ざっくり解説 時々深掘り

スペインとベルギーの首相がそろってイスラエルを非難

Xで投稿をシェア

スペインとベルギーの首相が揃ってラファを訪れてイスラエルを非難した。イスラエル側は「両国がテロを擁護している」と反発している。エジプトのシシ大統領はパレスチナを国家承認すべきだと主張しているがアメリカをはじめ西側諸国は2国家共存を提唱しながらも現在のパレスチナ自治政府を独立国家として認めていない。

イスラエルとハマスのでは人質の交換が始まった。バイデン大統領はアメリカの外交努力が身を結んだとして国内向け宣伝に余念がないが、停戦が長続きするとは考えられていない。バイデン大統領は停戦の見通しについ手は言葉を濁した。

このように、決定的な打開策が見出せないまま束の間の停戦が実現しているという情勢が続いている。欧米の対応もまちまちでガザ地区を今後誰がどのように統治するのかという見通しも立っていない。

Follow on LinkedIn

コンテンツのリクエストや誤字脱字の報告はこちらまで

|サイトトップ| |国内政治| |国際| |経済|






スペインではサンチェス首相の続投が決まったばかりだ。全般的に経済が悪化しており下野する可能性があった。窮地に陥った首相はカタルーニャ独立派に妥協し協力を取り付けることで政権を維持した。

サンチェス首相と社会労働党(PSOE)は中道左派と言われているが、ヨーロッパでは理想主義的な左派政党や中道政党が軒並み苦しい状況にある。ドイツでは左派連立政権が憲法裁判所から予算の差し止め措置を受けている。オランダでは反移民を掲げる極右政党が第一党に選ばれた。イギリスの保守党は左派ではないが支持率が落ち込んでおり政権交代の可能性が囁かれている。このように経済状況が悪くなると政権を担当している政党への風当たりが強くなりサイレントマジョリティに支えられた極端な思想を持った人たちが台頭することになる。

国内政局が落ち着き余裕が出たスペイン首相は早速ガザ情勢に参入した。ガザ情勢に関して明確なメッセージを打ち出すことで国内世論に訴えたいという気持ちがあるのかもしれない。だがなぜかこの時にベルギーの首相と一緒だった。

イタリアで一度逮捕されているカタルーニャのプチデモン元州首相は現在ベルギーに亡命しているそうだ。恩赦が成立すると帰国が許されるが、ベルギーはこれまで匿ってきたプチデモン氏の身柄の安全を保証してもらう必要があると感じているのかもしれない。もともとベルギーは南ネーデルランドとしてスペインの植民地だった時代がある。北ネーデルランドにはプロテスタントが多かったがスペインの影響の強かった南にはカトリックが多いという宗教の違いもある。意外と歴史的にはつながっている地域なのだ。

なぜこの二人の首脳が揃ってガザを訪れたのかはよくわからないのだが他にも解決すべきなんらかの課題があったのかもしれない。

イスラエルは激しく反発し「スペインとベルギーはテロを支援している」として両首脳を非難した。スペイン側もイスラれる大使を呼びだし「虚偽で容認できない」と反論している。ヨーロッパではこの問題は白黒はっきりさせなければならない問題だと捉えられており国内向けに明確なメッセージが必要とされているということがわかるが、当然ながら明確な意思表示にはリスクも伴う。

エジブトのシシ大統領はイスラエルとパレスチナの対立がガザ地区の和平プロセスに矮小化されてはならないという立場だ。ガザ問題をエジプトに押し付け、西岸問題をヨルダンに押し付けようとする動きもある。このため早期にパレスチナを国家承認させたい。多くの国ではすでに国家承認されているパレスチナだが、アメリカをはじめとした欧米各国は日本も含めこれを「パレスチナ自治政府」と言っている。シシ大統領はこれらの国にたいして早期のパレスチナ国家承認を求めている。

緊張が続くガザ情勢だがようやく束の間の停戦が実現した。イスラエルからはパレスチナ人39名が解放され、イスラエル人は女性と子供が13名釈放された。さらにタイ人とフィリピン人も戻ってきている。パレスチナとしては大切な人質を温存しつつ停戦を長引かせたいという思惑があるのかもしれない。西側諸国の外国人やイスラエルの成人男性の解放はまだ見通せない。

国内向けに外交成果をアピールしたいバイデン大統領はアメリカの外交努力こそが問題を解決したと政治的な成果をアピールした。だが、今後の停戦の見通しについては明言を避け続けている。バイデン大統領もまた国内向けにイスラエル支持を強く訴えているが国際的には孤立傾向にありなおかつ国内から反発する声も聞かれる。

欧米各国は自分達の政党の立ち位置を弁護し世論にどうそれを説明するかで頭がいっぱいになっているのかもしれない。このため「どう振る舞うか」で頭がいっぱいになり、実際に今後のパレスチナをどう統治するのかという国際的な合意形成ができない。結局犠牲になるのは主にガザ地区に取り残されているパレスチナ難民たちだ。現在でも人道的にかなり劣悪な状態に置かれているという報道が散発的に伝わってくる。

コンテンツのリクエストや誤字脱字の報告はこちらまで