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ドイツで農民反乱 トラクター10,000台で首都の交通が麻痺状態に

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CNNが「ドイツ全土で農家らが抗議デモ 首都まひ状態、極右支持拡大」という記事を出している。ベルリンで農家が抗議デモを行い一時首都の交通が麻痺したというニュースだ。このニュースだけではよく内容がわからないのだがBBCは独自調査で「極右がかなり浸透しているようだ」と伝えている。排外主義的な「ドイツ第一主義」のメッセージが増殖しているそうだ。ドイツの農民たちの苛立ちはかなり危険な方向に向かいつつあるようだ。

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ドイツの首都ベルリンに集結した農家がデモを引き起こした。1万人以上が参加しブランデンブルグ門前の道路はトラックやトラクターで埋め尽くされたという。デモは一週間も続き首都はほぼ麻痺状態になっている。またハンブルク、ケルン、ブレーメン、ニュルンベルク、ミュンヘンなどの各都市でも2,000台規模のトラクターが集結してデモを行なっている。農民たちは各種補助金のカットなどに怒っている。だが補助金カットは本質的な怒りの理由ではないように思える。

クリスティアン・リントナー財務大臣は「政府にはお金がないのでもう補助金は出せない」と農民たちを説得した。リントナー氏は新自由主義的な政党自由民主党の党首でもある。小さな政府を志向し農民たちに自立を促している。

現在のドイツはSPD(社会民主党)・環境左派の緑の党・ドイツ自由民主党の3党連立政権だ。緑の党は積極的財政出動によって環境対策を積極的に推進すべきだと考えているが自由民主党は小さな政府志向で「財政支出を厳しく制限すべきだ」と考えており債務ブレーキを神聖視していた。

最高裁判所の決定は2つの政党の政策にそれぞれ水を差す形になっている。2023年11月22日にロイターが「ドイツ政府、財政支出の大半を凍結 憲法裁判決を受けて」という記事が出ている。コロナ対策のための予算を他目的に使用してはならないというのが判決趣旨だった。これを受けてドイツ政府は各種補助金の削減を始めた。と同時に債務ブレーキの凍結も延長されている。

農民の反乱に対して政府も手をこまねいているわけではない。農業用車両に対する自動車税を免除しディーゼル減税の削減も緩やかなものにすると約束している。だが農家は納得していない。おそらく彼らは海外から安く流れてくる農産物に憤っている。ドイツの農業はそもそも補助金なしでは立ち行かなくなっている。

もともと外国産の安い農産物に押されて苦境にあったドイツの農家たちは「外国」そのものに対する敵意を募らせているのかもしれない。リンドナー財務大臣が「ウクライナを守るためにも予算が必要だ」と訴えた時には一際抗議の声が強くなったそうである。

極右AfDはこの怒りに乗じる形で政権批判を繰りひろげている。左派連立政権の経済政策は失敗だったとした上で「外国」と「外国から流れてくる移民」に敵意を向けている。デモはかなり混乱しているがBBCのヴェリファイチーム(SNSに流れてくる写真から状況を分析するチーム)はドイツ第一主義がかなり浸透しているようだと分析している。ドイツは農民の怒りがユダヤ人排斥主義につながった過去があり、今回の動きも「いつか来た道」にならないか懸念されているようだ。

前回紹介した北アフリカにモデル国家を作って有色人種を強制移住させるという「マスタープラン」もその一環として出てきたものと思われる。

当初、ABEMAが「ソーセージを焼きながら」デモを行なっているなどと報道していたため牧歌的なデモを想像した。だが、トラクターが街を占拠し交通を麻痺させるなどの激しい行動はとても牧歌的とはいえそうにない。

このほかドイツでは鉄道デモも行われている。緑の党が主導して「環境にやさしい鉄道に乗ろう」いうキャンペーンをやっていた。9ユーロで一ヶ月間鉄道に乗り放題というようなキャンペーンをやっていた。当初は乗客が殺到し遅延が起きていた。

遅延の直接の原因はキャンペーンだが背景には鉄道のリストラがあった。車や飛行機へのシフトが起きていたが中道右派政権下では十分な行政からの支援が受けられなかった。結果的に競争力を失った鉄度は経費削減を進めており安定運行や安全にも影響が出ていた。

政府の無策に怒ったドイツの鉄道運転士労組GDLは3日間の全国ストライキに突入しており、数十万人の乗客に影響が出ていた。労働組合は賃金を維持したままで労働時間を短縮せよと迫っている。

このようにドイツの交通は混乱し経済にも影響が出かねない状態になっている。

日本は事実上の財政ファイナンスにより各種の補助金と年金などの社会福祉を維持している。このため「政治と金の問題」があっても国民の関心はそれほど高くない。このまま改革を先延ばしにしてとにかく現状さえ維持してくれればいと考える人が多いからなのではないかと思う。

だが、厳しい財政規律を導入した国(ドイツ)や社会福祉改革を行ったフランスでは極右が台頭している。ターゲットになっているのはそれぞれ海外から流れてくる移民や外国への支援である。ウクライナ支援もかなりの重荷になっているものと思われる。

おそらくこうした動きは政府批判には止まらないだろう。彼らが怒りを鎮めるためには「なんらかの悪者」が必要だ。ドイツの場合それは「外国」ということになる。具体的には外国から来た移民や外国からの安い製品などだ。外に敵を求め出した時の民主主義は危険だ。ヨーロッパの先行事例で排外主義がどこまで浸透するかは未知数だが、今後ヨーロッパの動きがどのような経過を辿って過激化するのかについても注視する必要があるのではないかと思う。

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