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「政治刷新本部」が作り出す新しい混乱 日本の政治は岸田政権の泥舟から勝ち組なき泥沼に突入

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岸田総理が「政治刷新本部」を立ち上げて自民党の党内改革に乗り出した。一般には菅義偉、麻生太郎両氏が顧問で木原誠二幹事長代理が事務総長を務めることで「期待が持てない」とされているようだ。個人的には面白くなったと感じた。政治改革は全く進まないことがあらかじめ予想されている上にさらに混乱するだろうからだ。岸田政権が泥舟だとすると泥舟から泥沼へということになる。

選挙はリセットボタンになっている。選挙がないことで勝ち組が生まれない。こうなると何も決められなくなる一方で内部闘争ばかりが激しくなる。あとは国民がどれくらいこの惨状に耐えられるかが試されることになる。泥にまみれて政治家同士が争うという意味では「泥レス」と言ってもいいかもしれない。

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別のエントリーでイスラエルの戦時内閣について書いた。比例代表制のイスラエルは政党が乱立してる。有力な政治家が個人政党を立ち上げ他の政党と一時的な連立体制を作るのが特徴だ。現在はこれが膠着し戦争を前提にした縛り合い状態に陥っている。

実は日本の政治状況も似たような状況に陥っている。ネタニヤフ首相の支持率は15%程度だとする世論調査がある。岸田総理の支持率も似たようなものである。とは言え「次」が見当たらない。小選挙区制度では連立が組めない野党はそもそも有権者の選択肢とは見做されていないため結果的に「派閥」が代理政党のような役割を果たしている。

日本の事情は極めて特殊だ。これまで勝ち組だった安倍派は会長経験者が相次いで亡くなった。結果的に安倍派は解体寸前の状態に陥っている。ここで選挙をやれば新しい体制が自ずと作られるのだろうが岸田総理の支持率が低いために選挙が行えない。これが結果的に膠着状態を生み出している。

イスラエルでは結果的に競争が抑制されて戦時協定が結ばれている。緊急事態の間は「選挙はやめましょう」「新しい法律も作らないようにしましょう」という一種の政治談合である。構造が似ているのだから日本でも同じような談合が行われる可能性が高い。おそらく岸田総理のいう「政治刷新」が思い切った改革につながる可能性はほぼゼロと言って良いだろう。代わりに勝者を作らないような縛り合いの体制が生まれるはずだ。

選挙はある意味「リセットボタン」の役割を果たしているが誰もそれを押せない。これが泥沼を生み出す。

麻生太郎さんの性格上も自民党がさらに混乱する可能性が高い。福岡で既に「福岡三国志」という状態が生まれている。人望がなくわがままな麻生太郎さんが福岡県政を混乱させており混乱はひどくなる一方だ。県知事選挙でも揉め、北九州市長選挙で争い、現在では福岡9区(北九州市の一部)で支部長が決められない異常事態となっている。麻生さんは意見は出すがそれが通らないと「俺は知らない」と言って黙り込んでしまう。このため状況が膠着し揉め事が起きてしまう。遺恨が蓄積され解消しない。

ポイントになっているのは地方議員のつなぎとめである。人望がない長老・領袖はポストとカネで縛っておくしかない。つまり派閥が解体されても「お金を使って地方議員を繋ぎ止めたい」という動機が残る。派閥はなくせるかもしれないが政治と金の問題はより悪化する可能性が高い。さらに長老の意固地な態度が組み合わされるとさらに状況が混乱する。森喜朗氏が安倍派を徹底的に破壊してしまったことからも長老が自民党政治にとって猛毒になっていることがよくわかる。

岸田総理の発言を聞いていると「お詫び」はしているのだが、派閥の解消、企業献金の制限や禁止、パーティーの禁止などには踏み込んでいない。

そもそも派閥の機能をめぐってはさまざまな意見が出ており見解が一致していない。

例えば石破茂氏は派閥は勉強会であるべきで罰則強化が一番の特効薬であると主張する。公明党も罰則強化に賛成の姿勢だ。「地方議員のつなぎとめ」をやりたい人たちはおそらくこの罰則強化には反対だろう。

一方で菅義偉氏は「派閥は会長を首相にしたいという人たちの集まりである」と主張している。こうなるとやはり人を多く集めた方が「勝ち」ということになる。菅義偉氏は「政策よりポストに執着するようになった」のでこれをなんとかしなければならないと言っている。一見もっともらしい主張ではある。

菅氏の発言の問題点は「では派閥の会長が首相になったら次は何を目的にすればいいのか?」と問えば見えてくる。

派閥は「首班闘争に勝つ」という当面の目標が達成されることで目的をなくす。だから勝った時点が頂点でその後には他派閥の動きを封じようとするようになるだろう。こうなると派閥の繋ぎ止めのためにポストを配るしかなくなる。さらにポストも配れなくなれば首相の名前を使ってお金儲けをする人を容認せざるを得なくなるだろう。これが安倍派とそもそも首班を目指さない二階派の問題だった。

菅さんはもはや構造問題を分析する意欲を持っていないのだろう。

今回の陣容を見ている限り「政治刷新本部」が有権者の期待に沿った解決策を提示するとは思えない。となると支持率は回復しないのだから選挙ができない。選挙ができないということは今の「誰も勝利者にはなれない」今のような状態がつづくことになる。

おそらく菅義偉さんと麻生太郎さんが「キングメーカー」になり爽やかな表紙(若手か女性)を担ぎ上げそれぞれ何人の大臣を送り込むことができるのかという競争を始めるはずだ。現時点では高市早苗、上川陽子、小泉進次郎氏などの名前が思い浮かぶ。

こうして首班が無派閥か弱小派閥という安定しない自民党政権が誕生することになる。これもできなければ国民に人気のない岸田政権が何も決めることができないという状態がしばらく続くことになる。

こうした状態を「面白い」などというのは不謹慎だということは十分にわかっているのだが、そうでも思い込まないかぎりこの惨憺たる状況を直視するのは難しい。あとは国民のストレステストである。つまり何も決められないことに苛立つか、あるいは「自分達には関係がない」やと考えて鑑賞に舵を切るかということになるのかもしれない。

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