玉木雄一郎代表がXで「自民党税調の記述からトリガー条項が消えた」と怒っているのを見かけた。わかりやすく梯子を外されたなと感じた。当初これをどう捉えるべきかと考えた。SNSを見ると腹を立てている人が多く、一瞬だけ国民民主党を応援したくなる。
だが、やはり「玉木雄一郎代表の政局勘がなかっただけ」ということになりそうだ。
常に危うい心理状態にある岸田総理が麻生副総裁らのアドバイスに従い連合を取り込もうとしただけの話だ。だが、公明党が「唯一の連立のパートナー」という特権が剥奪されることに危機感を感じ税調で抵抗したようだ。つまり、政策ではなく所詮は政局でしか動いていない。岸田総理がこの問題の調整に動くことはないだろう。林官房長官も傍観の構えである。
政治は国民そっちのけの政局で動いてゆく。次の投票行動にどう生かすかはその人次第だが今の政策不在の状況はそのまま事実として直視するべきではないか。
今回の削除は公明党が自民党に申し入れたことになっている。自公という枠組みに国民民主党が入り込むことを警戒したのだろう。麻生副総裁は党内政局という観点から公明党の影響力を弱めようとしている。
清和会系の安倍・菅政権では菅官房長官・総理大臣の影響のもと公明党・創価学会との関係は極めて重要だった。だが、状況は大きく変わりつつある。安倍派に裏金問題が浮上すると岸田総理と麻生副総裁の照準は直接安倍派に向かうようになった。岸田総理はついに派閥改革に言及した。動揺している安倍派抜きで1月までに改革をすすめるという。もともと清和会との度重なる軋轢の中で没落した宏池会としては千載一遇のチャンスなのだろうが、これは却って自民党全体を弱体化させると思う。いずれにせよ年末ごろまでは混乱した状態が続き確実なことは何も言えなくなるのではないだろうか。
確かに政策面を考えると二重課税を廃止することには意味が大きい。二重課税廃止が最も効率的に消費に働きかけるからだ。補助金にはさまざまな無駄が出る。ただ現実的には誰も政策の話はしていない。元々不安定な党内抗争をきっかけに登り詰めた岸田総理は会見で「もう先のことを考える余裕はない」と明言している。政策も選挙も見えない。今目の前にある政局に勝たなければならないということだ。
どのように次の投票行動に生かすのかはその人次第だがこの現実はしっかり見ておく必要がある。これが本来の政治の姿である。
検察の捜査の範囲が広範囲に及べば自民党は党外の勢力と結びつく必要が出てくるのだろう。だが、今の時点では先のことはよくわからない。検察の基準が明示されていないためすべては「検察次第」である。仮に検察の捜査が思った以上に広範囲だったということになれば国民民主党は自分達の議席を高く売れるのだろうし、検察と政権の間に何らかの妥協が成立すればその道は閉ざされる。
ただ「今現在」を考えると玉木代表の作戦は失敗している。
まずは維新に議席を献上してしまった。馬場代表は前原氏の一派を欲しがっていたようだ。前原氏も代表戦の敗戦の結果党を出るための口実を必要としていた。結果的に新党結成ということになった。議席を維持し政党助成金を確保するというやり方は民主党・民進党・国民党・国民民主党と続いてきた彼らの伝統芸と言って良い。新党結成の発表を行ったのは馬場維新代表だった。現在は共同会派を作るという動きになっている。
直近の時事通信の調査では岸田内閣の支持率は17%まで落ちている。注目すべきは政権への対立姿勢を強めている立憲民主党が受け皿になっていることである。日本維新の会への支持は減っている。万博の経費膨張の主犯とみなされているのかもしれない。そして補正予算に賛成した国民民主党は受け皿になっていない。
政党支持率は自民に続き、立憲民主党が4.4%(前月比1.7ポイント増)で日本維新の会の3.2%(同1.4ポイント減)を上回った。公明党は2.8%(同1.3ポイント減)。以下、共産党1.9%、れいわ新選組1.5%、国民民主党1.1%、参政党0.4%、社民党0.3%と続いた。みんなでつくる党はゼロ、「支持政党なし」は62.5%だった。
少なくとも「今の時点では」という前置きがつくのだが、玉木代表と国民民主党は単に行き場を失っている。連合をめぐっては立憲民主党と軋轢があり、自公連立入りは公明党が許さない。さらに維新は玉木氏のライバルだった前原氏と話を進めてしまっている。今後彼らがどのような選択を行うかはおそらく検察の捜査によって大きく影響を受けるだろう。