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自民党の政治刷新本部に期待できないわけ 若手に元気がなくまるで序列のピラミッド

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政治と金の問題で批判にさらされている自民党に政治刷新本部が設置された。週刊誌には「期待できない」という記事が多いようだが、改革案が出るまで評価は待つべきではないかと思う。何事も頭から否定するのは良くない。

だが内容を見てやはりこれではダメなのだろうなと感じた。理由は二つある。第一に若手から斬新な案が出てこない。次に内容があまりにも古すぎる。まるで序列のピラミッドなのだ。自民党は党内統治と次世代の人材育成に我々が考える以上に深刻な問題を抱えているのかもしれない。

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仮に自民党の中に危機感が広がっているのなら党派を超えた仲間があつまり自発的な議論が起こり提言があってもよさそうだ。だがこれが見られない。代わりに出てきたのが会議と聴き取りである。まるで通常時の予算策定と同じようなやり方で組織としての危機感が伝わってこない。

論より証拠というが、日経新聞に役員人事が掲載されている。38名の名前が掲載されていてみんなに役職名がついている。

  • 最高顧問 麻生太郎、菅義偉
  • 本部長 岸田文雄
  • 本部長代行 茂木敏充
  • 本部長代理 森山裕、渡海紀三朗、小渕優子、関口昌一、岡田直樹
  • 副本部長 逢沢一郎、浜田靖一、梶山弘志、金子恭之、平井卓也、野上浩太郎、牧野京夫
  • 幹事長 木原誠二
  • 幹事長代理 福岡資麿
  • 幹事 小泉進次郎、佐々木紀、鈴木馨祐、牧原秀樹、松本洋平、島尻安伊子、高階恵美子、堀内詔子、上野通子、太田房江、松川るい、三原じゅん子、吉川有美
  • 事務局長 小倉将信
  • 事務局長代理 小林史明、牧島かれん
  • 事務局次長 鈴木貴子、藤原崇、三谷英弘、高橋はるみ

組織改革で重要なのは立場を超えてそれぞれのメンバーが忌憚ない意見を交わす場所を作ることだ。これがうまくゆかないときには経営者が主体となって会議体を作ることがある。この時も序列を作らずに誰もが平等に意見を言えるようにしておくのが組織改革の鉄則だ。改革にはオーナーシップが重要だからである。

今回の構成を見ると安倍派と二階派を除く派閥の領袖がもれなく入っておりそれぞれの序列もしっかり決められている。例えば「代行と代理では何が違うのだろうか?」という気がするし「次長」という人たちもいる。政治通に言わせればこれが通例なのだろう。非常時の危機感がなく「後で文句が出ないようにいつも通りに決めました」という意識が表れている。

朝日新聞は「安倍派から10名が入っている」と書いている。つまり派閥の領袖を除いた形で安倍派を取り込もうという下心も感じさせる。おそらくこのマインドセットでは「派閥順送り型の人事」を止めることさえできないだろう。

また若手に全く活気がないのも気になる。どうも対応が受け身のようだ。自民党には青年局という部署がありその局長経験者などが対応を協議していた。彼らは局長経験者なので若手ではなく中堅と言われている。総理大臣を突き上げる形で要望を出すという形にはなっておらず、岸田総理がわざわざ「内容を聴き取って」いる。

さらに岸田総理は青年局に対して意見を上げてもらうことにしている。青年局は「言われたら応じる」というリアクティブな対応に終始していて自分達から自民党を変えてゆくのだという気概を持っていない。おそらく彼らは単に受益者であってオーナーシップも参加意識もないのだろう。

読売新聞が次のように書いている。

岸田首相(自民党総裁)は21日、自民派閥による政治資金パーティー収入の裏金化疑惑を巡り、党青年局の中曽根康隆局長代理らと首相官邸で面会し、全国の青年局員に意見を聞き、報告するよう指示した。中曽根氏が面会後、明らかにした。

若手が受身に終始する一方で、「昔の青年」たちは張り切っている。渡海紀三朗氏と菅義偉氏がその代表格だ。特に菅義偉氏は「派閥は解体すべきだ」と考えており麻生太郎氏と対立することが期待されている。

菅義偉氏がどこまで自分の主張を通すのかについては未知数だ。そもそも無派閥の人が10名しか参加していないことから神奈川新聞も「菅さんも結局は丸め込まれるのではないか」と不安視している。菅さん一人が張り切ってもついてくる人がいなければどうにもならない。

「菅氏がガンジー同様に…」英印歴史に照らし、無派閥勢力に懸念広がる(神奈川新聞)

「刷新」という名前はついているが、有権者は「自民党はどうせ変われないだろう」と諦めムードであり当事者たちの間にもあまり危機感は広がっていないようである。

厳密に言えば国民や企業が寄付をして政治運動を支えるというのも民主主義の一つの形なのだが、日本ではどうもそのような動きが広がる気配はない。政治家は目を離すと何をやるかわからないという不信感ばかりが広がっており「厳罰化」や「ペナルティーの導入」などが盛んに議論されている。

だがそれよりももっと気になるのは若手の元気のなさだ。次世代の人材をうまく育成できておらずそもそも意見すら出てこないという点がこの問題の中心核なのかもしれない。若手は自民党を「自分達の政党だ」とは思っていないのかもしれない。

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