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岸田総理はなぜ政策活動費の説明を拒否するのか 次の総理大臣を国民に選ばせたくない人たち

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衆議院で代表質問が行われた。野党から政策活動費の用途の説明を求められたが、岸田総理はこれを拒否した。岸田総理によれば、用途は党勢拡大と政策立案であり「適切に使われている」という。だがこれはおかしな理屈だ。

自民党と野党が均衡していれば党勢拡大は起こり得る。しかし現在は自民党一強のため党勢拡大をしようとすると無党派を自民党支持にするしかない。これもできないとなると他派閥から人と利権を奪ってくるしかない状況だ。

政策コンペも行われていないので結果的にはお金で自分に対する支持をまとめておきたいのだということがわかる。結果的に有権者(制度によって国民なのか党員なのかが分かれるが)が代表を選択する権利が奪われている。

岸田総理は国民に総理大臣を選んでほしくないのだろう。一方で国民も「自民党の中で応援したい人はいるけど、岸田さんや茂木さんや麻生さんではないんだよなあ」と感じているのではないかと思う。

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岸田総理は党内から派閥を焼き払い全ての権限を党に集めようとした。ところがこの作戦は麻生副総裁の抵抗に遭い頓挫してしまう。茂木敏充氏も麻生太郎氏のバックアップを期待して派閥の存続を決めたのだが苦境に立たされている。一時「休会」届を出していた人も含めて、現在8名が離脱した。地元を中心に派閥は悪だという認識が広まっているものと思われる。有権者の視線は未だに厳しい。

いずれにせよ、派閥から集金力を奪えば相対的に政策活動費を分配できる政党幹部が有利になる。こうした政党活動資金は自分の求心力を高めるための工作費用として使えるからだ。岸田総理の基本戦略であり政策活動費は手放したくないところだろう。

岸田総理は他派閥を潰しできれば無党派も自分の元に結集させたい。そのために2つの方法を考案した。

まず「派閥という悪」から抜けた茂木派の人たち(小渕優子選対委員長、古川禎久元法相、青木一彦参院議員)に有権者にアピールしそうな財政健全化を担わせる。党総裁直属の部隊であり茂木幹事長のラインからは切り離されている。茂木氏の元を離れると活躍のチャンスができますよというかなりあからさまな意図を感じる。またこのことから「党幹部」が一枚岩でないこともわかる。安倍・二階とは関係が変わっており、今の二人はライバルになっている。

もう一つがネット保守の支持固めだ。岸田総理は改めて憲法改正に意欲を見せた。「保守層にアピールする狙い」があるとみられている。

冷静に考えると「ドリル優子」といううっすらとした悪印象がある人に「財政健全化などできるのか?」と指摘する人は多そうだ。また憲法改正も安倍総理の強い対外姿勢とセットになっていたところにポイントがあった。岸田総理はむしろ防衛増税と改憲がセットになっていてネット保守には魅力的な選択肢とはならないだろう。おそらくネット保守は自分達の文脈で改憲運動を盛り上げたい。

派閥に固執する麻生副総裁に対する世論の風当たりも強まっている。背景にはこれまで男性のマウンティングを笑って受け流すしかなかった女性たちの反発があるものと見られる。「もう笑ってやり過ごすのは終わりにすべきだ」として上川陽子外務大臣まで批判の対象にある有様だ。

つまり今のままでは彼らは無党派層のハートを掴むことはできないだろう。無党派層はなんとなく「ああこれじゃないんだよな」と感じているのではないだろうか。だが、現在の情勢ではやはり岸田、麻生、茂木の三人のバランスで次が決まってしまう可能性が高い。

では、本当に選択肢はないのだろうか。実は自民党と言ってもさまざまな人たちがいる。もっと女性が活躍すべきだと考えて行動する上川陽子外務大臣だったり、IT化を推進して政府や社会生活の向上を目指すべきだとする河野太郎大臣や平将明氏AIPT座長などがその一例である。おそらく有権者は自民党の中にどのような可能性があるのかを知りたがっているはずであり、できればこのなかから次世代のリーダーを直接選びたいと考えているはずだ。憲法改正にしてもそれがどのように日本の国際的な地位を上げてくれるかという点に興味があるという人が多いのではないだろうか。

仮に政策コンペが行われれば有権者はなんらかの形で次世代のリーダーを選ぶことができるが、現在の仕組みは「表に出ないお金」と「長老の支持」を集めた人たちがリーダーになれるという歪なものであり、国民はそれを黙って眺めているしかない。

岸田総理は形式上は自派閥をなくすことで総裁に権限を集約させようとした。一方の茂木・麻生ラインは派閥を維持して次世代の総裁を目指している。茂木さんは自分がリーダーになりたいと考えているかもしれないが、麻生さんは「自分が指名した人がリーダーになれれば誰でもいい」と考えているようだ。上川陽子氏を新しいスターだと表現したことからその野心がうかがえる。

いずれにせよ彼らは有権者が直接リーダーを選ぶことなどあってはならないと考えているのではないかと思う。派閥を通じてリーダーの椅子を得たい人たちは、なぜか国民に響くような野心的な路線変更を着想できてない。こうした内向きさや自信のなさが「国民に使途を説明しなくて済む」お金への固執につながっているのではないかと思う。

政党単位では政策活動費がそれに当たるが、おそらくは各種予備費などもそのために積んでいるのだろう。次世代型のビジョンを示せない以上お金で繋ぎ止めておくしかないということになる。

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