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検察の立件見送りで裏金をなかったことにしたい岸田総理 国民との対話はもはや成立せず

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安倍派幹部に対する立件が見送られ、議員三人(うち一人は逮捕済み)と二派閥の会計責任者のみが立件されることになりそうだ。意外だと感じる人もやっぱりと感じる人もいるかもしれない。

これまでの検察発信の情報から立件見送り自体は既定路線と言って良いのだろうが、折悪く政治刷新会議のメンバーとして参加している安倍派のメンバーに裏金疑惑が見つかった。岸田総理はメンバーを変えないと言っている。理由は「疑惑に過ぎず排除する理由がない」からだそうだ。

国民との間に会話のキャッチボールが成立しておらず、政権としてはもうもたないだろうと感じる。

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安倍派幹部立件見送りの一報をきっかけにSNSのXでは「検察は死んだ」などという投稿が溢れておりまるでお通夜のような状態になっていた。有利な状況を作るために朝日新聞などとタッグを組んで情報を流していた検察が期待値(ハードル)を上げてしまったようだ。年明けになり「議員の立件については慎重に判断する」という報道も出ていたが証拠を破壊しようとした不心得な議員のために埋没してしまった。この予測外の逮捕もネット市民の期待を押し上げる要因になった。

自民党幹部の立件に期待してテレビドラマのように政局を見ていた人たちは「なんだこんな結末か」「これまで一生懸命に見ていた時間を返せ」と憤っているかもしれない。映画ならチケット返金騒ぎが起きても不思議ではないくらいの下手なシナリオだったと言って良いだろう。

この発表のタイミングは自民党の政権幹部にとっては最悪のタイミングとなった。岸田自民党は政治刷新本部を作って幕引きを図りたい考えだが、安倍派の10名のうち9名に裏金疑惑が報じられている。

今回の政治刷新本部は政党幹部に青年局と女性局幹部経験者を入れた構成になっている。岸田総理としては「自民党全体できちんと話し合いましたよ」という形を示したかったのだろうが結果的に安倍派が多く登用されることになった。

あくまでも私見だが岸田総裁は二階派・安倍派の幹部から派閥メンバーを引き剥がし「オール岸田体制」を作ろうとしているのではないかと思う。派閥の長の背景には派閥議員がおり系列の地方議員がいる。同じように青年局と婦人局にも系列がある。無党派層・無派閥の支持を諦めて集団単位で支持基盤をまとめようとするのが岸田総裁の基本的なスタイルだ。となると、結果的に裏金が出てきたとしても彼らを切ることはできない。系列を切ってしまうことになりオール岸田体制が作れない。

だがその説明が非常にまずいものだった。時事通信が次のように書いている。

首相は首相官邸で記者団に「党が一致結束して議論を行うに当たって排除の論理は適切ではない」と述べ、疑いを理由にメンバーから外す考えはないと強調。「党全体で議論を行い、国民の信頼回復につながる結論を出していきたい」と語った。

「疑いを理由に」という部分は問題だ。では「疑いをはらすために調査してくれるんですか?」ということになる。おそらく答えは「調査はしません」となるだろう。

検察が立件しない背景には少額の未記載なら修正すれば見逃しますよというメッセージがある。つまり修正申告した時点で「疑い」が「事実」として確定される。「じゃあ申告の時点で切るのですか?」ということになるが、おそらくそれもないだろう。

岸田総理に悪気があるとは思わないのだが「検察が立件しなかったでしょ、だから問題はないんですよね」とさらっと言ってしまうところに政治的なセンスのなさを感じる。

国民が何を問題視しているのかがよくわかっていないか、次の展開が予想できていないか、あるいは何か別のことで頭がいっぱいになっているかということになる。会話のキャッチボールが全く成立していないということは誰の目にも明らかで、おそらく政権としては長く持たないのではないかと思う。

理屈よりも「あれ、なんだか岸田さんとの間に対話が成立していないな」という違和感の方が大きいのかもしれない。「岸田さんはもしかして状況を理解してくれていないんじゃないか」といううっすらとした気持ち悪さが残る。

こうなるとこの「気持ち悪い期間」がどれくらい続くかが問題になりそうだ。仮に予算成立をきっかけに退任するということになればレームダック期間は最低で収まるだろうがそれでもあと3ヶ月弱もある。9月の総裁選までもつれ込むとかなりややこしい事態になりそうだ。何も決められない期間がこれから半年以上も続くことになってしまう。

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