための関係者のアドバルーンなのではないかと感じた。しかし林芳正官房長官は「秘密情報漏洩は確認されていない」として国民への説明を拒否した。「あれ、どちらの『政府』が正しいのだろう」と感じる。

過去に防衛省でも情報流出騒ぎがあったがこの時は松野官房長官が「情報漏洩は確認されていない」と説明を拒否している。政権が説明しない以上は日本政府の対応がアメリカの期待に応えるものになっているのか国民からは検証のしようがない。状況は防衛省の情報流出騒ぎの時から全く進展していないようだ。

政治とカネの問題をめぐっても岸田内閣の「説明をしたくない」という姿勢は一貫している。以前は政治活動の自由が理由だったが今度はプライバシーの問題まで持ち出して説明を拒否している。

政府が説明を拒否しても内部で問題を処理してくれるのであればそれはそれで構わないのかもしれない。だが、実際には彼らは問題に対処ができていない。岸田政権中枢はガバナンス(組織統治)に問題を抱えたまま一人でボールを持ってどこかに進み続けている。おそらく今後突発的な何かが起きても彼らは処理をできないだろう。日本の国益にとっては極めて危険な状態だ。

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外務省の公電が中国に盗まれているらしい。読売新聞がそう指摘した。外務省がどんなやりとりをしているのかは国家安全保障の観点から最もセンシティブな情報であり関係者の間に衝撃が走っている。中国が国民に先んじて情報を入手してしまうと地域における我が国の戦略優位性が失われるが国民がそのことに気がつくことができない。仮に岸田政権が中国に対峙できていないのであればそれができる体制に変わる必要がある。

読売新聞はこう書いている。通常のインターネットを介さないと書いているがこれは読売新聞が技術に疎いために生じた誤解だろう。VPNは「『仮想』プライベートネットワーク」の略なので物理的にはインターネット回線を使う。論理層と物理層の区別がついていないのである。IPアドレスはインターネット上の住所地である。つまりインターネットの特定のアドレスを二点「仮想」プライベート通信でつないでいるだけなのである。

公電には、日本の外交官が外国政府などから得た極秘の情報も含まれる。外部の傍受を防ぐため、通常のインターネットを介さない閉域ネットワーク「国際IPVPN」で送受信し、特殊な暗号を用いる。

情報源は複数の政府関係者となっており、この後に「サイバーセキュリティに関して見直しをする」という報道が続いている。情報流出があったとされるのは安倍政権時代なので「なぜ今になって情報が漏れたのだろう」と考えるとおそらくは予算獲得のための情報流出であったものと推定できる。

政府が予算獲得を正当化するために情報を流したのだろうかとも思ったのだが林芳正官房長官はこの報道について「情報流出の事実は確認できていない」として否定した。

安倍政権下であればマスコミもSNSのX(当時はTwitterだが)もおそらくは「政権の嘘」を躍起になって暴こうとしていただろう。だが最近ではもう誰もこの程度の説明の破綻を気にしなくなった。

どうせ政権は本当のことを言わないという認識が出来上がっているからだ。

この記事を最初に見たときに「何か聞いたことがある話だな」と思った。ワシントンポスト経由で「中国軍が防衛省のコンピュータシステムに侵入した」というニュースがあり、複数のメディアがそれを伝えている。この時も松野官房長官が「情報漏洩は確認されていない」と言い張っていた。説明の手法は林芳正官房長官と同じで「アメリカとはいろいろなやりとりをしているが問題の性質上詳細を説明することは控える」となっていた。松野さんといえば、政治とカネの問題で真っ先に安倍派から逃げ出して説明を拒否した人だ。

両方の官房長官の言い分を信じると「問題は認識されていない」のだから「サイバーセキュリティ対策は必要がない」事になる。一方で政府の複数の関係者の指摘を信じると「何か重要な情報が中国に盗まれている」事になるのだが、あるいは官邸は何が盗まれたのかを把握していない可能性もある。

だが国民が「この程度の説明の破綻」で怒ることはないだろう。政権中枢は説明をしないだけでなく「もはや問題を知りたくない」と思っている可能性もある。

政治とカネの問題で「裏金アンケート」が始まった。だが自民党はA4の紙切れで済ませようとしている。用途については聞かない方針だ。仮に違法行為を申告して来られても困るということなのかもしれない。自由記述欄もない。「聞かれたこと以外は何もいうな」ということだ。

野党は裏金だけでなく政策活動費も問題にしている。特に幹事長に手渡されている。幹事長が使い切ることなどできないのだからおそらく誰かに渡されているのだろう。渡された方にとってみれば申告の必要のないカネである。政治資金以外に使っているのであれば脱税になる。

二階氏に配られた多額の政策活動費について岸田総理は「使い道など聞く必要はない」と答弁した。理由は「聞くまでもなく適切に使用されている」と認識しているからなのだそうだ。

政策活動費や「未記載金・非記載金(裏金)」ついて調べるとおそらく違法なものが見つかってしまう。だから「絶対に調査しない」ということなのだろう。前回は「表現の自由・政治活動の自由があるから全てを明らかにするしかない」と説明したが今度は「調べるとプライバシー侵害になる」と言っている。

国民は岸田総理の言い分を全く信用しておらず、政党支持率も政権支持率も低い状態が続いている。説明も破綻し多くの人が「どうせ今の政権はまともに説明するつもりもないのだろうしその能力もないだろう」と疑っている。しかし、政権支持率が落ちるところまで落ちても下野につながるような危険な状態にはなっていない。説明が破綻したまましばらく政権自体は続いてゆくのかもしれない。

読売新聞の記事は最後に次のように書いている。

政府はサイバー防衛の抜本的強化に向け、平時から情報システムを監視して予兆を察知し、重大なサイバー攻撃を未然に防ぐ「能動的サイバー防御」の導入を目指している。ただ、通常国会での関連法案の提出は見送られる方向だ。

国益を守るために大胆な方針転換が必要だが岸田政権には余力がないとの指摘だろう。もはや岸田政権には浮上した新しいアジェンダを処理する力が残っていない。今岸田総理の言葉に耳を傾ける有権者はそれほど多くないはずだ。

さらに「調べると問題を認識したことになってしまうから官邸・党本部には報告を入れるな」という姿勢もきわめて危険だ。「問題を相談するな」と言っていることになる。政府や党のさまざまな部署で人々が現場で勝手な処理を始めてしまうと政府統治や政党統治は本当にボロボロになってしまうだろう。

なお中国外務省はこの件について「身に覚えがない」と反発しているそうである。もちろん盗んだ人たちも「私が盗みました」とは言わないだろうなと感じる。

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