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TPPとスナップバック条項

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TPPの批准手続きが延期された。現在の争点は解放される農業分野の補償をどうするかという点、交渉の経過が秘密手続きである点、著作権の問題などに絞られてきたようだ。
個人的な立場を確認すると自由貿易には賛成だ。関税は結局のところ消費者の負担となるからである。だが、TPPは容認できそうにない。一部の反対派の中に「スナップバック条項」について言及する人がいる。
スナップバック条項はアメリカだけに認められている特権だ。その他の国にはラチェット条項があり、一度解放してしまったら後戻りはできないことになっている。関税をなくし自由貿易圏を作るという意味では、効果的な条文だと言えるだろう。
だが、アメリカだけにはラチェット条項は適用されないらしい。議会が反対したり、様子を見た結果「アメリカに不利だな」ということになれば、差し戻しができるというのである。もし、フェアな関税撤廃が自由貿易の要点だとすれば、なぜこんな条項が必要なのだろうか。
どうやら、自民党は「聖域」と呼ばれる5項目を守れなかったばかりか、とんでもない不平等な条約を飲まされたということになる。例えていえば、不平等を飲まされた江戸幕府のようなものだということになるだろう。すでに統治者としての能力の限界に来ているのではないかと考えることができる。
しかし、本当に罪深いのは民進党かもしれない。民進党は表向きはTPPに反対するふりをしているのだが、実際には条約の中身には触れないようにしている。「政府が情報を開示しないから仕方がない」と言っているのだが、実際には反対したくないのではないかと思われる。だから、スナップバック条項のようなクリティカルな問題には触れない。あくまでも交渉過程が問題だと言っているのだ。
善意に解釈すれば、日本の条文について研究するのに精一杯で、アメリカの条項まで研究できていないという解釈が成り立つ。
一方、党内にいる親米派と左派の間で意思統一が図れないという可能性がある。そのために条約の内容に触れられないのだろう。
TPPに賛成している人たちの中には、親米派の人たちが多いのではないかと思う。自民党を支持していて、間接的に親米の人たちもいるだろう。しかし、中には内部からの改革が進まないから外部からの圧力によって規制緩和がしたいと考えている人たちも多いのではないだろうか。
だが、それはTPPが公平なルールであるという前提が必要である。このスナップバック条項が本当にTPPに盛り込まれているのかどうかは分からないのだが、もし仮に本当だとすれば、アメリカは自由公正な貿易権作りに失敗したと考えるのが妥当だろう。
安倍首相は「我々の手で自由で公正なルールを作った」と胸を張っている。もし、虚偽だと知っていてそう言っているとしたら詐欺師だし、知らずに言っているとしたらたいへんに滑稽だ。
さて、このような問題が起きるのはなぜだろうか。それはTPPに日本語の正文がないからだ。政府は日本語の公式訳を作って一定期間国民に周知すべきだ。正式訳作りに何年かかるのか分からないのだが、3年くらい野ざらしにしてもよいのではないだろうか。