ざっくり解説 時々深掘り

イスラエルがサイイド・ラジ・ムサヴィ氏を殺害 イランはイスラエルに報復を誓う

Xで投稿をシェア

シリアのダマスカス近郊で空爆がありイラン革命防衛隊(IRGC)サイイド・ラジ・ムサヴィ(Sayyed Razi Mousavi )氏が死亡した。シリアとイランの間での調整を担っていたという。かなり大きな事件だったようで、中東に関心を持つSNS のXのアカウントは相次いで懸念を表明している。

第三次世界大戦のような極端なことにはならないとする人が多いが情勢は確実に閣下している。イランのライシ大統領も報復を誓っているという。

そもそもどうしてこんなことになったのか。

Follow on LinkedIn

コンテンツのリクエストや誤字脱字の報告はこちらまで

|サイトトップ| |国内政治| |国際| |経済|






中にソレイマニ殺害以来の出来事だと言及しているものがある。ソレイマニ司令官はトランプ政権末期にアメリカによってイラクの首都バグダッドで殺害されている。この時もイランがアメリカに報復するのではないかなどと言われていたがそのようなことは起こらなかった。ただしイランとアメリカの関係は修復不能なまでに悪化しこれは現在も変わっていない。中東はある意味こうした状況になれていて「この程度のこと」で世界大戦に発展するようなことはない。だが状況は確実に悪化している。

現在攻撃の矛先は国家ではなく民間の船舶に向かっている。特に紅海は危険な状態になっている。アメリカは繁栄の守護者作戦という国際的スキームを作って地域の安全を守ろうとしている。現在の参加国は30カ国以上だそうだが、航行を停止する船舶も出てきた。CNNが伝えるところによるとアメリカは背後にイランがいるとみている。

ムサヴィ氏が殺される前からイランは「イスラエルのガザ攻撃を支援すれば地中海やジブラルタル海峡を封鎖する」と言っている。ロイターはレバノンやシリアなどの親イラン地域から遠いから実現する可能性は低いと見ているようだ。だが、周辺にはイスラム系の国が多いため西洋諸国に対する風当たりが強まれば状況はまた違ったものになるだろう。

地域が不安定化するかそれとも元のの状態に戻るのかはイスラエルの(正確にはネタニヤフ政権の)動向次第だ。

低支持率と司法改革への反発に苦しんできたネタニヤフ政権は攻撃を止めることができない。「ガザ地区の攻撃が終われば総選挙をやるべきである」とする声がある。政権を延命させるためには次々と面倒ごとを作り出すしかない状況だ。

アメリカの国務長官は「イスラエルは攻撃をトーンダウンさせるべきだ」と主張するが、ネタニヤフ首相はそれに応じるつもりがないようだ。むしろヨルダン川西岸地域や北部(レバノンやシリア側)への攻撃を強めており、戦線を拡大させる意向だ。

西岸では極右による暴力的支配が拡大しており、軍を代表するガラント国防大臣も「イスラエルは多面戦争の状態にある」と言っている。とにかく周辺のアラブ諸国がイスラエルを潰そうとしてるのだからここで手を緩めてはおしまいだというメッセージなのだが、むしろ混乱を作り出しているのはイスラエルの方である。ネタニヤフ政権では軍と極右が車の両輪になっておりしばらくその暴走は止まりそうにない。

ネタニヤフ首相にとってみればガザ地区の犠牲者など単に自分の政権を保持するための「統計的事実」に過ぎない。兵士の犠牲さえも「パレスチナ人の犠牲だけではなくイスラエルも犠牲を払っている」と主張するための道具のような扱いになっている。地上戦での犠牲者は154人になった。

大統領選挙を控えるアメリが合衆国がイスラエルへの支持をやめられないことはわかっている。つまり次の大統領が決まるまでが戦線拡大のチャンスなのである。バイデン大統領は手を緩めろとは言っているが戦争をやめろとは言っていない。エジプトが停戦案を提示したようだが交渉は不発に終わったようだ。ネタニヤフ首相はバイデン大統領に使いを送り今後の情勢について直接交渉している。アメリカの支援があればなんでもできるという万能感が支配して入る限りイスラエルの攻撃はまだまだ続くだろう。

イスラエルは財政支出を拡大させており赤字は想定の3倍に膨らむという。2月までに軍事作戦を終了することになっているが「今後の情勢次第で見通しを修正しなければならないとも付け加えた」とのことである。ガザ開戦の前から「イスラエルの「司法改革」を巡り、テック企業は首相と戦うか国を去るかの岐路に立たされている」という状態になっていた。テック企業がイスラエルを去ればイスラエルの成長に悪い影響が出る。

こうしてイスラエル経済は徐々に悪化している。

もともとのきっかけは超正統派の拡大だ。超正統派は聖書の教えを忠実に守っており出生率が極めて高い。人口構成上で優位になると当然民主主義に与える影響も大きなものになる。東京新聞に次のような記述を見つけた。

超正統派の人口は約120万人で全人口の約13%を占める。イスラエル民主主義研究所は、65年には約640万人、30%超に達すると予測する。総人口は50年までに現在より7割多い約1570万人に増えるとみられる。

「地に満ちた」彼らには当然住む場所が必要でありイスラエルは更なる領土を必要としている。

だがこのユダヤ至上主義の考え方は周辺のイスラム教徒との軋轢につながり今の緊張が起きている。特に西岸ではこの傾向が強くパレスチナ人を周辺国(ヨルダンとエジプト)に追い出して自分達だけでカナン地域を占有したいという願望を持っている。

超正統派は聖書研究が主な仕事だと考えており働かないため貧困率が高い。だが、政府は超正統派を保護している。これを支える働くイスラエル人たちはネタニヤフ政権の方針を嫌い海外に逃げている。その結果として戦乱が起きますます出費が嵩むという悪循環が生まれつつある。これが、現在のイスラエルである。

アメリカの民主主義もヒスパニック系の出生率の高さによって圧力にさらされているのだが、実はイスラエルでも人口動態の変化に起因する政治の変化が地域に大きな影響を与えているといえる。我々は確実に変化の時代を迎えている。

コンテンツのリクエストや誤字脱字の報告はこちらまで

Xで投稿をシェア


Comments

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です