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「武蔵野市を取り戻す!」自民党系新人が武蔵野市長を奪還 政治と金の問題は市長選に影響を与えず

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東京都武蔵野市で市長の辞職に伴う市長選が行われた。中央政界は政治と金の問題で揺れているが市長選には影響を与えなかったようだ。18年ぶりに自民党系の市長が誕生した。一方で菅直人元首相のご子息である菅源太郎氏は市議選に当選した。右派・左派共に実は世襲が好きと言うことがわかる。辞任した松下前市長は引退を表明した菅直人氏の地盤を引き継いで衆議院選挙を目指すとしている。外国人への地方参政権を導入しようとして右派からのいじめにあった経験があると言う人だ。

僅差の敗戦だったが、左派系野党は選挙戦略を練り直す必要がありそうだ。

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いまだにマスコミは「政治と金」の問題を大きく扱っている。だが日々のニュースを整理しているとこの話題に関する注目は日に日に落ちていると感じる。「政治がきれいになれば自分達の暮らしが良くなる」という連関が感じられないからだろう。むしろ「何のために働いているのかよくわからない」と言う記事に注目が集まる。日本が国家目標を消失しかけていることが窺える。

むしろ、今回の政治と金の問題は野党の失点になってしまうかもしれない。争点を作れなかった野党が必死に問題を大きくしようとしているような印象があるからだ。維新、立憲民主、国民民主、前原新党が言い争っているような印象もあり、却って「まとまれない野党」の印象が強まる。

松下前市長は衆議院選挙に出るために任期を残して辞任した。左派系は女性市議を候補に立てたが及ばなかった。とはいえ松下さんが信任されなかったと言うわけではないようだ。票差は僅か339票だった。

武蔵野市は杉並区に隣接している比較的裕福な地域である。市の東部は吉祥寺と呼ばれており人気の住宅街になっている。不動産情報サイトによると東京都の自治体の中で第八位という地域だ。比較的裕福で余裕があり学歴が高い人も多いとなれば当然市民運動に参加できる余裕のある人も多いと言えるだろう。左派系の支持母体は市民団体と企業労働組合だが武蔵野市は市民運動出身の菅直人元首相の地盤となっていた。学生運動から市民運動家になったという経歴の持ち主だ。

引退を決めた菅直人氏はこの地盤を松下前市長に引き継ぐことになった。松下さんは早稲田の大学院を修了し松下政経塾に入り市民運動を経験せずににそのまま都議会議員になっているが市民団体などから支援を受けている。

そんな松下さんは外国人参政権でネットいじめの対象になったことがある。条例制定に外国人を参加させる自治体は数としては少ないものの全くないと言うわけではない。だが左派系女性市長の提案ということでネットいじめの対象となり当時は「議論が乗っ取られそうになった」と戸惑いを隠せない市民たちの声も報道されていた。暮らしに余裕のある市内の人たちは落ち着いて議論をしたかったのだろうが不満を持っているサイレントマジョリティはそれに嫉妬心を燃やすのである。SNS時代の怖さを感じる。

結局、外国人の地方参政権は僅差で否決され今も成立の見通しは立っていない。今回もSNSのXではかなり激しいバッシング投稿が多くみられた。新しく市長になった小美濃氏は「凍結」が公約だそうだ。

今回の選挙で菅直人氏の「ご子息」の菅源太郎氏が市議選補欠選挙で当選した。松下さんの後継候補として立候補した女性市議の後継となる。菅直人氏は世襲を否定していたようだがやはり「お父さんそっくりの」若い源太郎さんを応援した女性支持者は多かったのではないかと思う。日本人が実は右派左派問わず実は世襲好きであると言うことがわかり興味深い。

今回の選挙を見ているといくつかのことがわかる。第一に日本人は政治とお金の関係がどうあるべきかという大きな議論ではなく目の前にある小領地の駆け引きに強く惹きつけられる傾向がある。次に「政治と金」の問題はそれほど大きな焦点になっていない。おそらく人々は「自分達の暮らしがどう変わるか」にのみ強い関心がある。これは日本だけでなくアメリカでも見られる傾向だ。理想を提示する民主党の政策は徐々に響かなくなっており、生活に困窮する人々の中には共和党支持に転じる人たちもでてきている。

自民党支持者たちは「極左から市政を奪還した」と喜んでいるようだが中央政界の政治と金の問題が解決したわけではない。むしろこれから次第に見たくない事実が次々と明らかになってゆくであろう。一方で左派政党も「なぜリベラルを選択したら国民生活が向上するのか」をきちんと説明できるように戦略を練り直すべきだろう。ただし連合の芳野会長は「共産党との連携を目指す市民団体が立憲民主党の手引きをするのは許せない」としている。共産党系と社会党系に分かれてきた労働運動の名残だが、自分達はふらふらと自民党に接近している。

この「器の小ささ」を修正しない限り左派系野党は次の政権の選択肢にはならないだろう。

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