政治と金の問題は脆弱な岸田総理のリーダシップのもとで着実に迷走を続けている。形式的には政党の体裁になっているが内部統制は崩壊しかけている。とにかく現状把握ができなくなっているのだ。一方の立憲民主党の攻撃も場当たり的なもので事態の混乱に拍車がかかる。おそらく彼らはプロレスにしか関心がない。
現在は次第に派閥は悪だと言うことになりつつあり安倍派幹部を斬るべきか斬らざるべきかという問題にも注目が集まる。メリット・デメリットでは判断ができないため、結果的に「何も決まらない」まま通常国会が召集されることになった。この後もしばらくは混乱が続きそうだ。
この議論の陰で次第に日本の政党から政策立案能力が失われている。このままでは日本の政党は単なる国会プロレス装置と万人闘争権力闘争マシーンになってしまうだろう。
通常国会の開催を前に各テレビ局は自民党の政治家を呼んでお詫びと説明をさせている。TBSには田村憲久政調会長代行が出席し立憲民主党の小川淳也氏と「議論」をしていた。TBSの視聴者には田村真子アナウンサーのパパとして知られているようである。だが田村氏は「なぜ一部の議員にとって裏金が必要だったのか」を説明できない。よく考えてみればそれも当たり前の話だ。検察は一応の事情は聞いているが、自民党の内部では調査が行われていない。結局発言はあやふやなものとなり説得力に欠ける議論にしかならなかった。
状況がよくわからないため事態が収拾できない。このため、安倍派の委員長は交代となり、自民党の内部からは「いわゆる安倍派五人衆に離党勧告を出すべきではないか」という議論が出るようになった。よくわからない灰色のものは全部捨ててしまおうという「腐ったみかんの論理」である。しかしよく考えてみると幹部だけを離党させてしまうと説明を求めることができなくなる。
では説明させればいいのかということになるのだが「下手に説明させると裏金の違法性が認識されてしまう」可能性がある。おそらくこれが今回の問題の最大のネックである。状況が分からないために落とし所を事前に決めておくことができないのだ。
茂木幹事長は「出処進退は自分で決めるように」と要請することにしたようだ。岸田総理は離党処分には慎重な構えだ。岸田総理のリーダーシップのなさを際立たせる。
派閥に関しても混乱が広がっている。麻生太郎氏は頑として派閥は維持すると言い切っている。一方の茂木氏が派閥を解消しない理由はわからない。次期総裁選に向けて勢力を温存しているのではないかという疑いもあるが、茂木派からは造反者が出た。小渕優子氏と青木一彦氏が派閥を退会する。小渕優子氏は小渕恵三氏の娘だ。これを支えたのが青木幹雄氏だった。青木氏の悲願は「小渕恵三氏の娘さんを立派な政治家に育てること」だったが既になくなっている。そしてその青木幹雄氏の息子が青木一彦氏なので姫と従者といった関係になる。茂木敏充氏は青木幹雄氏の意向に逆らって竹下派を継承したとされている。「世襲」が重要視される自民党では派閥を簒奪したという印象がある。だが茂木さんが引き継げるのは「魂の抜けた箱」だけになるかもしれない。こうなると派閥もその他の議員の集まりも統率が取れない「万人の万人に対する権力闘争マシーン」になってしまうだろう。
岸田総理にとって最も分かりやすい解決策は誰かの首を刎ねて晒すことだがそれでは残った安倍派の面々に恨まれる。集団離党になれば自民党は過半数を失う。だったら誰かを遠島刑に処すべきかということになる。すると今度は何が起こったのかがわからなくなる。一方で説明を求めると予算編成にどんな影響が出るかわからない。これも集団離党騒ぎに繋がりかねない。メリット・デメリットを計測して意思決定するためには十分な材料が必要だがそれが揃わないと言った状態になっている。何よりも世論が何に対してどう反応するかが全くわからない。
これまで自民党は碌な党内調査もせずに問題のある人たちを次々と切ってきたが今回は数が多すぎて影響が読みきれないのだろう。
結局何も決められないので派閥は悪だという印象だけが強まっている。しかしよく考えてみればそれもおかしな話である。政党は政策が同じ人たちの集まりであるべきだ。政策を研究するには人が集まる必要がありそのためには研究費も必要だろう。今回の動きは「内部調査ができない」ために「政策集団が悪だ」という方向に話が流れている。結果的に政党の政策立案能力が落ちる。結果的に官僚組織の力が強くなるわけだが、彼らは省益確保のためにしか行動しない。
つまり日本から「新しい政策を考える力」が急速に失われつつある。
さらに悪いことに立憲民主党がこれに加担している。TBSに出演した小川淳也氏は得意げに田村氏を叩いていた。おそらくTBSとしてはいつも政治評論家にばかり話をさせていては問題は解決しないだろうと考えたのではないかと思う。だがその出来は田崎史郎氏(小川さんとは友達なのだそうだ)が「プロレスをありがとう」と皮肉を言うほどのひどい出来だった。政治家には議論させないほうがいい。プロレスにしかならない。
泉氏は「政策集団は悪いものだ」と言う印象をつけたかったのだろう。自身の政策集団を解散する。立憲民主党こそ政策研究の意欲を持つべきだと思うのだが、おそらく泉さんは「政党がどうあるべきか」よりも「今何をやったら国民に受けるか」と言うことしか何が得られない程度の人なのだろうと思う。
自民党の内部統治機構の崩壊は確かに深刻な問題なのだが、実は立憲民主党の「プロレス好き」な態度にも多いに問題があると言えるだろう。これはおそらく自民党だけの問題ではない。政治全体がわかりやすく劣化しているのだ。