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自民党税調が順調に暴走 法人税増税議論で岸田総理の「賃上げ理論」が破綻の危機

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国会終盤になりパーティー疑獄にばかり注目が集まる。岸田政権は経済政策立案の中枢を安倍派に依存しているため調整機能が崩壊している。沈静化は早くても年明けになりそうだ。

そんななかTBSが「自民党税調で法人税増税議論が進んでいる」と小さく伝えている。あまり目立たない報道だ。

岸田政権は法人税減税で企業に余力が生まれるので賃上げがやりやすくなると説明していたが、税調では「法人を優遇しても内部留保を溜め込むばかりなのだから税金として取ってしまえ」という議論になっているそうだ。つまり、岸田政権の提唱してきた賃上げ理論は早くも瓦解しつつある。もちろん経済界は反発している。

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TBSが小さな記事を出している。

本来、賃上げは企業の生産力向上にによってなされるべきだ。そのためには効率の悪くなった企業を退場させるなどの政策が必要になる。また構造改革を阻んできた階層型の人事慣習をフラットに転換するなどの対策も必要になるだろう。企業が率先してそれを行わないなら政治の側から働きかける必要がある。

だが岸田政権はそれを行わず「法人税減税で賃上げを誘導する」とのみ言ってきた。つまり減税が唯一の「ニンジン」になっている。企業側も法人税増税につながる議論は避けたいので「労働組合と協力して賃上げを行う」などと表明しており、少なくとも表向きは政府に協力する姿勢を見せてきた。いずれにせよ賃上げさえ起これば、経済の好循環が回り出すため、将来の防衛費増強のための増税や少子化費用対策なども「実質的な負担増」がなくなるという理論構成になっている。

ところが、パーティー疑獄で政権が混乱状態に陥ると各機関の相互調整が機能しなくなる。結果的に自民党税調は独自で「将来法人税を増税します」と言い出した。

これまで共産党が賃上げの原資として指摘していたとき、保守の人たちは「内部留保は次への投資なのだ」とか「そんな会計用語はない」などと擁護してきた。

だが、今回は自民党税調が「内部留保」を問題視している。共産党と自民党税制調査会の違いはその差し出す先だ。共産党は労働者に分配しろと言っていたが自民党税調は税金として差し出せといっている。

財界は政府からは「ニンジンをあげますから賃上げしてください」と要請され自民党税調からはでもそれもいずれは取り上げますからねと仄めかされている。

もう一つ気になるのが実際の経営者の声である。今聞こえてくるのは経済団体のトップの声ばかりで実際に経営者たちがどう考えているのかはよくわからない。

ロイターが企業調査をしているが、6割が3%未満の賃上げしかできないと回答している。内部留保を溜め込んでいる大企業もあるが困窮している企業もあるという平均値では語れない状態になっている。ロイターの調査はかなり詳細で読み応えがある。

この調査を見る限り問題は二極化にあるのだろう。政府が取り組むべきなのは儲け過ぎている(あるいは儲けた分を投資に回せなくなっている)企業が溜め込んでいる資金を困窮している企業に環流させることなのだろう。だが、現在の政府にはこうした総合的な経済政策を実施する主体がない。また、パーティー疑獄で政権と与党が内部崩壊状態に陥っているため、おそらく年末・年始にかけてまともな政策議論が行われる見込みもなさそうだ。

税制大綱は来週にもまとまるとされているそうだ。年明けには大物の逮捕もあるかもしれないなどと言われており、かなり混乱した中で増税と減税議論が入り混じったわかりにくい本予算の審議が始まることになりそうだ。

おそらく、これに気を揉んでいるのが植田日銀である。植田総裁の発言で円高にふれている。つまりいよいよ金融政策が変更されるかもしれないという予測が出ているのである。

植田総裁は「年末から来年にかけて一段とチャレンジングに」と緊張感を滲ませている。日銀の金融政策・政府の経済政策・企業の賃上げがシンクロしないまま進行すると誰も経済の先行きについて予測することができなくなる。つまり賃上げが行われないまま物価が高止まりし金利も上がり始めるという状態になる可能性があるのだ。賃上げが伴わない金利上昇という状況が作られると支出を抑制する消費者はますます増えるだろう。

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