米ニューヨーク大学のロバート・ジャクソン・ジュニア氏と米コロンビア大学のジョシュア・ミッツ氏が興味深い分析を出している。BBCの報道だ。ガザ危機が起きる前にイスラエルの経済情勢が悪化することを事前に掴んでいたらしい投資家たちがいるという。
【訂正】コメント欄で指摘がありISAは調査を打ち切ったそうだ。通貨単位の扱いに間違いがあるというのがその根拠である。BBCは元記事を訂正して追加の記事を出しているが「誤報だった」とまでは断定してない。なお日本語に翻訳されている記事には訂正の情報は含まれていないようだ。
これについてはイスラエル当局は捜査を始めると言っている。何の罪にあたるのかはよくわからないのだが投資家たちが掴んでいた情報をイスラエルやアメリカの情報筋がなぜ掴めなかったのかという議論にもなりそうだ。
ネタニヤフ首相にはイスラエルの国内からも批判が集まりつつある。これをかわすためにもネタニヤフ首相はとにかく前に走り続けるしかない。止まったら転倒するという意味ではバイクか自転車に似ている。結果的にガザ地区に住んでいる人たちの8割が家を失ったそうだが事態は今も悪化の一途だ。
問題になっているのは、借金をして自分が持っている以上の金融商品を買う「空売り」という手法だ。よほど確実な情報がなければ空売りには踏み切れないことから「おそらく何らかの情報を掴んでいたのではないか」という類推につながる。
イスラエル証券庁は事態を重く見て調査に乗り出したという。インサイダー取引の類なのだが「国際的な法的禁止規定の隙間で生じていた」と指摘されているように直ちに違法とは言い切れない。それどころか当然イスラエル情報当局やアメリカの情報当局が何をやっていたのだという批判につながりかねない。
既に、エジプトの情報当局が事前に情報を掴んでいたがネタニヤフ首相側はこれを無視したなどと言われている。仮に投機筋が事前に情報を掴んでいたとするとちょうどこの時期に当たることになる。極秘情報ではなく「知る人ぞ知る」という感じだったのかもしれない。
確かに軍事的にハマスが劣勢であることは間違いがない。だがこれがイスラエルの勝利につながると考えるのは早計だ。
イスラエル国内において、ネタニヤフ首相を支える危ういバランスは崩れつつある。あるいはもう崩れていると言ってもいいのかもしれない。
汚職疑惑に揺れるネタニヤフ政権は超正統派と呼ばれるユダヤ系の人たちに支えられてきた。彼らは働かずユダヤ教を実践する。中絶も禁止されているため出生率が高く数が増えていると言われているそうだ。極右と呼ばれることもある彼らは「西岸地区もユダヤ人のものである」と考え西側諸国が主張する二国家併存に反対している。またアラブ圏という敵に囲まれていることから軍の力が非常に強い。
最近問題になっているのはガザ地区ではなく西岸の治安悪化だ。ガラント国防大臣がこれを非難している。もともと、ネタニヤフ首相が西岸の治安維持の権限を極右に渡したという経緯があり、そもそも折り合いが悪かった。ガラント氏はネタニヤフ首相の司法改革にも反対していて一時「内閣を離れるのではないか」とされていた。首相と極右が結びつくことに嫌悪感があるのだろう。
ついにアメリカもこの情勢を無視できなくなり治安悪化に加担した個人にビザを発給しないという対抗策を打ち出さざるを得なくなった。
ネタニヤフ政権がかろうじて転倒しないのは「自転車原理」によるものである。ネタニヤフ氏が立ち止まればおそらくそこでゲームオーバーになる。
ネタニヤフ氏の出した作戦はおそらく軍にガザを統治させ西岸を極右に統治させるというものなのだろう。ハマスが武装解除した後はイスラエル軍(イスラエル政府ではなく)がガザが管理すべきだと言い出した。自分が政権を担当している間はパレスチナ自治政府には統治させないと言っている。ヨーロッパも中東も早期の二国家併存を望んでいるためアメリカは「イスラエル軍の駐留は一時的なもの」と苦しい釈明で擁護するしかない。
とにかく走り続けるしかないネタニヤフ首相は人質家族に対しても「どっちみち全員が帰ってくることはない」と発言し反発されている。憤慨のあまり会場を立ち去る人もいたそうだがもはやそんな「小さなこと」に構っていられるような状況ではなくなっている。
さらにガザにいる190万人がすでに住む家を奪われたとする報道もある。ガザの人口は220万人である。つまり域内にいる人たちの家が根こそぎ破壊されてつつあるということだ。エジプトは難民がエジプトに流入してくることを恐れていてラファゲートを解放していないため、彼らには逃げ場がない。
つまり、第二次世界大戦終戦以降前例がないような民間人虐待(ぎゃくたい)が続いているということがいえる。
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