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フーシ派攻撃をきっかけに英米が新しい戦争に巻き込まれる可能性 そもそも「フーシ派」とは何か

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BBCが英米がフーシ派への攻撃をきっかけに新しい戦争に巻き込まれる可能性について言及している。第一に「なぜたかがテロリスト掃討作戦で新しい戦争に巻き込まれるのか」と疑問に感じた。またなぜフーシ派が長い間殲滅されていないのかも気になる。日本の報道を見ても西側の情報発信を見てもすっきりとした答えが見つからない。

いずれにせよすでに攻撃に手をつけてしまっているため今後は高いコストを支払って海運を維持する必要が出てきた。日本の食料品価格にも影響を与えそうだ。

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BBCがフーシ派攻撃をきっかけに英米が別の紛争に引き摺り込まれる可能性について言及している。まずそれがどんな「紛争」なのかが気になる。

もともとイエメンは北部のオスマン領と南部のイギリス領に分かれていた。南部はイギリスから独立し人民共和国を作ったが内戦が起きて北部の主導で南北が統一された。だが統一政府のハーディ大統領に対して軍人のムハンマド・アリ・アル・フーシ氏がクーデターを起こした。これが2014年から2015年にかけてのことだった。国際社会はクーデターを認めず「賊軍フーシ氏一派」という意味でこの革命政府を「フーシ派」と呼び始めた。サウジアラビアが主導する連合軍が政府を支援するとイランが革命勢力を支援する。これがざっくりとしたあらましである。

西側のメディアを見るとイランが西側を攻撃するためにフー氏というテロリストを雇っているような印象になるが実際の状況はそれとはかなり異なっている。

サウジアラビアは長い間革命政府を潰そうとしてきたが成功していない。革命政府を支持している民衆も少なくないからだ。仮に彼らが単なるならず者であればこうはなっていないはずだ。

Time誌がフーシ派について詳しい分析をしている。フーシ派はシーアに属するザイディ派(Zaydi)の文化復興運動として始まった。2022年の時点ではイエメンの35%が信仰している。一方でサウジアラビアはスンニのサラフィ派(Salafi)を支援している。サラフィ派はザイディ派のエリアに浸透しザイディ派を抑圧したものと考えられているようだ。アルジャジーラによるとフーシ派はアンサル・アラー(神の支援者)と自称する武装勢力でサウジアラビアに近い西部と北部を含むイエメンの大部分を支配している。

2000年代のイエメンでは政府に汚職が蔓延していた。2011年のアラブの春でその怒りが頂点に達しサレハ大統領の辞任を求める声が高まった。サレハ氏は辞任したがサウジアラビアは後継にハディ大統領を立てた。この政権交代に怒ったザイディ派がサウジアラビアの排除などを求めて武装蜂起を展開したのが革命の端緒になっている。クーデターも革命もテロも単なるラベリングに過ぎない。

正当な政権のはずのイエメン政府は実際には首都サヌアを中心とする一帯は支配できておらずアデンが拠点になっている。サウジアラビアを主導とする連合軍は戦争犯罪とも見做されるような空爆を繰り返して政府を支援したがハーディ大統領は統治を奪還できなかった。フーシ派ととくに敵対的だったハーディ大統領は2022年4月7日に大統領権限を評議会に移譲して首都から逃亡した。現在の大統領はラシャド・アル・アミリ大統領である。

イエメンの人口は3000万人ほどだが2160万人が人道支援と保護サービスを緊急に必要としていると言われているそうだ。この貧困問題こそが問題の根幹だ。

もともと中東の国民福祉という考え方が希薄だ。これを代替する勢力がいつの間にか武装集団化して「テロリスト」と呼ばれるのがお決まりのコースと言える。ムスリム同胞団はエジプトで革命を起こし軍によって追放された。ハマスももともとガザ地区で困窮民救済などをおこなっていたという歴史がある。フーシ派もそのような共同体が前身になっているようだ。

結局サウジアラビアは武力での問題解決を諦めてイランと話し合いをして問題解決を目指すことになった。これを仲介したのが中国だった。今回の米英の攻撃はこうした和平努力をぶち壊しにしたものと考えられる。

アメリカとイギリスがフーシ派を追い詰めれば追い詰めるほど欧米はイスラエルと組んで革命勢力を潰そうとしているのだという理解が生まれる。却ってイエメン国民が革命勢力を支援する結果になるのではないかとアルジャジーラはみている。

バイデン大統領は大統領選挙を前に外交的成果を欲している。今すぐ票になるようなわかりやすい成果だ。ウクライナは見捨てられつつありイスラエルも戦争犯罪まっしぐらという状況のため「バイデン大統領は繁栄の守護者である」という印象をつけたい。だが大統領はイエメン情勢に介入してフーシ派を倒そうとまでは思っていない。米兵の血が流れるのは避けたいからだ。結果的に状況が改善されるとはみられておらず地域混乱が続くことになる。

アメリカ合衆国は中南米でも貧困を放置しており各国政府の不安定化と移民や麻薬の流入を招いている。

基本的なラインとしては「軍事力でテロを追い詰めるのは悪手だ」と思うのだが、もうそんなことは言っていられる状況ではないというのも確かである。紅海の海運コストは高騰しており英米を含めた西側には「何もしない」という選択肢がない。紛争に巻き込まれるコストを支払ってでも海運を守らなければならないという段階にきている。日本の食料品にも影響が及び始めているとJETROが書いている。貧困を放置したツケとはいえ、我々の繁栄が実はかなり高いコストで支えられていることがわかる。一度手をつけた以上は落とし所を見つける必要がある。

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