菅官房長官が最近「もういいよ。オレは疲れた」と漏らしているらしい。週刊現代の引用なので真偽はわからない。根っからの苦労人なのに、育ちがいいだけで首相になった安倍首相やその他の無能な政治家たちのフォローに追われていることを考えると「わかるなあ」などと思ってしまう。
自民党議員の暴言が止まらないのは「安倍さんのお眼鏡にさえかなっていれば、それなりの地位を得られるから」なんだろう。ということで菅さんの政治資源は政治ではなく調整に費やされる。才能の無駄遣いだ。
菅さんはかなりの実力者らしい。Wikipediaには、単身で状況した後、法政大学就職課で紹介された議員の秘書となりその跡を継いだと書いてある。途中の横浜市議時代には既に「陰の横浜市長」と呼ばれていたそうである。根っからの調整役なのかもしれない。
どんなに優れた政治家でも、菅さんは「二球市民」にすぎない。親が衆議院議員ではないからだ。なかでも「貴族化」しているのが、総理大臣を輩出した家柄の人たちである。鳩山家・吉田家・岸家などがそれに当たる。だから、菅さんの地位は「執事」止まりなのではないだろうか。
総理大臣の家柄といってももともと格式の高い家だというわけではない。この家が貴族化したのは、ほんの70年ほど前の戦後直後の混乱期のおかげだ。そして、こうした家柄が貴族化できるのは、政治団体が非課税だからではないだろうか。彼らは会社の株式を引き継ぐように、親の代からの地盤看板が引き継げるのだ。
政治家は政治で蓄積した資金(そもそもそんなものがあること自体が問題なのだが)を政治団体に蓄積する。それは非課税なので相続税も支払わなくて済む。課税されるのは「政治活動以外の事業に使ったとき」だけだそうだ。つまり、政治団体は営利事業に手を出してはいけないのだ。いっけんよさそうな決まりなのだが、政治を通じて蓄財することは認められるということになる。寄付という形を取れば無税になるということだそうだ。ということで、自分たちは手を出さず、支持者に便宜を図る形で政治を歪める原因になっている。
日本伝統の家制度のもとでは、家族は財産を持った事業体である。それを管理するのが家長の役割で、信頼関係は血と婚姻関係で担保されることになっている。いついなくなるかもしれない他人は信頼されない。
この関係は同じく非課税の法人格である寺に似ている。寺は血族で運営されるべきだという決まりはない(後継者がいなければ宗派から別のお坊さんが割り当てられるだけ)のだが、実質的に家族経営だ。男系の後継者がいない場合には婿を取ったりする。こうした制度は家族の人生を保証するという役割も担っている。もし他人が入ってくると家族が冷遇される可能性があるのだ。家族には祖先もいるので、彼らのお墓が特別扱いされなくなる可能性もあるだろう。
つまり、家制度は家族や関係者の補償という極めて集団主義的な側面のある制度なのだと言える。逆に妙にやる気がある人が入ってきても、家の人たちが放逐されるかもしれない。そこで周りには無能で主人に依存せざるをえない人を配置することになる。ここでも才能のある人は排除されるのだ。
この結果、首相家を頂点にして序列化されたのが、現在の政治家なのだが、首相の子孫が優秀とは限らないし「政治家としてやりたいことがある」わけでもないかもしれない。安倍首相は政治家としてはやりたいことがなさそうだが、周囲から「おじいさんはこんなに偉い人だった」と吹き込まれ、復古派の人たちに囲まれているうちにあんなになってしまった。麻生副首相は、おじいさんのコスプレをしているようにしか見えないし、中身のないことをもっともらしい低く歪んだ声で語るのみである。
この空虚な首相家を支えるのが、大臣家であり、さらにそれを支えるのが「家柄のない」人たちなのだ。
だから、実力者だけでは上に上がれない。家柄のある人たちと張り合おうとすれば、何か法に触れることをして蓄財するしかない。そもそも選挙に出るにもお金がかかるわけで、一般庶民は政治から排除されている。
政治家がバカというのは言い過ぎかもしれないのだが、少なくともどうしてもやりたいことがあって政治家になったわけではないのだから、目的がある人と比較してモチベーションが低くなるのは当然だ。つまり「バカ」という能力の問題ではなくモチベーションの問題なのかもしれない。
日本を支配しているのは、政治家と宗教団体だが、ともに非課税である。これはもしかしたら偶然ではないのかもしれない。
一般庶民は、特権階級の彼らから見ると奴隷のようなものである。政治家の中にはは奴隷に人権があるのが不思議だと思ってらしい人たちもいる。
こうしたやる気のない政治家たちは、自由主義を名目にした植民地政策を画策する勢力と結びついて体制を保証しようとしている。一般庶民は政治へのアクセスがないので「私たちが共感できる政治家がいない」と政治に興味を持たないから、自浄作用も働かない。
では、今後どのようなことが起るだろうか。すでに、植民地化が進んでいるアメリカで何が起っているのかを見ると分かりやすい。サンダース・トランプ両候補は、中国との産業競争に破れたような地域で人気を集めている。こうした人たちは現実を見ない「非政治家」を応援するようになっている。
多分日本でも過激な思想が台頭することになるだろう。こうしたはねっかえりを防ぐためには「奴隷階層」から選挙権を取り上げ、情報を遮断し、教育を取り上げる必要があるが、それはそれでなかなか容易なことではなさそうだ。