植物を育てていると不思議に思うことがある。どんどんと上に伸びてゆくわけだが、あれはいったいどこから湧いてくるのだろうか。光合成というから光を固定して物資化しているのか。
光合成は光を物質化しているのではないそうだ。「理科で習った」のかもしれないがすっかり忘れいていた。光合成は光の力を使って二酸化炭素を炭水化物へと変えているらしい。その役割を担っているのが葉緑素である。合成の残りかすが酸素なのだそうだ。
そんなことをしていたら地上から二酸化炭素がなくなってしまいそうなのだが、動物が酸素を二酸化炭素に還元している。炭水化物も分解されるわけで、うまくできている。
植物は空気を物質に変えているのである。
植物が成長するときには窒素も使っているらしい。ただし自分では窒素を固定化できない。そこで細菌が「ニトロナーゼ」を用いてアンモニアを植物に供給してやっている。ところがその量には限界があり、植物はその限界の中でしか成長することができない。
そこで、人間が細菌の役割を担うようになった。かつては「肥」を田畑に流していたわけだが、現代では、高圧力下で窒素と水素をぶつけてアンモニアを作っている。ハーバー・ボッシュ法というそうだが、水と空気から植物のもとを作っている訳だからまるで魔法のようだ。ハーバー・ボッシュ法が発明されたおかげで人類は土地の制約(すなわち細菌の量だ)から解放された。ヨーロッパの土地は限られている。だから人口を賄おうと思えば、外の土地を収奪するしかない。そこで起きたのが植民地獲得競争だ。だが、土地の収量が上がれば、高い武装コストを払ってまで植民地経営をしなくてもすむのだ。
戦争はなくなりそうだが、却って戦争は激化した。同じ仕組みで火薬を作ることもできるのだそうだ。ドイツは火薬の原料の硝酸を自家供給できるようになり、第一次世界大戦で利用されたということである。
いずれにせよ、空気からアンモニアが合成できるようになったおかげで人口爆発が起きた。1920年の人口は20億人だった。これが現在では70億人となっている。日本でも明治維新以後人口が伸び始め、第二次世界大戦後爆発的な人口増加が起きた。
第一次世界大戦と第二次世界大戦は、人類が土地の生産量から解放された結果起きた人口爆発を背景にして起ったことになる。なんらかのバランスが壊れたからなのかもしれない。