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ビジョンなき岸田政権のもとで米軍の下請け化が進む

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大阪・関西万博で月の石を展示する計画が持ち上がっているそうだ。国家ビジョンを持てないため新しい番組が作れない国はついに「再放送」で枠を埋めることにしたようだ。

そんな再放送国家日本の船長である岸田総理が向かう先はどうやら米軍の下請け国家のようである。新しいビジョンが作れなくても支援者を食べさせてゆかなければならないのだから、せめて戦争の手伝いをして工賃をいただきましょうということになった。能力のない総理大臣を選んだ有権者にも責任の一端はある。

本来なら野党が大激怒しかねないテーマなのだが、今回はおそらくあまり大きな反応はないだろう。彼らもむしろ「左派」とラベリングされることを嫌っている。左右共に暮らしむきを良くする新しいビジョンを提示できなくなっているということがわかる。

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アメリカが消費したパトリオットミサイルを日本が補充するという方針が決まった。支持母体を増やしたい岸田総理としては軍需産業に仕事を与えて潤ってもらうという狙いがあるのだろう。こども支援のような未来に向けた政策は単なる政府広報の扱いだが支持母体関連となると岸田総理の動きはやたらと俊敏になる。生まれた時から現状維持という目標を背負わされている世襲政権が続く限り、未来図が描けず過去の支持母体に執着するという状況が続くのだろう。

アメリカはこの動きを歓迎している。ウクライナ支援では度々「欧米陣営の砲弾供給が足りていない」という話を聞く。弾薬供給が足りていないのはアメリカだけではない。NATOも「各国の連携ができていない」と苦言を呈している。ウクライナ防衛が終われば投資が無駄になってしまうので各国は投資をしたくない。むしろ需要が高まれば今の弾薬が高く売れるという目論みもある。戦争と市場主義の相性は良くない。国家総動員体制が作れた方が有利なため既得権を維持したい側の方が苦しくなる。

弾薬供給は「ライセンス国以外には移転させない」ということになっている。知財はアメリカが握っているために、ライセンス国は(NHKによると)アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、イタリア、ベルギー、スウェーデン、ノルウェーの8か国ということだ。つまり日本はこうした知財国家からライセンスを受けて下請けで工賃・手間賃をもらう国になる。

下請け化が進むのは弾薬供給だけではない。米軍と自衛隊の統合も進んでいる。まず下準備として自衛隊の陸・空・海の司令系統が統合されることになっている。表向き、サイバーなど陸海空に属さない作戦を円滑に実行するために設置されると説明されている。この「日本の自発的な取り組み」を支援するという名目でアメリカも自衛隊との協力関係を見直すことになる。具体的にどのような再編が行われるのかは見えていないが、自衛隊と米軍の指揮命令系統を一本化する狙いがあるものと思われる。アメリカは6月1日までに新しい計画を策定する。まずは情報共有などを見直すそうだ。

日米関係には二つの側面がある。1つは独立国としての二国関係だ。日米同盟も建前上は二つの国の共同パートナーシップということになっている。だが米軍と日本政府の関係は占領統治時代のものを引きずっている。むしろ日本側がアメリカの庇護を求めて独立を拒否しているような側面もある。世界情勢が不安定化する中「アメリカに守ってもらいたい」「自分達でリスクのある意思決定をしたくない」という気持ちもあるのだろう。アメリカからの再独立を夢見た世代は既になく、それを引き継いだ人たちはむしろ「アメリカに守ってほしい」と考えるようになった。自分達でビジョンを作った経験がないためどうしていいかわからないのかもしれない。

表向き日本の独立したパートナーシップを喧伝していた安倍元総理と違い岸田総理はむしろ進んで自主的な意思決定を諦めアメリカへの依存を強めている。今思えば国会審議なくバイデン大統領に「日本の防衛予算を二倍にします」と宣言したところからそれは始まっている。主従関係を構築することで安心したいのかもしれない。今回も国会に相談することなく移転を許可することにした。強制されているというよりはむしろ進んでやっている。

この気持ちは国際関係の複雑な変化に不安を感じる多くのサイレントマジョリティに共鳴されるはずだ。「寄らば大樹」である。BBCはこれについて「平和主義と現実路線の長年の葛藤の結果」と表現しているが、むしろ「もう考えるのが面倒だ」となってしまった結果と考えるのが良いのではないかと思う。

安心したいのは山々なのかもしれないが二つの懸念がある。まず今まで通りのアメリカに守ってもらいたいという人たちも支出が増えることは拒否している。防衛費増税の議論は2年連続で延期された。国会審議をしなかったツケと言ってよい。また、「アメリカ一択」も危険な選択になりそうだ。アメリカの民主主義が揺れているからである。

トランプ氏が大統領になるシナリオも現実のものになりつつある。おそらく依存が進んだ状態で「ディール」にこだわるトランプ氏が再選されればアメリカの庇護を高く売り込む戦略に転じるはずだ。

最もわかりやすいのがウクライナ情勢である。「民主主義を守るのだ」と鳴り物入りで始まったウクライナ支援だが戦況が悪化すると議会をコントロールできなくなってしまった。一方のユダヤロビーを引きつけておくためにイスラエル支援は強固なものになっている。だがこれは国内右派に引っ張られてガザの完全無害化を試みるネタニヤフ政権をコントロールできていない。

なお今回の決定は「ミサイル」の移転ができるようになっただけだ。拳銃と銃弾の関係でいうと「銃弾は輸出できるが拳銃はダメ」といういう段階である。公明党が「拳銃」部分の輸出には態度を決めかねているのだそうだ。池田大作氏が亡くなったこともあり「平和の党」の存続を望む古参の創価学会会員をどう説得するのかが課題になるのかもしれない。

今回、この問題について野党の踏み込みが足りないと感じる。野党の支持が伸びないのは「なぜ野党を支援すると我々の暮らしが良くなるのか」という将来ビジョンが提示できていないからだが、自分達の無能力ぶりを直視したくない彼らは「共産党などの左派色が原因だろう」と考える傾向がある。また旧社会党系・社民党系の連合も「市民連合を通じて共産党と結びつくことは断じて許さない」と言っている。この結果かつての平和主義・護憲運動は「反安倍」運動へと矮小化されもはや風前の灯だ。こちらも運動を主導した人たちがいなくなっている。

主な要因は世代交代だが、安倍政権の「ご飯論法」の影響はかなり大きかったと感じざるを得ない。政治的な議論は詭弁に絡め取られついに日本人は自分達の明日がどうあるべきかという議論そのものをできなくなってしまった。

風まかせの選択は実はかなりの出費を伴うのだがそれも考えたくない。昭和の再放送に終わりそうな大阪・関西万博の議論と日本の国防議論にはどこか通底するものがある。新しい絵を描ける人が誰もいなくなってしまった結果、ダラダラと国力が浪費されるような状態になっている。

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