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果たしてイスラエルはガザ侵攻を終わらせるつもりがあるのか 錯綜する報道

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このところ「イスラエルが一時停戦するのではないか」という報道が盛んに出ていた。結果的にイスラエル側がこの報道を否定し今も戦闘が続いている。なぜ停戦報道が出て否定されたのか。

背景はおそらくアメリカの大統領選挙とイスラエル政局だ。今回は文中に記事のリンクを作らずに最後にまとめた。記事は全部で20本ある。数日のうちにこれらの記事が五月雨式に報道されており「今どうなっているのか」が分かりにくくなっている。

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最初に戦闘一時休止の話を伝えたのはアメリカの右派メディアであるアクシオスだったようだ。休止期間は二ヶ月とかなり長いものでそのまま暫定的な休戦を長引かせることができるのではという内容になっていた。だがこの報道で生まれた希望は次第に萎んでゆき、最終的にはイスラエルが否定した。

毎日新聞はバイデン大統領の選挙キャンペーン演説が10回にわたって中断したと伝えている。ジェノサイド・ジョーに対する抗議だった。このようにイスラエル情勢はバイデン大統領再選の一つの障壁になりつつある。ホワイトハウスにとって事態の収拾は今すぐに解決すべき課題なのだ。

アメリカ合衆国など国際世論は「イスラエルとパレスチナの2カ国体制」を提案し続けている。ところがイスラエルのネタニヤフ首相はどういう理由かこの2カ国体制を否定している。これが基本的な構図だ。

バイデン大統領とトランプ氏の間でユダヤ系の支援者をめぐる綱引きがありバイデン大統領はネタニヤフ首相を見捨てることができない。またネタニヤフ首相にも「選挙をやり直すべきだ」という要求がある。そもそもハマスを作って育てたのはネタニヤフ首相なのだというEUボレル外交安全保障上級代表の主張もあり、イスラエル議会に人質家族が乱入し議員に抗議するという動きも見られた。テルアビブでも政権に抗議する集会が開かれている。ネタニヤフ首相の立場は国内的にも国際的にも日に日に悪化している。ついには「休戦を仲介するカタールを妨害した」というリークまで飛び出した。カタールは(当事者のネタニヤフ首相が)仲介を妨害したと呆れ顔だ。

そもそもネタニヤフ首相は長年パレスチナ自治政府を妨害してきた。ハマスを育てたのもその一環と考えられている。また、イスラエルの極右政党「ユダヤの力」を率いるベングビール国家安全保障相は戦争を止めれば政権離脱だと仄めかしている。一度戦闘の動きが止まってしまうとそのまま倒閣運動につながりかねない。だから休戦にも応じることができないのだ。

イスラエル内部にも路線対立があるようだ。ネタニヤフ氏はハマスの徹底壊滅は可能とするが退役軍人の所要閣僚はそんなことはできるはずがないと言っている。ガラント国防大臣とネタニヤフ首相は「ほとんど口をきいていない」というほど険悪になっている。

超正統派は労働ができないので軍隊にも参加しない。つまり超正統派の望むイスラエルのために軍人だけが犠牲になっているという側面がある。超正統派は税金も納めないのでいくら戦闘が続いても戦費を負担する心配はしなくていい。単に理想を追求しつづけていればよいことになる。

さらにいえば。トランプ氏がどのような見解を持つかがわからない。ネタニヤフ首相はトランプ氏が自分の主張をそのまま受けてくれることを期待しているようだ。板挟みになったブリンケン氏は「アメリカは2カ国案を捨てない」が「暫定的であればイスラエルの支配を認めても良い」と玉虫色の意見表明をしている。CNNはハマスの幹部がガザ地区を脱出すれば戦争をやめてもいいと提案していると伝えた。「継続中の協議に詳しい当局者2人が語った」となっており出どころはわからない。

結果的に大統領再選のキャンペーンが「ジェノサイド・ジョー」の抗議の声にかき消されて10回以上中断されるという事態になった。次第に大統領選挙にも影響が出始めている。。

グテーレス事務総長は2国家案を否定するネタニヤフ政権を批判している。イスラエルは南部ハンユニスにある国連の施設(UNRWA)を攻撃し少なくとも9名の死者が出ている。イスラエルが攻撃したものかハマスの流れ弾で被災したのかなどはまだわかっていない。

ロイターはイスラエルとハマスの間で停戦合意がまとまりそうだが休戦の認識に違いがあると伝えていた。時事通信も「イスラエルの内閣が停戦に向けて話し合っている」と伝えていたが、イスラエルはこれらの報道を否定した。前回も停戦に応じてやったが人質が戻ってくる前にハマスが攻撃を仕掛けてきたではないかと反論している。仲介するカタールに対して悪態をついていたところからもおそらくネタニヤフ氏が停戦に応じるつもりはないのだろう。

バイデン大統領の選挙キャンペーンに反発の声が上がっているためバイデン氏側がなんとか事態を収めようとしている。おそらく各所からの報道もその流れを作ろうとしたことはわかる。だが、結局イスラエルを合意させることはできなかったようだ。

今回の参考文献をまとめた。

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