6人を乗せた米軍のオスプレイが屋久島沖で墜落した。1名が救助されたそうだがその後死亡が確認されている。沖縄の問題としての報道が目立つが本土にも飛行区域が設定されており自衛隊も配備している。自衛隊のオスプレイは佐賀県と千葉県木更津に配備されており、佐賀の訓練飛行は見合わせが決まっている。安倍政権になって導入が決まったという印象があるが、実際に検討を始めたのは民主党政権時代だったそうだ。岸田政権は新たな火種を抱えることになったが米軍オスプレイの運用は「日米合同委員会マター」であり国会に報告したり承認を求める法的義務がない。岸田政権はこの全容を国民に報告できないので、選挙対策で頭がいっぱいになっているバイデン大統領の配慮がなければ全ては米軍の対応次第ということになる。
まずは毎日新聞に掲載されている目撃者の証言から。目の前で飛行している物体が上下逆転したのだからさぞかし怖かっただろう。
農業の平田耕作さん(68)は現場のそばにある岬の岩場で釣りを1人でしていたところ、島を一度離れたオスプレイが再び戻ってきて、屋久島空港に向けて下降してきたのを見た。「問題なく飛んでいる」と思っていたところ突然、機体が180度ひっくり返り、次の瞬間左エンジンから火が出て「ドーン」と爆発し、プロペラがはじき飛ばされた。その直後、間を置かずに機体は海に真っ逆さまに落ち、海面から黒煙が立ち上っていたという。
陸上でなくてよかったという気はするが、目撃が可能な近海だったせいで危険性は注目されることになりそうだ。
時事通信をもとに状況をまとめる。オスプレイが墜落したのは屋久島の東1キロの沖合。墜落したのは29日の午後2時40分ごろ。米軍横田基地所属だった。岩国から嘉手納に向かう途中だった。6名が搭乗しており1名を救助したがその後死亡が確認されている。
自衛隊の導入の時に安全性が疑問視されていたこともあり政府は問題をあまり大きくしたくないようだ。米軍に倣って「不時着水」という表現を使っている。防衛副大臣は最後まで頑張って着陸させようとしていたようだと理解を示している。どちらかというと国民の安全よりも米軍を慮った印象であり「どこの政府の人なのか」という気がする。とっさの際につい普段の優先順位が出てしまったのだろう。事故は起きたのだから「努力賞」はあげられない。
米軍も「不時着水」の用語を使っているといい、宮沢博行防衛副大臣は同日、記者団に「最後の最後までパイロットは頑張っていたということだ」と理解を示した。
問題になりそうな点はいくつかある。
1つはそもそも米軍から情報が降りてこないという問題だ。今回もおそらく安全保障の懸念がという理由で政府は説明をしないのではないかと思うがおそらく「米軍から情報がもらえていない」ことを説明できないのだろう。米軍は日本の国会に運用について報告しなくていいことになっている。
また、沖縄の問題として語れることが多いオスプレイだが「山岳地帯に限って」という条件付きではあるが日米合同委員会で訓練飛行の許可が出ている。つまり同様のことは本土でも起きる可能性がある。少なくとも夏の報道では飛行区域は明らかになっていないとされている。国会での承認は必要なく、地元自治体への説明の予定もない。ある日突然オスプレイを目撃して騒ぎになるという山間自治体が今後出てくる。
最後に自衛隊に導入された経緯も改めて問題になりそうだ。安倍政権で推進されたという印象があるが、実は検討を始めたのは民主党政権だったそうだ。政権交代直後に日経新聞が次のように書いている。
オスプレイの導入を巡っては、野田政権時に玄葉光一郎前外相の提案を受け、森本敏前防衛相が導入の可否を検討するよう指示していた。安倍政権でも日米同盟を強化するとの観点から調査費計上の方針は引き継ぐとみられる。
その後も「安全性は確認されている」という説明が続いたが、「そもそも何に使うのかがよくわからない」という疑念があり検討が拙速だったのではないかという評価があった。
つまりアメリカ側からなんらかの要求がありそれに押されて導入ありきで検討が進んだ可能性がある。現在の立憲民主党はいわば当事者でありどこまで岸田政権に情報開示を求めることができるのかに懸念がある。
オスプレイは自衛隊の佐賀と木更津に配備されている。佐賀の訓練飛行はしばらく見合わせられることになる。
岸田政権の支持率が低迷しており新たな懸案事項になる可能性は極めて高い。特に日本での飛行区域設定は国会の承認はおろか報告さえ必要ない日米合同委員会で決められている。つまり、国会で十分な質疑が行えない。
国会が日本国民に説明できないことも問題なのだがアメリカの外交官たちも頭を痛めているのではないかと思う。厳密に言えば日米合同委員会は米軍利権であってアメリカの外交利権ではない。日本側は外務省の北米局長が代表するが折衝相手は大使ではなく在日米軍の副司令官が当たることになっている。
岸田政権の新しい懸念材料になるかならないかはおそらく今後の米軍の対応にかかっている。日米合同委員会の成り立ちからもわかるように、日本政府が外務省を通じて米軍にお願いするというような性質があるため米軍の対応はかなり強気だ。過去の経緯から沖縄県を除く日本国民が強烈な反米感情を持つことは考えにくいが常に反米感情が盛り上がる危険性は孕んでいるわけでアメリカの外務筋も頭を痛めているのではないだろうか。
エマニュエル駐日大使は「迅速な日本の協力に感謝したい」とのみ述べている。落ちたのは「アメリカ」のオスプレイなのだが彼にはおそらく決定権はないのではないかと思う。ただ一般の人たちから見ればあくまでも「アメリカの」オスプレイなのでエマニュエル駐日大使のどこか他人事のような対応も今後問題になるのかも知れない。
アメリカのエマニュエル駐日大使は29日夜、都内で開かれたイベントの中で「数時間前にオスプレイが墜落したという情報が入った。現時点では詳細は不明のままだが、乗組員に代わって、自衛隊そして米軍の迅速な対応に感謝したい」と述べました。