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今までの政治改革議論は何だったのか? 岸田総理に新たに浮上した偽装パーティー問題

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予算編成を前に政治と金の問題を解決しておきたい岸田総理だが、自身の事務所に新しい「疑惑」が出てきた。元々は週刊ポストが発掘した話題だったが立憲民主党が取り上げ国会で質問が行われている。

この手法がまかり通ると禁止されているはずの個人からの寄付金を集め放題ということになってしまい「一体今までの話はなんだったのだ」ということになるというのが立件未種痘の主張だ。法律の精神から見れば脱法だが形式的な違反はなく罪に問うことは難しそうだ。つまり今行われている政治改革の議論も結局は同じ運命を辿ることになるということがわかる。これまでの議論や中間報告は一体何だったのだ?という気がする。

もちろん、今回の疑惑が即「岸田逮捕」につながるわけではないので「意味のない報道だ」と考える人もいるだろう。

だが調べれば調べるほどこの人の管理能力は大丈夫なのだろうか?という気がする。地元組織の管理がボロボロだ。岸田総理が政治改革や予算編成の責任者には相応しくないということが容易に理解できる。では他に適任者がいるのかや適任政党があるのかという問題ある。さらに予算審議は始まってしまっているので今総理大臣が変わるべきだとも思わない。しかし、それでも岸田さんは本来は総理大臣として予算編成や増税議論に携わるべき人ではないのだろうと感じた。

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東京新聞に書かれている情報をまとめると次のようになる。

2022年6月に「岸田文雄先生内閣総理大臣就任を祝う会」というパーティーが開かれた。パーティーとは名ばかりで飲食の提供はなかった。参加者は1100名で会費は1万円だった。会を開いたのは「ある任意団体」だがそこから自民党広島県第一選挙支部320万円が寄付された。この任意団体と岸田文雄講演会は代表人物が同一人物である。また実質的には岸田文雄事務所からスタッフが出ていて実質的には彼らがパーティーを運営していた。政治団体でなければ政治資金収支報告書への記載は必要がないとされている。

東京新聞の記事は立憲民主党議員の質問から起こしたものだが、元々は週刊ポストが追っていたものだったようだ。ポストセブンは「政治資金パーティーを隠したかったのではないか」と指摘している。ちなみに収入が1000万円以上のパーティーは任意団体のものだったとしても特定パーティーにあたり、違反すれば5年以下の禁錮または100万円以下の罰金が適用される可能性があるそうだ。

週刊ポストのいうような「疑惑」かどうかは別にして少なくとも地元で問題を抱える岸田総理が「政治と金の問題」を仕切るのは適当ではないのではないかという印象を持つ。鍵を握る人物は「C氏」という岸田文雄氏の元秘書である。C氏は父親の代からの秘書だったそうだが、Cさんはすでに病死してしまった。

C氏がどのような意図でこのスキームを考えたのかはわからない。背景には複雑な政治資金規正法の歴史がある。少し面倒なのだが整理してみたい。毎日新聞東京新聞に経緯が書いている。今回の政治と金の問題をきっかけに様々な論評が出ている。

最初に問題になったのは企業から政治家に対する賄賂だった。例えば田中角栄が捕まったロッキード事件などは企業から政治家に対する賄賂だ。これを解決しようと「法人からお金が渡るより個人にお金が渡った方がいいのではないか」ということになった。そこで生み出されたのが政治パーティーという手法だ。パーティーという手法が始まったのは1975年なのだそうだ。

ところがリクルート事件で政治資金パーティーが悪用された。社員数より多い人数分のパーティー券をまとめて購入すると事実上の迂回路になってしまう。そこで92年に「100万円超(94年改正で20万円超)の購入者は名前を公表する」という新しい規則が作られた。ところがこれでも国民の疑念は払拭できなかった。そこで99年に「もう政治家個人には献金をしてはダメだ」という法律改正が行われたという。するとその迂回路としてますますパーティーが多用されるようになった。

党首レベルでは1994年に「企業からの政治献金を全て廃止する」やめる約束をしていると元総裁の河野洋平さんが指摘している。自民党の内部でも収拾がつかなくなっていたことがわかる。片方の当事者だった細川護煕さんも最終的には政治と金の問題で退陣している。

場当たり的なルール変更は時々報道されることがあるのだが、地元でどのような「工夫」が行われているのかについては実態がよくわからない。

国民からの不満が高まると場合たり的な改革が行われるのだがそのたびに地元の秘書たちが新しい手法を考案する。中には政治家が主導したものもあるのだろうし、岸田総理のように先代から引き継いだ秘書が独自に考案したものもあるのだろう。ところが秘書たちは政治の専門家ではない。さらに高齢化も進んでいて今の流れについてゆけていない。そのため岸田文雄氏の政治団体のお金の管理はボロボロになっていた。

たとえば今回の事例では、後援会・祝う会の代表の伊藤學人氏が「寄付なんかしてませんよ」と言っている。ご高齢で細かいことはよくわからないようだ。寄付をした認識もないのにお金は移動しているのだから盗まれたことになってしまう。あるいは誰かが伊藤さんの名前か印鑑を使ってお金を移動させているということになりかねない。

岸田事務所の方の説明は次のように説明しているのだが「聞いている」ばかりで実際にどうだったのかはよくわからないという回答だ。事務所の回答も極めてあやふやである。

  1. 祝う会は地元政財界の方々に開いてもらった
  2. 『祝う会』の開催経緯を知る事務所関係者からは、収入は1000万円未満だったと聞いている
  3. 『祝う会』の開催後、数か月してから支部へ寄附する旨の連絡があったと聞いている

さらに別の問題もある。岸田総理には自民党広島県第一選挙区支部の他に自民党広島雄翔会支部という名前の団体を持っている。企業・団体献金は政党支部でしか受けられないから自民党支部とは別の団体が必要だったのではないかとポストセブンは見ているようだ。ところがこの会の代表者とされるAさんは「政治団体の会計責任者になった覚えなどない」という。また2021年に広島県選挙管理委員会に提出した選挙運動の収支報告書の名前にもAさんの名前が使われているそうだ。

これはスキャンダルの予感と色めきたったポストセブンが再度直撃するとA氏の態度はガラリと変わっていた。事務所と連絡して「余計なことを話すと岸田さんに迷惑がかかる」ということがわかったのだろう。知らない間に名前だけが使われていたことがわかってしまうとこれも有印文書偽造になってしまう。

現在野党の一部はパーティーも課税すべきではないかと言っている。パーティーが規制の対象外になっているのは基本的にこれが儲からないことを前提としているからである。ところがこの『祝う会』の場合は少なくと粗利が3割だったいうことになる。あるいは経費はもっと安いかもしれない。となると誰かが岸田総理を使った「興業」を行って収入を懐に入れたと解釈できる。これは営利事業なので法人税の課税対象となり脱税の疑いが出てくるというのがポストセブンの主張だ。政府の見解は「政治資金パーティー」は営利目的ではないから課税対象から外すということになっているが、これは法律ではなく運用によって決められた解釈にすぎない。

中央が場当たり的な対策をとると地方がいい加減な対策を行う。当然辻褄が合わなくなるわけで説明ができなくなる。今回の件は岸田さんが総理大臣だからこそ表沙汰になったわけだが、おそらく「先代から引き継いだ秘書ら」が「センセイの知らないところ」で「法律的に問題が多い」スキームを勝手に考えて実行している可能性は高いのだろう。

ここから考えると次のようなことが言える。

  1. 岸田総理の地元でのお金の管理はかなりいい加減だった
  2. さらに岸田総理は実務を知らず先代からの秘書に任せきりだった。今の秘書たちも先代の秘書たちの言われるがままだ。
  3. 部下を管理できず実務も知らない岸田総理が抜本的な政治改革の案を立案できるはずはない
  4. そもそも自分の政治団体も管理できない人が予算の管理ができるはずはない

ここまでくるとそもそも実態調査自体も意味はないのかもしれない。調査をすればするほど様々な「手法」が出てくるだけになる。こうなると「あるべきお金の管理のやり方」を先に決めて「マニュアル付き」で現場に押し付けたほうがいい。岸田総理・総裁と茂木幹事長は総裁選の候補同士であり問題の当事者なのでできれば役職についていない自民党の若手議員や外部有識者にルール作りを一任すべきだろう。

自民党に憲法改正議論を任せるのは危険だ。特に自分達の身分に関するルールを彼らに作らせると政治資金と同じ混乱が起こることが容易に予想されるからである。現在の政治資金規正法を信頼する国民はおそらく多くないだろうが、彼らの手で憲法を変えてしまうと、おそらく憲法も信頼されなくなるだろう。

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