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「賃上げが起きれば全部OKなのでそれ以外の対策は考えません」と岸田総理が答弁

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国民民主党の浜口誠議員がブラケットクリープについて質問していた。インフレに合わせて所得税のテーブルを見直さないと税収増が先行して負担感が軽減しないという現象を指す。アメリカではIRSが毎年インフレの様子を見ながら税率の調整を行う。調整の意味合いもあるが実質的な減税のためにも用いられている。所得税調整が行われるために付加価値税(日本で言えば消費税のようなもの)の議論に関心が集中することはない。

岸田総理は「現在は賃上げに向けて努力をしておりそれ以外のことを考える段階にはない」と答弁していた。この後の答弁でも賃上げが実現すれば全ての問題が解決すると思い込んでいる様子が窺えた。

だが、最終的にまとまった質疑内容の記事を見てもこの辺りの表現は全て省かれている。おそらく報道記者たちもブラケットクリープなどの仕組みを勉強していないのだろう。

国民の経済実感は急速に悪化しているが総理大臣の現状認識に危機感は感じられない。消費税減税には極めて後ろ向きでありトリガー凍結解除も4月以降の実施を念頭に置いているようだ。今、目の前で物価高騰が起きていて国民の不満が高まっているという認識はないものと思われる。まとまった生活実感調査が日銀の資料以外にはないうえに、総理大臣も経団連の会長もおそらくスーパーマーケットで買い物はしていないからだろう。

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国民民主党の浜口誠議員がブラケットクリープについて質問していた。この議論を消費税減税につなげたくない鈴木財務大臣は「増税の原因はいろいろある」として分析を避けていた。岸田総理は「指摘に反対するわけではないが、今は賃上げを実施すべき段階でありそれ以外のことについては検討するつもりはない」と答弁した。

植田総裁になって日本銀行は長年の慣習から価格転嫁と賃上げが起きにくい状況が続いておりこれを払拭しない限り金融政策が解除できないと言い続けている。岸田総理はこれを「賃上げさえ起これば問題は全て解決するんだな」と解釈してしまったようだ。この後の答弁でもとにかく「経済の好循環が起きれば全ては解決する」という趣旨のことを主張し続けていた。

共産党やれいわ新選組の関心は消費税減税に向かっている。消費税減税しない理由についても盛んに「賃金さえ上がれば」などと主張していた。少子化対策についても「経済の好循環さえ生まれれば実質的な負担増は生じない」などと表現している。全ての矛盾が賃上げによって解消され自分は最終的には国民に感謝されるだろう考えているようだ。

確かに経済界と連合の会談でも「5%以上の賃上げが必要」という認識で一致している。だが実際に起きているのはインフレ対応のための賃上げだ。物価上昇を追いかける形になっているため常に物価上昇を下回ることになる。構造的に物価高を賃上げが後追いする状況ができている。物価上昇がおさまれば賃上げが起こらなくなるが人件費の上昇が続けばこの構図が定着し「ゆとりのない」状況が続くだろう。少子高齢化対策にくわえて防衛費増税の話も出てくるので、目の前の統計を否定しつつ「政府は実質的な負担増が増えているとは認識していない」という状態が続くことになりそうだ。

岸田総理はトリガー条項の解除についても「仮に実施するにしても4月以降」であり「各党の議論を待ってから」と慎重な考えだ。日銀の生活実感調査を見ると岸田政権に入って「国民のゆとり」は急速に失われているが、政府にはまとまった統計がない。さらにおそらく岸田総理や経団連の会長は自分でスーパーマーケットに行くようなことはないだろうから、物価が上がったという実感もないはずだ。支持率の急速な低下がなぜ起きているのかよくわからないのも不思議はない。

このまま岸田政権が続くならばおそらく国民の生活実感は上がらないままだろう。

ただ、議論が深まらない理由は他にもあるように思える。このブラケットクリープの話はほとんど報道されていない。時事通信のまとめでも扱われておらず、当事者の浜口氏ですら概要から省いている。アメリカでは当たり前であっても日本では知られていないという事情があるのかもしれない。

馴染みのない課題の理解はいつまでたっても広まらないためどうしても意識が消費税にだけ集中する。特に共産党とれいわ新撰組の議論の中心は消費税税率の引き下げになっており、スポーツ紙も大きく反応している。れいわ新選組の山本太郎代表は「控えめに言っても国民を殺しに来ている」と表現したそうだ。

特に消費税で揉めているのが立憲民主党だ。政権を担当した経験がある人たちは消費税減税の難しさを知っており消費税減税の方針は公約から取り除かれている。だが、これを快く思わない人たちもいて党内で議論になっているそうだ。長妻昭政調会長が消費税減税は行わないとしておりこれをなぞった形の岡田克也幹事長が「消費税減税提案について釈明した」などと言われている。

当ブログ記事でもこの傾向が伺える。「岸田総理は国民負担を増やそうとしている」とか「もう退場すべきだ」という記事には関心が集まる。こうすれば良くなるのではないかというような記事にはさほど関心が集まらない。「対処」に関する面倒な議論はどんどん「雑」になってしまう傾向がある。

統計や海外の事例を見て物事を考える習慣がないため、政権の側は「企業が賃上げさえしてくれれば問題は解決するだろう」との思い込みを強めているようだ。一方、国民の側は「岸田さんさえ消えてくれれば状況はマシになるかもしれない」と苛立ち始めているのかもしれない。萩生田政調会長も「減税さえ行えば一定の評価が出るだろう」と発信している。自民党にとって重要なのは自分達の選挙なのだから一瞬でもいいからその時に支持率が上がってくれればいいと考えているのではないかと思う。総裁選は9月なのでそれまでに帳尻があっていればいいということになる。

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