読売新聞の見出しは「二階俊博・元自民幹事長に任意聴取…派閥の元会計責任者は特捜部に不記載認める」だ。事情聴取というと「ああもう逮捕されるのだ」と言う印象になりそうなので「呼び出し」と言う言葉を使うことにした。
安倍政権下で権力をほしいままにしていた二階幹事長が捜査対象者になった。読売新聞は明らかに「二階元幹事長危し」というトーンの見出しをつけているが、まだ政治家が捕まるかどうかはよくわからない。安倍派は議員と幹部に流していたことがわかっているが、二階派は派閥側が不記載のお金を溜め込んでいたものと考えられていた。だが今回は「二階さんは議員個人としても不記載のお金を貯めていたのではないか」という疑惑が出てきている。そんなにお金を貯めてどうするんですか?と二階さんに聞いてみたいところだ。
今後の焦点は二階俊博氏の責任を問うことができるかである。むしろ「立件できなかった」時の方が問題は大きくなりそうだ。リクルート事件で特捜は中曽根氏にたどり着けなかったが中曽根氏は党籍を離脱せざるを得なくなりその後中曽根派は衰退した。橋本派も同様だ。日歯連事件で橋本氏には辿り着かなかった。二階氏と二階派の運命は一体どのようなものになるのだろうか。
読売新聞によると、検察はこれまでの調べを元に「二階氏の認識をただした」ことになっている。
見出しにある通りすでに元会計責任者は不記載を認めており立件は確実とされている。会計責任者が勝手に5年間で1億円を手元に溜め込んでいたとなると「二階さんの目を盗んで横領した」ことになってしまうが、さすがにこれは考えにくい。
ただし主観的な観測だけでは立件することも難しい。検察がどれくらい具体的な証拠を提示して二階氏を追い詰めることができるかが注目ポイントだ。すでに事務総長をやっていた平沢勝栄氏の聴取は終わっており、あとは二階さんに今まで見つけた証拠を突きつけることになるのだろう。
新たな疑惑も出てきた。
これまでは
- 安倍派の問題は議員に戻されたキックバックが裏金になっていた
- 二階派は議員の側の不記載はなかったが、派閥の側には不記載があった
と説明されてきた。
例えば読売新聞の年末の記事には図表が出ているのだが、赤色で囲まれた「裏金」の場所が安倍派と二階派で異なっている。つまり「二階幹事長が議員からお金を集めて一体何に使っていたのだろう」と言うことが争点になると読み取れる。
二階派では複数の所属議員側が、販売ノルマを超えて集めた分のパーティー収入を、そもそも派閥側に納入していないケースがあり、二階元幹事長の事務所もパーティー収入の一部を納入していなかったとみられるということで、特捜部は詳しい経緯を確認したものとみられます。
つまり二階さんは派閥を通じてだけでなく議員個人としても記載していないお金を持っていた事になる。ただNHKは「事務所が」と言っている。つまり二階氏本人の責任になるかどうかはまだよくわからないということになる。
おそらく世間は「検察が二階さんを追い詰めてくれる」ことを期待しているのだろう。つまり立件・逮捕につながるべきだと考えているはずだ。となると「検察がおそらく裏金を持っているであろう二階さんを立件できなかった」時にむしろ大きな波紋が生じることがわかる。今の法律では裏金を作っていた人は逮捕されず裏金作りをさせられていた人だけが吊し上げられる事になるからだ。二階氏が立件されなかったところで世間が二階氏を許すとは思えない。
実際に過去の政治と金をめぐる問題でも「特捜が派閥の領袖にたどり着けなかった」と言うケースは存在する。例えばリクルート事件では中曽根康弘氏は立件されなかった。日歯連事件でも橋本龍太郎氏には辿り着いていない。だが中曽根氏は派閥と党籍を離れざるを得なくなり、その後中曽根派は単独派閥を維持できなくなっている。
派閥としての継続性が疑問視されている以上は岸田文雄・菅義偉・麻生太郎氏が主導する「政治刷新本部」に安倍派と二階派が参画することは難しくなったと考えて良いだろう。最低限派閥との縁を切らない限りは刷新の議論に参加できないのだ。
ただ、今の段階ではだれが「本部のメンバーになって具体的な対策を話し合うのか」が見えてこない。今後安倍派と二階派がどうなってゆくのか、また誰が刷新メンバーに抜擢され、誰が除外されるのかにも注目したい。