岸田総理が党に対して調査を命じた。特捜部のターゲットが安倍派と二階派に集中しており焼ければ焼けるほど岸田派・茂木派が有利になるという考えがあるのかもしれない。政権交代を求める声が上がらなければそのまま「岸田派の焼け太り」という展開も予想される。
岸田派はここで憲法改正議論を主導して保守派を簒奪したいところだが憲法改正議論の主流派はあまり乗り気ではないようである。このため保守派の離反も懸念される。
リクルート事件以来の疑獄事件という評価も出つつあるがそもそもリクルート事件を知らない人にはピンとこない表現なのかもしれない。国会閉幕後の13日以降に捜査が進展するであろうと言われている。
税制調査会では増税議論が始まったが「疑獄」報道に隠れてマスコミの注目は集まらないだろう。そのまま通ってしまう可能性が高い。政調会長が押し返したいところだが萩生田政調会長はそれどころではないだろう。
マスコミに出ている情報から特捜部のターゲットは安倍派と二階派であるということがわかってきた。メディアに対する情報提供は政権にもシグナルを送っている。
細田博之前衆院議長がなくなり全容がわからなくなっているとみられる安倍派は特に混乱しているようだ。高木毅国体委員長が現在の事務総長をしており全容解明を急いでいる。また松野官房長官も過去に事務総長をしており、官房長官としての機能を果たせなくなっている。キックバック、裏金、10人ほどが対象かなどの情報が飛び交っている。冷静に考えればキックバック=不正行為ではないがそもそも全容が誰にもわからないので防御のしようがない。
安倍政権時代しか知らず「清和会こそが本来の自民党である」と考える現役世代はおそらく宏池会から清和会への党内政権交代を望んでいたはずだ。つまり「あるべき姿」に回帰してほしい。安倍総理の後継になる人が颯爽と現れて宏池会と財務省が「画策」する高負担路線を食い止めてくれるのではないかと期待する人も多いのではないかと思う。
だが、実際には炎上すれば炎上するほど彼らの期待とは逆の方向に話が流れてしまう。むしろ岸田派と茂木派が有利になってしまうのである。このため岸田総理は派閥ではなく党としての全容解明は指示しつつ、具体策は何も示さないという方向で「事件を燃やす」方向に舵を切り始めたようだ。
田崎史郎氏などはリクルート事件以来の問題になるとしているが、そもそもリクルート事件を知らず、政治家がクリーンであるべきだとも考えていない人たちにとってはよくわからない例えでしかないのかもしれない。いずれにせよ政治記者たちの方が世論よりも事態を深刻に受け止めている。
野党に支持が集まっていれば自民党の大炎上は政権交代の危機となるのだろうが、野党への指示も集まっていない。つまり低支持になった方が岸田総裁の続投に有利という極めて皮肉な状態が生まれつつある。
岸田総理はこの機会に保守派を安倍派から引き剥がしたいのだろう。憲法改正議論を加速させ保守派を取り込もうとしている。しかし自民党憲法改正議論を主導している人たちは実は与野党協調路線だ。この路線を作った中山太郎氏は既に亡くなっているが、後に残った人たちは憲法改正議論を政局利用されることを嫌っている。ここでうっかり岸田総理に乗ってしまうと「岸田丸」と一緒に沈んでしまう可能性もある。時事通信は次のように表現する。
自民が首相のかけ声に呼応しない背景には、政権の先行きが危ぶまれ、改憲への見通しが立たない中、野党第1党との協調を重んじてきたこれまでの「伝統」を崩すわけにはいかないとの判断があるようだ。与党筆頭理事を務める自民の中谷元氏は先月30日の衆院憲法審で「首相が発言しようがしまいが、各党が議論して決めるのがルールだ」と強調した。
改憲派の人たちはむしろ政局利用を嫌って抵抗している。彼らは彼らで落ち着いた環境で憲法議論がしたい。
安倍派の復権にも期待できなくなり、憲法改正に望みを持つことができなくなった「保守」の人たちが次のどの政党に行くのかに注目が集まる。
受け皿の第一候補は維新だが万博を見る限り「結局は無駄遣い政党なのではないか」といううっすらとした疑念が浮上している。憲法改正を主導することで影響力を維持したいと考えるだろうが保守派の判断は分かれるかもしれない。国民民主党に至っては前原氏の離党騒ぎで地方に困惑が広がっているという。前原さんたちは維新に行くが地方組織の人たちは国民民主党に残るようにと指示されたという話も伝わる。地方組織は切り離されてしまったのだ。
冷静に考えれば高負担の押し付けや公共事業推進の「臭み消し」として改憲議論が利用されているという側面がある。つまり、これまで憲法改正に前向きだった支持者たちはそのまま政治に興味を失うかもっと過激な政党に流れるのだろう。
いずれにせよ岸田政権がどんなに低支持になっても「他の選択肢を探すのは面倒だ」という空気が残っている限り、人気がさほどない政権がそのままダラダラと存続する可能性が生まれている。
メディアの関心が疑獄事件に向かう中、税制調査会の増税議論にはさほど注目が集まらずそのまま通ってしまう可能性も大いに出てきた。防衛増税について2年でやるか3年でやるかという二択の議論になっている。また、所得減税については富裕層を外す方向で検討に入った。つまりできるだけ多くとって少なく返すという議論になっている。本来ならば政調会長レベルで押し返したいところだろうが萩生田政調会長は安倍派である。おそらくそれどころではないだろう。
国民生活から「ゆとり」が消えているという調査があることを考え合わせると理不尽で悪夢のような展開だが、これが現在の治的現実である。