このところイスラエルとイランの間に緊張が高まっている。要素はイスラエル国内とイランの双方にあり今後どう転ぶかが分かりにくい。今回ご紹介する記事を読んでも全体像は掴めないだろうが、とにかく状況が極めて好ましくない状況になっていることは感じていただけるだろうと思う。最初にイスラエルの状況をまとめ、続いてイランの状況と双方の衝突という順番で記事を並べた。
まずイスラエル情勢だ。
ネタニヤフ首相の司法改革を無効とする最高裁判所判決が出た。最高裁判所の権限を議会が奪うという決定なので最高裁判所が抵抗するのは当然だ。仮に国民が政府・議会を支持すれば司法改革は実現するのだろうが、ネタニヤフ首相への支持は落ち込んでいる。
新しいリーダーとして期待されているのはガンツ前国防相だ。極右はガザへの入植を進めるべきだとしている。イスラエルでは超正統派が増えておりガンツ前国防長官への支持も圧倒的なものではないようだ。
イスラエルの政治状況が不安定化すると当然当局は戦争がやめられなくなる。ネタニヤフ首相は戦争は当面続ける必要があると言い続けており、ガンツ氏も次のように発言している。外交には頼れないというわけだ。
イスラエルの戦時内閣に参加しているガンツ前国防相は27日、イスラエル北部の国境を巡る状況は変わらなければならず、外交に残された時間は少ないと述べた。
ガラント国防大臣も「多面戦争状態にある」と宣言している。イスラエルはさまざまな不安定要素を抱えつつ、当面「戦争継続」という認識でかろうじてまとまっている。
イランでは2020年米軍機攻撃で殺害されたソレイマニ司令官の墓所付近で爆発があり100名以上が死亡した。詳細はわかっておらず今後のイラン当局の発表が待たれる。
国際政治の専門家の間にハメネイ師が炎上しているという話が広がっている。「神が私の舌を通じて発言している」というハメネイ師の発言は当然「私が神である」という宣言と受け止められる。SNSでは嘲笑が広がっているようだがイラン当局は「外国の煽動である」と説明しているようだ。そもそもまともなメディアがないためイランの世論は掴みにくい。
イランでは経済的な不満が高まっており政府や政府を指導するイスラム体制に対する反発があった。スカーフの着用をめぐって風紀警察が女性を死なせたという事件では抗議運動も起きているが、当局はネットへの規制を強め暴発を抑えてきた。こうした潜在的な反発は今でも存在し燻り続けているものと思われるが、とにかく内部の状況がよくわからない。
ここまではイスラエルとイラン単独の話だった。イスラエルはイラン革命防衛隊のムサビ准将を殺害している。イラン側はイスラエルに対する報復を許可し緊張が高まっていた。
今度はベイルートで攻撃がありハマスの上級幹部(アル・アロウリ氏)が殺害された。軍事部門カッサム旅団の創設者の一人とされておりイランを後ろ盾とするヒズボラとのつながりがある。
今回アメリカに殺害されたソレイマニ司令官の墓所近くで起こった爆発の原因はよくわかっていない。イランの反体制勢力が活動している可能性もあるが、当然イラン当局としては外国がイランの体制を不安定化させようとしていると宣伝するのではないかと思う。
確実に言えることは何もない。
だが、イスラエルとイラン双方に体制に対する不満が高まっているのは確かなようだ。この不満を逸らすためには外に敵を作るのがもっとも有効な手段と言えるが当然のことながら世界情勢を不安定化させる。地域が「多面衝突段階」に入っていることは間違いがないが確実な構造が造られないまま緊張と対立がエスカレートしている。