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フランスの新首相ガブリエル・アタル氏は若くてイケメンの同性愛者

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フランスに新しい首相が登場した。ガブリエル・アタル氏は史上最年少の34歳で首相になった。また、同性愛者であることを公表している。フランスに若くてイケメンの同性愛者の首相が誕生したなどと書けば各所から「ルッキズム」批判が殺到しそうだが、なぜそのような表現にしたのかはおいおいと説明することにする。

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フランスのマクロン大統領は新自由主義的な考え方を持ち「フランスの福祉政策は甘すぎる」と感じている。そんな彼が就任後に打ち出したのが年金改革だった。これに不満を感じた労働者たちは燃料費の高騰などを背景にイエローベスト運動を起こす。マクロン氏は二期目の選挙で極右のルペン氏に肉薄されるのだが対抗勢力が極右と左派に分断されていたこともありかろうじて再選を果たす。その一方で与党は支持を失い議会での多数派を失っていた。

フランスの大統領は2期までしか務めることができない。もう選挙がないことでマクロン大統領は兼ねてからの持論だった年金改革を断行することにした。抗議運動で騒然とする中で支給開始年齢が64歳に引き上げられた。

福祉の削減とウクライナの戦争を背景にする物価高など様々な不満が蓄積してゆくなか、その苛立ちは移民に向かって行く。移民に関するフランス人の感情はかなり複雑だ。若者は「きつい仕事は移民にやって貰えばいい」と考えるようになっている。一方で地方では移民に対する不満も溜まっているようだ。福祉予算を食い潰しているのではないかと言う不満もある。

不満がおさまらなければ極右が台頭してしまう。

中道とされるボルヌ政権は保守派を取り込み極右を排除する形で移民法を成立させた。この移民法の成立は「中道・保守の勝利」と分析されることもあるが、実質的には極右(FN:国民戦線)のルペン氏の勝利だったとする分析もある。形式上は中道・保守が面子を保ったが、実は実質的な勝利をおさめたのは極右のルペン氏だったというわけだ。

これに不満を持ったのが連立政権に参加した左派だった。もともとボルヌ首相は「フランスで2人目の女性首相」と言う触れ込みで首相になっている。つまり多様性を全面に押し出し進歩的な左派を政権に取り込んでおく狙いがあったのではないかと思う。今回のアタル首相も左派オランド政権で首相補佐官を務めていた。

このボルヌ首相が退陣するのではないかと最初に伝えたのはロイターだったようだ。各紙が追従していたが、この時点ではどれくらいの内閣改造が行われるのかはわかっていなかった。

結局、総辞職して内閣を入れ替えると言うことになった。

フランスの内政が行き詰まる中で政権をリブートさせるためには派手な表紙が必要だ。史上最年少の首相というキャッチーさはフランス政治の行き詰まりを象徴しているともいえる。冒頭の若くてイケメンの同性愛者と言う表現は確かにルッキズム満載と批判されても仕方ないが、それが政治利用されていると言う現実もある。マクロン政権は蓄積した左派の不満を人事に対する処遇で抑えようとしているのかもしれない。

BBCは今回の件でアタル氏を次のように形容している。つまりそのルックスもまた注目されている。ちなみにシビル・パートナーがいる「既婚者」だ。

Handsome, youthful, charming, popular, cogent, Mr Attal certainly comes to office trailing clouds of glory – much, let it be said, like his mentor and role-model the president himself.

フランスの次の政治的アジェンダは6月のEU議員選挙だ。現在の情勢ではEUの政策に懐疑的な極右が台頭するのではないかと言われている。去年の12月にはヨーロッパの極右政党が「サミット」を開いていて躍進を誓っている。こちらの記事では「国民連合:RNのバルデラ党首」と言う表現が出てくる。どうやらFNとRNは同じ政党のようで、党首がバルデラ氏、国民会議議員の会長がルペン氏と言う構成のようである。

史上2人目の女性首相という触れ込みだったボルヌ氏はある意味使い捨てられる形で史上最年少の首相に道を譲ることになった。マクロン大統領はEU議会での敗北を最低限に抑えパリオリンピックも成功させたい。のためにはどうしても新しくてきれいな「表紙」が必要だったのだろう。

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