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「そろそろガソリン高に慣れていただく必要がある」と萩生田政調会長

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防衛増税が2025年から2026年ごろから実施されることが決まりそうだ。既に増額規模は決まっているのだが、これを2年かけて支払うか3年かけて支払うかという「二択しか無い」との主張になっている。

トリガー条項凍結解除についても税制調査会では扱わず「補助金をやめるときに実施できないか」という線でおいおい検討するそうだ。既に国民民主党の取り込みは終わっておりもはや用済みの議論という扱いだ。

萩生田政調会長は「ガソリンの価格は高止まりが予想される」ので「ある程度の価格を受け入れるように」と国民に要求している。いつまでも税金で支えきれないということなのだろう。

もう少しオブラートに包んだ打ち出しをするのではないかと思っていたのだが、意外と直球で「負担増」を求めている印象だ。

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“ガソリン減税”自公国が会談 あす以降実務者が協議へ トリガー条項凍結解除は?(TBS)が次のように伝えている。

TBSの表現はやや上品なもので「ある程度で慣れていただく」ということになっているが、そもそも激変緩和策なので「いつまでも政府で面倒は見ていられないんだからこれを受け入れろ」と言っていることになる。TBSの表現は次の通り。お願いではなく「必要」と言っている。

ガソリン価格をめぐり、自民党の萩生田政調会長は“原油高は恒常的になっていて脱炭素なども考えると、ある程度の金額には国民にも慣れていただくことが必要”との考えを示しています。

トリガー条項の凍結解除については税制調査会では扱わない方針だ。元々国民民主党取り込みのために設定されただけのアジェンダに過ぎない。国民民主党は既にルビコン川を渡った状態なので、自民党としてはまともに取り扱うつもりはないのだろう。逆に補助金を止めるための理由づけに利用したい考えである。

宮沢氏の税制調査会ではトリガー条項は扱わない。また萩生田氏の政策調査会ベースでも「激変緩和策が終わった後に改めて考える」ということだ。激変緩和策なんだからいつまでもやっていられないし、原油の価格がどうなるかもわからないのだから「いい加減に受け入れてくれ」と言っている。萩生田政調会長は「減税があれば一定の評価になるだろう」と言っている。つまり今はいろいろなんだかんだと言われているが夏に減税を受け取ればみんな忘れるだろうと考えているようだ。

一方の防衛増税については具体的な時期が出てきた。こちらは年末までにフィックスしておきたいという気持ちが働いている。取るべき総額は決まっているがこれを2年払いにしますか3年払いにしますかと言っている。つまり2年払いにすると1年間の負担はより重たいものになる。「これしかない」と言っており、二者択一を迫っている。具体的には法人税、たばこ税、所得税の3つで1兆円の予算像を当て込む。

 自民党税制調査会の宮沢洋一会長は30日、防衛費増額に伴う増税開始の時期について、「2025年から3年間かけてという選択と、26年から2年間かけてという選択しかない」との2案を表明した。

既に鈴木財務大臣は「トリガー条項の話を私は聞いていない」と言っている。また国民民主党の提案したブラケットクリープ対策についても検討しないと明言している。とにかく今はより多く取る議論をしているのだからそれを減らすようなことは考えたくないというのが本音なのだろう。聞いていないのだから検討する必要もないということだ。

岸田総理の頭の中には「政府の覚悟に感銘した財界と労働組合が賃上げをやってくれるはずだ」という見込みがある。賃上げが起これば好循環が回り始めるはずなので全ては丸く収まり政権支持率が上がり始めるだろうというのが今の計画である。

ところが、これは少なくとも日銀はそうは思っていない。日銀の判断は極めて冷静で「中小企業が賃上げについてくることができない可能性が高い」と分析している。「無い袖は振れない」という評価だが、おそらく多くの経営者の実感に近いのだろう。

来年の春闘での賃上げを巡り、大手企業ではリーマンショックを経て事業構造の転換が早く進んだ結果、「賃上げに向けた意思表明もけっこう出てきている」とする一方で、中小企業では「無い袖は振れない」とする声もあり、「平均値は今の状況では分からない」と述べた。

公明党も同じ考えだという。物価高によるインフレが始まっており大企業の中にはその風に乗ったところもあるが、内需だけはいまだにデフレが続いているという二極化した状態にあるという認識が共通している。

国民民主党はルビコン川を渡ってしまい、前原誠司氏と嘉田由紀子氏など4名の議員を失った。こうなると後は自民党についてゆくしか無いだろう。前原氏は「教育無償化」のワン・イシュー政党になるそうだが「維新との合流を狙ったものかもしれない」とする分析が出ている。まとめると次のようになる。政党要件を満たすために滋賀の無所属議員を1名加えて政党にしている。

  • 政党助成金のためには5人でなければならず
  • 政党助成金の算出日である1月1日までに政党を作っていなければならない
  • 維新に直接移籍すると比例議員が要件を失う
  • ワンイシューなのは維新への合流を目論んでいるからではないか?

小沢一郎氏の時代から日本にも保守の二大政党制を作りたいという構想がある。だが実際には国家ビジョンを提示することができる政党はいまだに出現していない。岸田文雄総理の「新しい資本主義」にも中身はないが、前原氏も新しい国家ビジョンを立てることができず維新の政策の一部を切り取って親和性を持たせたものと読み取ることができる。つまり政策などなんでも構わないのだから最もわかりやすい無償化を選んだということになる。前原氏に支持が集まらないのは「国民にはその程度の理解力しかないだろう」と考えているからなのではないかと思える。

前原氏の行動は「関西では維新の風が吹いている」という状況判断に基づいたものなのだろうが東京都で小池百合子氏に接近した時も合流に失敗した前歴がある。維新は万博擁護の姿勢で離反が出始めておりこの先も勢いを維持できるのかの正念場にある。希望の党騒ぎの繰り返しにならなければいいがと感じる。

いずれにせよ自民党は国民民主党の取り込みに成功したことになり「トリガー条項凍結解除」は一定の役割を終えた。後は背後にいる連合を自民党に取り込むことができるのかに注目が集まる。

国民生活は「ゆとりを失った」と考える人が増えているという統計もあるが、岸田政権の経済政策は「賃金上昇が起こるといいな」という希望的観測にのみ支えられたあやふやなものになっている。一方で税金を取る側の人たちは経済状況がどうなろうが2026年までには防衛増税を始めたい。そんな状態の議論が始まったということになる。

日銀の分析を採用すると、海外に資産を持っている大企業と内需の間に乖離があり、内需主導経済だけはデフレ状態が続いていることになる。おそらく内需主導経済はかなり厳しい状態に置かれ国民の生活実感は著しく悪化することになる。つまり萩生田政調会長はそういう状態をいい加減受け入れろと言っているのだろう。その言い方は理解を求めるものではなく「慣れていただく必要がある」と要求になっている。

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