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2024年度の一般予備費が倍増 災害を利用して「合法的な裏金」を作りたがる日本政府

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政府が2024年度の一般予備費を倍増させることがわかったと共同通信が伝えている。予備費は内閣が国会の承認を得ずに使える予算で緊急事態などに利用されている。ただし2023年度は5000億円のうち4666億円が使い残されている。建前上は使途は追えないことになっているのだが、管理のための裏帳簿を作っている官庁もあり会計監査院が問題視していた。会計監査院はさすがに裏金・裏帳簿とは言えないため「個人的なメモ」として管理簿をつけていると説明している。

震災後「復興増税を言い出すのでは」と懸念する声があったが、SNSの懸念は意外と当たることがあるものだと感じる。

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政府は「能登地震への復興を進めるため」として一般予備費を倍増させることを決めた。総額は1兆円になる。被災者支援というとなんとなく反対するのが後ろめたく感じられる。

しかし内容に違和感も感じる。

2023年の予備費は5,000億円計上されているが4,666億円が使い残されていた。今回の能登半島地震の最初の対策費用は47億円だ。かなり多いという印象を持つ人もいるのだろうが実は使い残しのほんの一部だったいうことになる。万博の費用を復興に充てるべきだという声があったが実は潤沢な資金を政府は使わずに持っている。単に政権与党の票につながらない支出を抑えたいだけだ。

予備費が膨らむきっかけになったのがコロナ禍だった。政府は20年21年度に14.65兆円の予備費を計上していてそのうちの3.7兆円が使い残されているという。会計検査院は目的外使用はなかったとしているが「計上がずさんだった」として改善を要求している。

つまりこれまでも政権は災害を利用して国会に説明する必要がないお金を溜め込んできた。財政に余裕があればそれでもいいのかもしれないが一方では増税や保険料の増額などが話し合われている。また大阪・関西万博のような無駄なプロジェクトも進行中だ。

この時に問題になったのが「管理簿」の存在だ。政府は野党からの追及を恐れて「予備費をいくら何に使ったのかは把握できない」と説明してきた。しかしながらなんでも記録をつけたがる官僚が「何も記録していない」はずもない。高市早苗氏が総務省側からと見られるリークに見舞われたことがあったが、当時も「官僚個人のメモ」が話題になった。今回も同様に個人メモとして管理簿があることがわかっている。ただし、会計検査院が検査しただけなのでどの省庁がどのような管理簿を持っているのかはわかっていない。いわば「省庁版裏帳簿」が個人メモという名目で横行しているといえるがその実態を政権執行部が把握しているかどうかは怪しいところである。

今回の派閥と裏金の問題も元はといえば安倍派から放逐された元幹部のリークなどが突破口になっている。検察が裏金議員を摘発できたのもおそらくなんらかの内部メモを議員が持っていたからだろう。つまり政権・政党幹部が把握していない裏帳簿は省庁で権力争いが起きた時の「爆弾」として利用されることになる。だが、政権はこの教訓から何も学んでいないようだ。

有権者の側は「増税を伴わないなら政府が何をやっても別に構わない」という気持ちになっているのだろう。能登半島地震の直後「復興増税」というワードがXのタイムラインに出てきた程度だった。しかしながら、いくつかの理由でこの裏金はやがて国民の負担増につながってゆくものと思われる。「政府の借金は自分の借金ではない」という人もいるがやはりそういうわけにはいかない。

いわゆる「クロダノミクス」は破綻寸前になっておりこれまでのような国債依存の予算が立てられなくなっている。金融政策の選択肢が限られる中でインフレによる物価高や金利の上昇など税以外の国民負担も増している。金融ファイナンスは予備費の膨張のような杜撰さの温床になり、これは将来的な増税につながる。

つまり、さまざまな形で「請求書」が送られてくる。増税のように気が付きやすいものもあるがそうでないものも多い。例えば物価高や金利の上昇などはその一例だ。

財政規律が緩む中、政府は実効性のある政策も打ち出せなくなっている。つまり予算がまともに作れないだけでなく政策も打ち出せなくなっているのだ。

有識者で作る人口戦略会議が「人口が減るならそれを前提とした政策を作ってくれ」という提言をまとめた。自公・民主党政権共に人口減少に有効な対策を打ち出せていない。もう夢のようなことは言っていないで現実を直視すべきだという提言だ。この人口戦略会議は2100年に8,000万人程度の国になることを目指すべきとしている。随分とひどいことを言うなと感じるが人口戦略会議は半減(つまり6,000万人程度)を予想しておりこれを食い止めるのが精一杯だと考えているようだ。おそらくユニバーサルサービスの維持は難しく災害で壊滅的な被害を受けた僻地の復興も諦めざるを得ないという厳しい内容といえる。

例えば能登は数年前に地震に見舞われていて10年以上の月日をかけて復興をやってきた。今回その復興の成果がすべて破壊されてしまったことで「もう復興は諦めてもいい」という人たちがいる。2007年の地震から立ち直るためにコツコツと努力してきたお寺はもう再建は無理だと言っている。高齢化が進み「復興の前に自分達がいなくなってしまう」という気持ちがあるからだ。みんなが心を一つにしなければならない時になんということを言うのだと言う人もいるだろうが、これが現状なのである。

議員たちは人口減少よりもむしろ地方の議員定数が減ることを心配していて「選挙制度をなんとかすべきだ」と言っている。この提言は内容非公開となっている。

安倍派・二階派を中心にパーティー券収入を裏金化していたことがわかっているのだが、実は政府も合法的な裏金を溜め込んでいる。主語を官僚にすべきか政府にすべきかは迷うところだが、議員・政府中枢・官僚共に国民に知られたくない使い道があるのだろう。さらに地方の議員数を増やせと言っているところから「どうせ自分達の考える対策には実効性がない」と言うことも彼らはおそらくわかっている。

自民党は11日に刷新本部の初回会合を開くことになっている。派閥を温存したい麻生さんと派閥をなくしたい菅さんの対立になると言われているようだが「国民に説明責任を果たします」というのは選挙向けのポーズにすぎない。実際には予算編成を利用した「合法な裏金」を増やしたいと考えているのが今の岸田政権なのだ。


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