ざっくり解説 時々深掘り

セサミストリートのエルモが期せずして可視化したSNSの「おおきいおともだちたち」の不安

Xで投稿をシェア

BBCに「セサミストリートのエルモ、「みんなが大好き」 SNS上であふれる不安の声に反応」と言う記事が出ている。エルモが「ねえみんなどうしてる?」と問いかけたところ「全然大丈夫じゃない」と声が次々と寄せられたそうだ。最後にはバイデン大統領も議論に参加することになった。

政治的に分断されているとされるアメリカだが「そもそもみんな何かに疲れている」ことがわかる。近年では全てはSNSのせいだとしてプラットフォーマーを吊し上げる動きもあるが他人を非難してばかりいても問題は解決しない。思いやりの心を持った一人ひとりの行動がなければ社会は砂漠化してゆく一方だろう。

Follow on LinkedIn

コンテンツのリクエストや誤字脱字の報告はこちらまで

|サイトトップ| |国内政治| |国際| |経済|






アメリカの上院で公聴会が開かれた。SNSのせいで子供たちが自傷行為に走ったり自殺したりする事例が増えている。そのため議会でSNSプラットフォーマーたちを吊し上げることにした。参加者は次の通りだ。日本ではザッカーバーグ氏が謝罪したことが大きく伝えられている。

  • Facebookのザッカーバーグ氏
  • TikTokの周受資氏
  • X(旧ツイッター)のリンダ・ヤッカリーノ氏
  • スナップのエヴァン・シュピーゲル氏
  • ディスコードのジェイソン・シトロン氏

確かにSNSプラットフォームはモデレーションをAI化することにより効率化を図っている、こうした対応は必ずしも適切なものとは言えない。

だが人々の期待は過剰なものだと言えるのではないか。アメリカのSNSには「政治的にも公平であるべき」だと言う社会的な期待がある。ある種「神のような公正さ」を求められている。だが例えばTikTokの周氏に「お前は中国共産党に入っていたことがあるか」と真顔で聞く議員もおり(周氏はシンガポール人だそうだ)他人に対する関心は必ずしも高くない。

そもそも自傷行為や自殺の原因はすべてSNSにあるのか。子供たちに居場所がないことも自傷行為や自殺の原因になっているのではないかと感じる。

そんな中、セサミストリートのエルモが短いメッセージを発信した。メッセージは「Elmo is just checking in! How is everybody doing?」と極めて短く他愛もないものだった。おともだちに対するちょっとした挨拶のつもりだったのだろう。だがここに「自分は疲れている」とか「人生に絶望している」と言うようなリプライが盛んに寄せられた。反応しているのは「大きなおともだちたち」だった。実は子供だけでなく大人たちもSNSや人生に疲れていることがわかる。

反響に驚いたエルモは次のように返信した。要約すると「近況を確認することは大切だとエルモは学んだ」と言うことになる。普段から思いやりを持って「ねえみんなどうしている?」と確認し合うのが大切だというのだ。

Wow! Elmo is glad he asked! Elmo learned that it is important to ask a friend how they are doing. Elmo will check in again soon, friends! Elmo loves you.

最後はこれにバイデン大統領まで乗っかりエルモに賛同するまでになった。ついにエルモはテレビ局に呼ばれ「反響に驚いた」と率直な気持ちを伝えた。

どうと言うことはないニュースだがこの一件をきっかけにいくつものことがわかる。

SNSによって現代の人々は他者と繋がることができる機会を多く持てるようになった。と同時にストレスも抱え込むことになりそれにうまく対処することができていない。中には全ての悪い変化はSNSのせいなのだからそれさえ無くしてしまえば全てが元通りになるのではないかと考える人もいる。アメリカでは実際にSNSプラットフォーマーに対する吊し上げも起きているようだ。SNSによって引き起こされたすべての問題はSNSが解決すべきだということなのだろう。

だがSNSプラットフォーマーを吊し上げてばかりいても問題は何も解決しない。結果的にエルモの「ねえみんな元気?」と言う何気ない一言が「おおきいおともだちたち」に大切なことを伝えることになった。普段から声を掛け合って「自分のことを気にかけている」と伝え合うことが大切だということである。

ただ大人たちが「思いやりを持ちましょう」と言っても大人たちは納得しない。エルモは「みんな他人を思いやるべきだ」と他人に行動を押し付けておらず「自分が学んだ」と言っている。

コンテンツのリクエストや誤字脱字の報告はこちらまで